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彩られる作品【仮】  作者: 三愛 紫月
【心だけが繋がらない】
27/135

②

さりげなく手を掴んでくれる。


「なぁー。冬」


「なに?」


「僕の事好き?」


「そやな!友達として好きやで」


「そやなくて、僕といて苦しいとか悲しいとか愛しいとか」


「ない!!」


「15年も抱き合ってんのに?」


「飽きはせんよ!夏とすんの気持ちええし」


「せやな」


心だけ、ずっと音信不通だ。


一緒におったら、楽。


何も言わなくてもわかってくれる。


「ここ、評価高いねん」


「行こや」


冬は、気を遣って店に入ると手を離す。


何でって?


世の中の大多数は、そういう人が気持ち悪いのだ。


だから、僕達は手を繋がなかったりする。


「いらっしゃいませ」


「二名です」


「こちらに、どうぞ」


向かい合って座る。


「これにしようかな?」


「たっぷりチーズのパスタか!ええやん。僕もそれにする」


冬は、呼び出しボタンを押してパスタを注文する。


「スゲー」


パスタに、演出でトロっとチーズを目の前で落とされて渡された。


「いただきます」


「フー、フー。めっちゃうまいで」


「ほんまやな」


冬と食べるご飯は、美味しい。


食べ終わった、お皿が下げられてコーヒーがやってきた。



「よかったわ!夏の顔色もどって」


「そんな、悪かった?」 


「めちゃめちゃ、悪かったで」


ちゃんと、僕を見てくれてる。


それやのに、何で


この胸は、ピクリとも動かないのだろうか?


冬が、コーヒーを飲み始める。


夏は、それを見つめながら思った。


もし、冬が好きな人が出来たから別れようと言ったとしても!


どうぞって言える自分が不思議だった。


冬との関係が終わっても、悲しいって想像が出来なかった。


「ほな、でよか」


「うん」


冬は、スマートにお金を払って出ていった。


また、手を繋いでくれる。


これに、たいした意味はない。


冬も、好きな人が目の前でいなくなった。


僕と同じだった。


だから、手を握ってる。


離した事で、死んだらと思うとお互いに、気分がよくないのだ。


「冬」


「なに?」


「また、見てもうた。春の夢」


「そうか。しんどいな」


「うん、しんどい」


「あの日に、戻って腕掴んで好きやって言えたらええのにな」


「うん」


小さな田舎町、道行く人は、僕と冬をジロジロ見つめる。


冬は、ギュッと強く手を握ってくれる。


こんな眼差しに、負ける事はなかった。


冬といると何にも気にならなかった。


「夏」


「うん?」


「明日は、会えへん」


僕は、少し考えた。


「あっ、月命日」


「ごめん。明日は、秋にあげたいねん。」


「勿論、わかってるで!」


「その代わり、うちくるか?」


「泊まってええの?」


「ええよ」


冬は、そう言って笑ってくれる。


ドキドキしない。


チクチクしない。


それでも、この手を離さない理由はなに?


それでも、一緒にいたい理由はなに?


僕は、あの日から電車に乗れなくて…。


基本的に、冬が車で色んな所に連れてってくれる。


さっきの場所から、冬の家は近かった。


マンションに到着した。


「次、住むの何階にするん?」


鍵を開けた冬に、尋ねた。


「二階ぐらいが、ええか?」


「いや、四階ぐらいがって!うそうそ。虫ぐらい、虫除けしとったらええな!」


「ごめん。」


「いや、ええねん。」


「ごめん。」


「謝らんでって」


僕は、玄関の鍵を閉めた。


「お邪魔します。」


何もない家。


「ワイン飲む?まだ、早い?シャワーする?」


「うん、お風呂入りたい」


「わかった。沸かすわ」


何で、こんな何もない家なんやろう…。


冬の家を見る度に、寂しい家やなって思う。


僕は、ソファーに腰かける。


冬は、もっと幸せになれるよ。


もっと、幸せになっていいんよ。


きっと、あの事なかったら幸せになってて…。


家も、もっと荷物があって…。


もっと、明るい色に包まれて…。

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