表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その手に見えるは機械装甲  作者: コラム
97/948

#95

アミューズメント施設(しせつ)(ない)を逃げ(まわ)るジャズ。


いくら彼女が普段(ふだん)から(きた)えているとはいえ、サービスとニコを()いたまま走り続けるのにもそろそろ限界(げんかい)がきていた。


走る速度(そくど)最初(さいしょ)(くら)べれば落ちてきていて、リーディンはそんなジャズの背中(せなか)目掛(めがけ)けてトランプカードを投げつける。


禍々(まがまが)しい(ひかり)(はな)っているトランプカードは、ジャズがメリーゴーランド内に入り()んだために、周囲(しゅうい)あった(うま)馬車(ばしょ)()り物に当たり、まるで手榴弾(しゅりゅうだん)のように爆発(ばくはつ)する。


リーディンが使っている(ちから)は、経典(きょうてん)アイテルの込められた魔力(まりょく)によるものだ。


経典とトランプカードの(あいだ)に自分の体を経由(けいゆ)させ、呪文(じゅもん)(とな)えることでカードに魔力を込めて投げつける。


その破壊力(はかいりょく)は、ストリング帝国(ていこく)電磁波(でんじは)放出(ほうしゅつ)装置(そうち)――インストガンにも引けを取らない。


本来(ほんらい)は神の加護(かご)を受けていないとしようできない魔術(まじゅつ)ではあるが。


リーディンは経典から直接(ちょくせつ)啓示(けいじ)を受けているため使用できる。


「もうあなたも走り(つか)れたでしょ? いい加減(かげん)に休みなさいよ。ただし、(ねむ)ったらもう目覚(めざ)めることはないけどね」


リーディンは次々にトランプカードを投げ続けていく。


すでにメリーゴーランドの屋根(やね)(くず)れ落ちて半壊(はんかい)状態(じょうたい)だ。


さすがに、これ以上(いじょう)サービスとニコを(かか)えて逃げるのは無理(むり)だと判断(はんだん)したジャズは、サービスたちを崩れた馬車の下に(かく)すと、リーディンの前に姿(すがた)をさらした。


両手(りょうて)をあげて戦う意思(いし)がないことを(つた)えながら、彼女はリーディンに声をかける。


「まいったわ、降参(こうさん)よ」


「なに、(いのち)()いでもするつもりなの?」


「そうじゃない。ただ、どうせ(ころ)されるんなら、聞いておきたいことがたくさんあるのよ」


ジャズがそういうと、リーディンはトレンチコートの内側(うちがわ)にある経典アイテルに()れた。


経典はまだ近くにサービスがいることを知らせている。


おそらく近くの瓦礫(がれき)の下にでも隠しているのだろう。


どうやらこのストリング帝国(ていこく)の女は、幼女(ようじょ)を逃がすための時間(かせ)ぎをしたいわけではなさそうだ。


死ぬ覚悟(かくご)をしてに(あば)れられるのも面倒(めんどう)だとでも思ったのだろう。


リーディンは持っていたトランプカードを(おさ)め、ジャズに聞きたいことをいうように(つた)えた。


「リーディンっていったわね。永遠なる破滅(エターナル ルーイン)の元メンバーだって話だけど、あんたはどこの地域(ちいき)にいたの?」


「ルドベキアホールよ。あそこは炭鉱(たんこう)をくり()いて街を(つく)ったところだから、テロリストにとっては身を隠しやすかったみたいね」


ルドベキアホールとは、雪と氷に(おお)われた大地にある炭鉱街だ。


(むかし)にはガーベラドームという球体型(きゅうたいがた)都市(とり)があり、そこの王だったルドベキア·ヴェイス名をつけられた街である。


ルドベキア·ヴェイスは、かつて世界を暴走(ぼうそう)したコンピューターから(すく)った英雄(えいゆう)の一人であり、アン·テネシーグレッチやローズ·テネシーグレッチ、ノピア·ラシックに加え、さらにはクリーンとブレイクの母親であるクリア·ベルサウンドと同じくヴィンテージに数えられた男である。


ルドベキアホールは、現在(げんざい)でも狂暴(きょうぼう)な動物が多く生息(せいそく)し、その雪原(せつげん)という土壌(どじょう)もあって、なかなかバイオニクス共和国(きょうわこく)でも完璧(かんぺき)管理(かんり)が行き(とど)かない地域でもある。


ジャズは、リーディンにルドベキアホールの生まれなのかを(たず)ねた。


訊ねられたリーディンは(くび)左右(さゆう)に振って否定(ひてい)する。


「自分の生まれたところがどこかなんて知らないわ。物心(ものごころ)ついたときにはもう組織(そしき)のために(はたら)かされていたんだから」


どうやらリーディンは自分の故郷(こきょう)も知らず、(おさな)(ころ)から永遠なる破滅(エターナル ルーイン)の手伝いをさせられていたようだ。


毎日雑用(ざつよう)武器(ぶき)の手入れ、さらに(てき)と戦うための訓練(くんれん)をさせられていたらしい。


「あなたも帝国の人間なら、ルドベキアホールで何があったかを知っているでしょ?」


リーディンに()かれたジャズは、その表情(ひょうじょう)(くも)らせた。


その顔を見るに、彼女のとってあまり思い出したくないことなのだということがわかる。


ジャズは冷や(あせ)()きながら、リーディンから目をそらしたそうにしていた。


そんな彼女を見たリーディンが意地(いじ)悪く笑う。


「あら、あなたは知らないのかしら。おかしいわねぇ。なら、ワタシが(おし)えてあげるわ」


リーディンは笑みを浮かべていたかと思えば、(つめ)たい声でそういうと、訊かれてもいないのに過去(かこ)のことを話し始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ