【欠けたピースは戻らない】⑦
「確かに、そうだよな!」
「専業主婦の愛花里は、絵本作家を目指す。絵本をネットに上げた結果、作品として売り出さないかと言われる。愛花里は、身の回りの世話をしてくれる人を雇った。それが、二十歳の悠里だった。悠里は、料理を作るのが得意だった事から雇われる。13歳の息子竜とも仲良くしてくれる悠里。モラハラする夫とギクシャクする愛花里を支える悠里。
二人の関係は、少しずつ縮まっていく。愛花里と悠里が選ぶ答えとは?くだらない。」
昌也は、それを読んでそう言った。
「最終わかってるんだろ?」
「ああ、旦那にバレて一旦離れ離れになるんだけどさ!5年後再会するんだよ。で、旦那と離婚して悠里を選ぶ。息子は、すげー。物分かりがよくて!いつだって、母親の味方なんだよ。介護も一人でやったのは母さんだし、家の事も母さんがやってた。父さんは、何をしたの?って!結局、父親も過去に不倫してたんだけどね。それを、母親はずっと許せなかったパターンだから。トッシーや俺と似てるだろ?」
昌也の言葉に俊之は、頷いた。
「でも、俺は許せないわ!そんな物分かりよくもなれないよ。あいつは、俺を裏切ったんだよ。俺は、どんな話を聞いたってあいつを許さないし。父親も許さないよ」
「わかるよ!俺も同じだから」
昌也は、俊之の頬を撫でる。
「癌になってさ!弱ったあいつが、俺に会いたいって言ったんだよ」
「うん」
「許してって謝罪されると思ってた気がする」
「うん」
「でも、謝罪なんかされなかった。あいつは、こう言ったよ。俊之にも大人になったら母さんの気持ちがわかるの。あの人はね、母さんを物みたいに扱ったの。物みたいにされる人間の気持ちがわからないでしょ?俊之、大人になったらわかるから。それ、ばっかり繰り返された。俺、病気のあの人がリンゴ剥いてる果物ナイフ掴んで言ったんだよ。だったら、殺せよって」
俊之は、昌也に初めて腕の傷の話をしていた。
「それって」
「あの人が、持っていた果物ナイフにゆっくりゆっくり、腕をさしたよ。あの人は、怯えて手を離した。その目に、堪らなくイライラしたんだ。俊之、やめてって言われた。」
「うん」
昌也は、俊之の右腕の傷を撫でる。
「殺せないなら産むなよって言ったんだよ。身勝手にお前は、俺を産んだんだって言ったよ。そしたら、モラハラを受けてたのよって言ってきてね。だから、何だって俺はあの人を蔑んだ目で見たよ。あの人は、俺に言ったよ。悪いのは、あっちなのよってね。昌也、俺は、あいつを許すべきだったのか?」
昌也は、首を横に振った。
「俺は、血だらけな腕であいつの病室を出た。個室でさ。外出たら、あいつの彼氏がいてさ。俊之君、許してあげて欲しいって頭下げられてさ!そいつ、結婚指輪はめてるんだぜ。笑っちまったよ。お前、不倫なの?って言った俺の言葉にギョッってした顔向けたよ。だから、俺言ったんだよ。お前やあいつみたいなのがいるから、俺みたいなガキができんだよって!俺は、その言葉言って家に帰ったよ。昌也、俺ね。昌也に出会ってなかったら、死んでた。」
昌也は、俊之の傷痕を指でなぞる。
「何回した?」
手首の痕をなぞった。
「10回ぐらいかな」
「何で?」
「俺ね、あいつが流産5回繰り返した後に出来たガキだったんだよ。あいつね、不倫していた親父との間に何としても子供が欲しかったらしいんだよ。いらなかったろ?俺なんか…。何で、順調に育ったんだろうな?俺」
「トッシー。悲しい事言わないでよ。」
「でもさ、不倫していた親父との間に子供必要だったか?あいつ、親父に女がいたの知ってたっておばさんから聞いた。あいつだって、俺を物みたいに思っていたんじゃないのか?そうだろ昌也?」
昌也は、俊之の言葉に頷いていた。
それは、昌也もわかっていた。
母親は、昌也を所有物として扱っていたのを昌也は知っていた。




