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その手に見えるは機械装甲  作者: コラム
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98/948

#96

――今から数年前。


ルドベキアホールに身を(かく)していたリーディンの所属(しょぞく)する宗教(しゅうきょう)組織(そしき)――永遠なる破滅(エターナル ルーイン)は、バイオニクス共和国(きょうわこく)との条約(じょうやく)によって出陣(しゅつじん)したストリング帝国(ていこく)軍隊(ぐんたい)に追い詰められていた。


彼らの立てこもっていた炭鉱(たんこう)は、雪と(こおり)(おお)われ、天然(てんねん)要害(ようがい)(ほこ)る場所とはいえ、帝国の圧倒的(あっとうてき)(ちから)の前では()(すべ)はなく、すでにただ死を待つだけの状態(じょうたい)だった。


「ライティング……。ワタシたち、このまま(ころ)されちゃうの?」


リーディンは(ふる)えながらライティングという少年に抱きついた。


それも無理ないことだ。


彼女を(ふく)めて多くの永遠なる破滅(エターナル ルーイン)に所属する子どもたちは、全員()てられていたところを組織に(ひろ)われ、しかたなく(はたら)かされているだけなのだから。


リーディンやライティングのような者には、永遠なる破滅(エターナル ルーイン)(かか)げる思想(しそう)はないのである。


ただ生きるためだけに組織にいるだけなのだ。


「大丈夫、大丈夫だよ。ボクがリーディン、君と仲間たちだけは絶対(ぜったい)(まも)るから」


ライティングの何の根拠(こんきょ)もない言葉だったが、リーディンは彼と一緒(いっしょ)ならと死を受け入れていた。


これまでの人生、ろくなことがなかった。


組織に奴隷(どれい)のように使われ、その思想も自分の(すく)いにはならなかった。


(ほか)の子たちのように、宗教(しゅうきょう)()まってしまえばもっと楽だったかもしれない。


だがリーディンには、永遠なる破滅(エターナル ルーイン)の思想――世界が滅亡(めつぼう)するべきだとはとても思えなかったのだ。


その最大の理由(りゆう)はライティングだ。


リーディンは彼が好きだった。


彼女は、何度も生きることに()えられなくなったとき、いつもライティングの存在(そんざい)に救われていたからだ。


実際(じっさい)に彼は、同じ立場の子どもらからも信頼も(あつ)く、何度も戦場へ出ては仲間を助けてきた少年だ。


この(ひど)い世界でもライティングのような人がいる――。


リーディンは、それだけで世界は(ほろ)ぶべきではないと考えていた。


「君たちはすでに包囲(ほうい)されている。大人しく降伏(こうふく)しろ。日の出まで待つ」


炭鉱の外からは、ストリング帝国からの通達(つうたつ)が大音量で聞こえて来ていた。


すでに弾薬(だんやく)もつきかけ、ろくな武装(ぶそう)もないこちらでは戦っても勝ち目はないのは(あき)らかだ。


しかし、永遠なる破滅(エターナル ルーイン)幹部(かんぶ)たちは、絶対に降伏はしないとリーディンらに()げる。


ここで死に花を()かせ、世界にいる同志(どうし)たちに、自分たちの勇姿(ゆうし)を伝えるのだと、負け(いくさ)覚悟(かくご)して(いど)もうとしていた。


すでに戦意(せんい)のない――。


いや、最初からなかったであろうリーディンは、その言葉に身を震わせることしかできなかった。


「我が同志たち、教祖様イードの子らよ。安心するがいい。神は我らをまだ見捨(みす)ててはいない」


幹部の男が壇上(だんじょう)から(さけ)ぶと、その(うし)ろにあった(まく)が開かれる。


そこには人型をした金属(きんぞく)――戦闘用(せんとうよう)ドローンがあった。


「このナノマフPI一機(いっき)のみでも十分(じゅうぶん)に勝てる見込(みこ)みがあることを、提供(ていきょう)してくれたラムズヘッド氏が我々に(おし)えてくれた」


Nano Muff Personal Insight(ナノ マフ パーソナル インサイト) 通称(つうしょう)ナノマフPI。


全高(ぜんこう)3.5メートル、重量(じゅうりょう)2.2トン。


ディストーション ドライブという高出力のビーム兵器(へいき)搭載(とうさい)した、ハザードクラスであるフォクシーレディが運営(うんえい)するエレクトロハーモニー社で造られたナノクローンの新型だ。


だが、たかが一機で戦局せんきょくを変えられるとは、その場にいる誰もが信じていなかった。


いくら新型といっても、相手はあのヴィンテージであるノピア·ラシック将軍(しょうぐん)(ひき)いる軍なのだ。


マシーナリーウイルスの適合者(てきごうしゃ)にして英雄に数えられる彼に(かな)うはずもない。


だがそんな仲間たちを見ても、幹部の男は自分たちの勝機(しょうき)(うたが)ってはいなかった。


「今からナノマフPIについて説明(せつめい)をする。それを聞けば皆にもわかってもらえるはずだ」


そして、そのエレクトロハーモニー社の新型――ナノマフPIの(おそ)ろしい機能(きのう)について話し始めた。

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