③
「職場の先輩がね!一年前に産んでさ!絶対に、子供は同じ学年にしようねって盛り上がってたんだよね。だから、一年違いでも産めてよかったよ!」
「よかったね。それ、結構大事だよね」
「でしょう?恵美子は、どう思う?」
どう思う?まさか、その答えを聞いてる?
同じ学年にするって何?
そんな簡単に、ポンポン出来ていいよねーって言えばいいの?
この問いかけに対する答えは、なんなの?
「よかったね」
私は、ニコっと微笑んだ。
「恵美子も、絵里香と同じ学年にしなよ!三ヶ月以内なら、間に合うし」
「それ、いいね!悩み共有できるし」
「やってみたら?」
ふざけんなと言いたい気持ちをグッと堪えた。
「そうだね!頑張ってみるよ」
何を頑張ればいいのかわからないけど、そう話しておいた。
結局、何も楽しくない食事会は終わった。
「これから、私達トーイ行くけどどうする?」
「遠慮しとく!主人待ってるから」
「あっ!そう!じゃあね」
「またね、恵美子。バイバイ。バイバイは?」
「アイアイ」
「めっちゃ、可愛い」
「バイバイ」
トーイとは、子供用品専門店。
治療始めた時は、慎太郎と二人で見に行ったりしたなー。
あの時は、従姉妹の出産祝いもトーイに買いに行けてた。
キラキラしてたから…。
今は、無理。
そんなの見たら、余計に惨めになるじゃない。
恵美子は、コツコツとヒールを響かせながら歩き出す。
もう、泣きたくなかった。
惨めだから…。
スマホを取り出して、慎太郎に連絡する。
「もしもし、家?」
『七草のラーメン食ってきて、家にいるよ!』
「映画見よう?借りて帰るから」
『RAINにしない?ドラマからの続きで気になってたから』
「私もそう思ってたの!借りて、帰るね」
『じゃあ、待ってる』
「うん、わかった」
私は、電話を切った。
結婚10年目の私達は、子供に縛られていながらも、まだ希望を持っていた。
だから、幸せだった。
レンタルショップで、RAINを借りた。
家に帰ると慎太郎は、スマホゲームをしていた。
「借りてきたよ」
「おかえり、どうだった?」
「えっ?ああ、それなりに楽しかったよ!」
「嘘!嫌だったって、顔に書いてるよ」
慎太郎の言葉に、涙がポロポロ流れる。
「しゃーないよな!俺達に、子供出来ないから…。マウントってやつだろ?」
「ムカついたから、ランチに3000円も使ってきてやった!」
「やったな!ハハハ。それぐらいしか出来ないしな!俺達は…。」
何だろう、誰よりも同じ悩みを持っていて解り合える夫婦ってより同士って感じに近い。
「さあ、RAIN見ようか」
「うん。あのさ、恵美子」
「うん?」
「俺は、二人でもいいと思ってるよ。恵美子と別れるとかは、考えたくないし。考えただけで、死にたくなる。でも、恵美子が嫌なら別れられるように努力するから。だから…。」
「慎太郎、ごめんね。私が、欠陥品だから…。」
「そんな事ないよ!恵美子は、欠陥品じゃないよ。俺だって、駄目なやつだからさ!気にすんなよ!母さんが何か言ってきたら言ってやるし!恵美子が、辛いなら話聞くからさ!」
「うん、ありがとう」
私は、慎太郎に抱きついた。
子供がいない生活なんて考えられなかった。
私と慎太郎は、結婚して当たり前のように子供を授かって、二人は欲しくて…。
そんな夢物語は、夢物語のまま終わっていくのだ。
医者には、薬を飲まなければ排卵は無理だと言われた。
私は、その治療も副作用が強すぎて無理だと断られた。
人生って、谷しかない気がした。
私は、RAINを再生した。
慎太郎と一緒に見る。
10年目の私達は、幸せだったよね?
これからも、ずっと、ずっと、一緒にいれるよね?
慎太郎、私達の関係は、きっと変わらないはずだよね?
そう思って、いいんだよね?
これからも…。




