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彩られる作品【仮】  作者: 三愛 紫月
シークレット作品②
117/135

【温度】⑦

朝ー


一輝は、桜にキスをされていた。


目をパチリと開けた一輝。


「おはよう」


「なに?」


「何って、おはようのキスだよ」


そう言って、桜は離婚届の紙切れの欠片をヒラヒラと見せる。


「破いた」


「別れたくないの?」


「今は、まだ!やっぱり」


証拠を集めたいから、嘘をつく一輝。


「そう、わかった。」


「怒らないのか?」


「想定内よ。朝御飯食べよう」


桜の優しさが、気持ち悪いと思いながら起き上がる一輝


「顔洗ってくる」


「うん」


立ち上がって、洗面所に行く。


一方、花香ー


朝御飯のお味噌汁を作っていると後ろから孝輔に抱き締められた。


ビクッとした花香。


「大丈夫、火傷してない?」


後ろから手を触(さわ)られる。


「大丈夫」


「花香、離婚届。破いた?」


「うん」


「何で?」


「やっぱり、まだ嫌だったから」


もう、迷いはなくなっていたのに花香は嘘をついた。


「わかった。」


「怒らないの?」


「一日で、決断させた俺が悪いから…。」


気持ち悪い程に、優しい。


「じゃあ、暫くは…」


「このまま、過ごそう。花香」


また、耳の後ろに息をかけられる。


そこに、息をかけられると膝に力がはいらなくなる花香。


「花香、これ好きだよね」


「朝御飯、食べよ」


「こっち向いて」


孝輔は、花香の体をくるりと回転させる。


「おはよう、花香。泣いたんだね」


頬を撫でながら、キスをされる花香。


「仕事遅れちゃうよ。」


唇を離して、花香はそう言った。


「朝御飯食べようか?」


「うん、準備する」


何を考えてるのか、頭をポンポンとしてくる孝輔。


花香は、この孝輔が気持ち悪かった。


画面が変わって、一輝ー


「いただきます」


向かい合って桜とご飯を食べる。


「今日、何食べたい?」


「えっと…。トンカツ食べたい」


「わかった。帰りに、買い物してくるね」


「うん」


桜は、朝から夕方までコンビニでバイトをしていた。


それから、カフェでお茶をして買い物する。


そして、帰宅は8時だった。


30分だけ、スーパーをウロウロしてる。


多分、その前はroseに行ってる。


それは、俺が仕事の時の話し。


今日は、俺が休みだ!


俺が休みの日は、花香さんの旦那と五時に会ってroseに行くのを見た。


我ながら、探偵のように二人に張り付いた。


花香と知り合えると思ってなかった一輝は、お金を渡さずに別れるだけにしようと思っていた。


でも、花香と知り合って素敵な人なのがわかった瞬間。


一輝は、許せなくなったのだ。


「ごちそうさまでした」


食べ終わった食器をさげた。


桜が仕事に行くから、玄関に見送りに行く一輝。


「七時半には、帰ってくるね」


「うん、皿洗っとくよ」


「お願いね」


「わかったよ」


桜は、一輝を抱き締める。


「行ってくるね」


「うん」


「じゃあね」


「気をつけて」


桜が、家を出て行って一輝は、ホッとした。


一方、花香もー


朝御飯を向き合って食べる。


「ごちそうさまでした」


お皿をさげに行く花香


「花香、8時までには帰ってくる」


「うん」


花香は、お弁当を渡す。


ここにいる間は、主婦なのだ。


だから、孝輔の身の回りの事はやらなければいけない。


玄関まで、見送った花香を抱き寄せる孝輔


「花香」


「うん」


「行ってくるね」


「行ってらっしゃい」


孝輔は、そう言って出て行った。


パタリと扉が閉まって、花香は正直ホッとしていた。


あのまま、孝輔といたくなかったからだ。


キッチンに戻って、泣きながらお皿を洗う。


離婚届を破いた事を、もっと責められると思っていた。


なのに、責めなかった事が何より不気味だった。


あの笑顔は、いったい何なのか?


抱き締められるのは、何だったのか?


そもそも、離婚しようと言われる夫婦はこんなのなのか?


花香には、全く理解が出来なかった。


ピーピーと乾燥まで終えた洗濯機がなった。


洗濯物を出して、たたむ。


大好きだった孝輔の服やパンツを畳む事


今は、何故か少しだけ苦手に変わった。


苦痛までいかないけど、苦手。


「本当に、慰謝料もらうまで我慢できるのかな?私。」


独り言を呟いてから、また洗濯物を畳む花香だった。



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