【欠けたピースは戻らない】⑪
昌也の顔に、ポタポタと俊之の涙が当たってきた。
「俊之、大丈夫?」
「ごめん」
「何歳の頃だった?」
「不倫?」
「うん」
「10歳の頃から、母親が綺麗な格好して夜に出掛けていったのを見てた。相手はパート先の大学生だったみたい。後で知ったんだけどね。」
「俺は、9歳の時だよ。相手は、高校卒業したばっかの人だった。俺ね、見たんだよ。父さんの不倫相手。それから、ずっとその人と続いてたみたいでさ。」
「うん」
「10歳の俺連れて母親が家を出た。俺は、母親から性行為がどれだけ悪かを教えられ続けた。それでも、興味があったんだ。」
「無理して、話さなくていいよ」
俊之は、昌也を抱き締める。
「いつか、一緒にいるならまた話すから」
「うん!俺も、話すから」
昌也は、俊之のネクタイを引っ張ってキスをする…
「ダサい格好だよな。下半身だけ裸」
笑う俊之のネクタイを外す昌也
「じゃあ、全部裸になればいいよ」
ゆっくりゆっくり、カッターシャツのボタンを外した。
俊之は、ゆっくり優しくまたしてく。
「また、出来そうだな」
「ダメそんなの」
「大丈夫、優しくする」
母親から、禁止されていた事を俊之がする。
俊之は、汚いと思っていた膨らみを愛しいもののように扱ってくれた。
自分のように嫌悪感を抱いてる人間は、どれ程いるのだろうか?
昌也は、俊之を見つめながら思っていた。
「怖がらないで、大丈夫だから」
俊之は、昌也の目を見つめて言った。
「快感に身を任せるようなやり方はしないから」
凄く少ない刺激を与える。
「だから、大丈夫」
昌也は、微弱な刺激を与えられる。
「俊之」
「我慢しなくていいよ」
「怖いんだ」
さっきは、一緒にしたけれど今度は一人だ。
目を瞑ると母親に汚い、汚らわしい、父親に似て気色悪い、そう言われて殴られた映像が浮かぶ。
気色悪い行為をして産まれ堕ちたのが自分だとわかったのは、保険の授業で、あの日も死のうとしたのを止められたんだ。
「大丈夫、汚くないよ」
「俊之」
俊之は、昌也のを丁寧に扱ってくれる。
「大丈夫、ゆっくりでいいからね」
「うん」
結局、この日俊之は20分以上も愛撫してくれたけれど、俺はいけなかった。
「ごめん、顎疲れたよね」
「昌也、わざとだよ。恐怖心なくして欲しかったんだ。」
そう言って、俊之は昌也の頭を撫でる。
その姿を見て、昌也は俊之と一緒に居たいと思った。
「付き合ってよ、俊之」
「俺なんかでいいの?」
「俊之がいいんだよ。他の人は嫌だよ。死ぬ前の恋人になってよ」
「いいよ!構わないよ」
「嬉しいよ」
昌也は、俊之に抱きついた。
「よろしくね、昌也」
「よろしくね、俊之」
それから、五年。
傷を癒し合い、舐め合いながら…
二人は、過ごしてきた。
だけど、欠けたピースはいつまでも欠けたままで
許せないは、降り積もるばかりの俊之
昌也もまた、傷口を塞ぐ事は出来ずにいた。
大人になれば、許せると思っていた。
歳を重ねれば、許せるようになると思っていた
結局は、許せなかった
それは、親が生きていないからだと思っていた
でも、違う気がする
生きていたら、もっと許せなかったのではないかと最近は思う昌也と俊之だった。
「昌也、どうした?」
五年も俊之と生きてきた。
「トッシー」
「どうした?」
「まだ、怖い時がある。」
「性行為?」
「うん、そう」
「仕方ないよ」
「ごめんね、俺。トッシー傷つけてるよね。」
「大丈夫だから」
俊之は、昌也をギューっと抱き締める。
「トッシー、俺を捨てないで」
「捨てないよ」
「ずっと一緒にいて」
「一緒にいるよ」
「トッシーがいない人生は、嫌だよ」
「うん、わかってるよ、昌也」
昌也の頭を俊之は、撫でる。
これから先も、俊之と生きていたい。
「トッシーと生きていきたい」
「うん、わかってる」
昌也は、俊之と付き合うまで、自分がこんなにも独占欲が強いと思わなかった。




