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その手に見えるは機械装甲  作者: コラム
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97/948

#95

アミューズメント施設(しせつ)内(ない)を逃げ回(まわ)るジャズ。


いくら彼女が普段(ふだん)から鍛(きた)えているとはいえ、サービスとニコを抱(だ)いたまま走り続けるのにもそろそろ限界(げんかい)がきていた。


走る速度(そくど)も最初(さいしょ)に比(くら)べれば落ちてきていて、リーディンはそんなジャズの背中(せなか)を目掛(めがけ)けてトランプカードを投げつける。


禍々(まがまが)しい光(ひかり)を放(はな)っているトランプカードは、ジャズがメリーゴーランド内に入り込(こ)んだために、周囲(しゅうい)あった馬(うま)や馬車(ばしょ)の乗(の)り物に当たり、まるで手榴弾(しゅりゅうだん)のように爆発(ばくはつ)する。


リーディンが使っている力(ちから)は、経典(きょうてん)アイテルの込められた魔力(まりょく)によるものだ。


経典とトランプカードの間(あいだ)に自分の体を経由(けいゆ)させ、呪文(じゅもん)を唱(とな)えることでカードに魔力を込めて投げつける。


その破壊力(はかいりょく)は、ストリング帝国(ていこく)の電磁波(でんじは)放出(ほうしゅつ)装置(そうち)――インストガンにも引けを取らない。


本来(ほんらい)は神の加護(かご)を受けていないとしようできない魔術(まじゅつ)ではあるが。


リーディンは経典から直接(ちょくせつ)啓示(けいじ)を受けているため使用できる。


「もうあなたも走り疲(つか)れたでしょ? いい加減(かげん)に休みなさいよ。ただし、眠(ねむ)ったらもう目覚(めざ)めることはないけどね」


リーディンは次々にトランプカードを投げ続けていく。


すでにメリーゴーランドの屋根(やね)も崩(くず)れ落ちて半壊(はんかい)状態(じょうたい)だ。


さすがに、これ以上(いじょう)サービスとニコを抱(かか)えて逃げるのは無理(むり)だと判断(はんだん)したジャズは、サービスたちを崩れた馬車の下に隠(かく)すと、リーディンの前に姿(すがた)をさらした。


両手(りょうて)をあげて戦う意思(いし)がないことを伝(つた)えながら、彼女はリーディンに声をかける。


「まいったわ、降参(こうさん)よ」


「なに、命(いのち)乞(ご)いでもするつもりなの?」


「そうじゃない。ただ、どうせ殺(ころ)されるんなら、聞いておきたいことがたくさんあるのよ」


ジャズがそういうと、リーディンはトレンチコートの内側(うちがわ)にある経典アイテルに触(ふ)れた。


経典はまだ近くにサービスがいることを知らせている。


おそらく近くの瓦礫(がれき)の下にでも隠しているのだろう。


どうやらこのストリング帝国(ていこく)の女は、幼女(ようじょ)を逃がすための時間稼(かせ)ぎをしたいわけではなさそうだ。


死ぬ覚悟(かくご)をしてに暴(あば)れられるのも面倒(めんどう)だとでも思ったのだろう。


リーディンは持っていたトランプカードを収(おさ)め、ジャズに聞きたいことをいうように伝(つた)えた。


「リーディンっていったわね。永遠なる破滅(エターナル ルーイン)の元メンバーだって話だけど、あんたはどこの地域(ちいき)にいたの?」


「ルドベキアホールよ。あそこは炭鉱(たんこう)をくり抜(ぬ)いて街を造(つく)ったところだから、テロリストにとっては身を隠しやすかったみたいね」


ルドベキアホールとは、雪と氷に覆(おお)われた大地にある炭鉱街だ。


昔(むかし)にはガーベラドームという球体型(きゅうたいがた)の都市(とり)があり、そこの王だったルドベキア·ヴェイス名をつけられた街である。


ルドベキア·ヴェイスは、かつて世界を暴走(ぼうそう)したコンピューターから救(すく)った英雄(えいゆう)の一人であり、アン·テネシーグレッチやローズ·テネシーグレッチ、ノピア·ラシックに加え、さらにはクリーンとブレイクの母親であるクリア·ベルサウンドと同じくヴィンテージに数えられた男である。


ルドベキアホールは、現在(げんざい)でも狂暴(きょうぼう)な動物が多く生息(せいそく)し、その雪原(せつげん)という土壌(どじょう)もあって、なかなかバイオニクス共和国(きょうわこく)でも完璧(かんぺき)な管理(かんり)が行き届(とど)かない地域でもある。


ジャズは、リーディンにルドベキアホールの生まれなのかを訊(たず)ねた。


訊ねられたリーディンは首(くび)を左右(さゆう)に振って否定(ひてい)する。


「自分の生まれたところがどこかなんて知らないわ。物心(ものごころ)ついたときにはもう組織(そしき)のために働(はたら)かされていたんだから」


どうやらリーディンは自分の故郷(こきょう)も知らず、幼(おさな)い頃(ころ)から永遠なる破滅(エターナル ルーイン)の手伝いをさせられていたようだ。


毎日雑用(ざつよう)や武器(ぶき)の手入れ、さらに敵(てき)と戦うための訓練(くんれん)をさせられていたらしい。


「あなたも帝国の人間なら、ルドベキアホールで何があったかを知っているでしょ?」


リーディンに訊(き)かれたジャズは、その表情(ひょうじょう)を曇(くも)らせた。


その顔を見るに、彼女のとってあまり思い出したくないことなのだということがわかる。


ジャズは冷や汗(あせ)を掻(か)きながら、リーディンから目をそらしたそうにしていた。


そんな彼女を見たリーディンが意地(いじ)悪く笑う。


「あら、あなたは知らないのかしら。おかしいわねぇ。なら、ワタシが教(おし)えてあげるわ」


リーディンは笑みを浮かべていたかと思えば、冷(つめ)たい声でそういうと、訊かれてもいないのに過去(かこ)のことを話し始めた。

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