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その手に見えるは機械装甲  作者: コラム
86/948

#84

部屋へと(もど)ったミックスは、まずサービスとニコに手を(あら)うようにいう。


それから自分も洗面所(せんめんじょ)に行くと、あることに気がついた。


「そうだ。ついでにお風呂(ふろ)にも入れて体も洗っちゃおう」


ミックスがそう言いながらサービスの羽織(はお)っていた布切(ぬのき)れを()がそうとすると――。


「なにしてのよ、あんた?」


いつの間にか勝手(かって)に部屋へ入ってきていたジャズが、その表情(ひょうじょう)強張(こわば)らせて立っていた。


ミックスは何故彼女がそんな顔をしているかわからず、これからサービスを風呂に入れるためだと説明(せつめい)した。


すると、ジャズの表情はさらに強張り、(ほう)けているミックスにその(するど)眼差(まなざ)しを()()すように向ける。


「あんたね、あたしがさっきいったことをもう(わす)れたの?」


「さっきいったこと? なんだっけ? もう忘れちゃったけど、それがサービスを風呂に入れるのに関係(かんけい)あるの……って、ちょっと待ってジャズッ!? ぎゃあぁぁぁッ!」


ワナワナと身を(ふる)わせたジャズは、そんなミックスの(ひたい)頭突(ずつ)きを()らわした。


(いた)みでのた打ち(まわ)る彼を見下(みお)ろしながらジャズは、サービスが女の子だということを忘れるなという。


「あんたね、さっきもいったけど。サービスは女の子なんだよ。それなのに一緒(いっしょ)にお風呂なんて、イヤらしいにもほどがあるわ」


「なんでそうなるんだよ。そりゃサービスが(いや)がったらやめるけどさ。別に本人が気にしてないんだからいいじゃないか。それにうちではいまだに兄さんと姉さんと三人で風呂に入ってるし、一緒に風呂に入るくらいでそこまで(おこ)ることないだろ」


その話を聞いたジャズは絶句(ぜっく)


言葉を(うしな)って立ち()くす。


ミックスはもう自分と同じ十五才の高校生だ。


そんな思春期(ししゅんき)の男子と(はだか)の付き合いをする姉がいるとは、この男の家はどうなっているのだろう。


兄ならまだしもおそらく大人の女性である姉と風呂に入るのは、いろいろ問題(もんだい)があるじゃないかと、彼女は思っていた。


「ともかく、サービスはあたしがお風呂に入れるから、あんたはご飯の仕度(したく)でもしておいてッ!」


そして洗面所から追い出されたミックスは、()に落ちない様子(ようす)夕食(ゆうしょく)準備(じゅんび)へと取り掛かるのだった。


その(あいだ)浴室(よくしつ)では――。


湯船(ゆぶね)にお湯が()まるまでの時間に、(よご)れていたサービスの(かみ)や体を洗おうとしていたジャズだったが。


サービスはニコを抱きしめて(はな)さないため、なかなか上手(うま)く洗えずにいた。


「いいからニコを離しなさい! それじゃキレイにできないじゃないのッ!」


「うぅ……ヤッ! ヤダもん」


(ちから)づくでニコをサービスから引きはがそうとするジャズ。


だが、サービスも(はな)してなるものかと精一杯(せいいっぱい)の力を()める。


二人から引っ張られたニコは(くる)しそうに()いている。


「なんか、悲鳴(ひめい)が聞こえるんだけど……大丈夫か?」


その鳴き声は台所(だいどころ)まで(とど)いており、ミックスはフライパンを(にぎ)りながら心配(しんぱい)していた。


それからジャズたちが風呂からあがり、リビングへと出てくる。


そのときのジャズとニコの様子は、まるで最終(さいしゅう)ラウンドまで(たたか)いきったボクサーのように疲労(ひろう)していた。


反対(はんたい)に何故かサービスはご機嫌(きげん)で、彼女たちを待っていたミックスへと抱きつく。


「だ、大丈夫? なんかすごく(つか)れているみたいだけど?」


「子どもをお風呂に入れるのが、こんなに大変だったとは思わなかったわ……」


グッタリしているジャズに続き、ニコもメェーと弱々(よわよわ)しく鳴いた。


ミックスはそんな彼女たちとはしゃぐサービスに(すわ)るようにいうと、早速(さっそく)出来たばかりの料理を(はこ)んできた。


食欲(しょくよく)をそそる(にお)いがしたせいか、ジャズとニコが運ばれてきた料理を見て目を(かがや)かせている。


すべての料理を運び終えたミックスも(こし)を落とし、全員がテーブルに着く。


それからミックスとジャズ、ニコが手を合わせ、いただきますと声を出した。


サービスは一体何をしているのかと、不思議(ふしぎ)そうにミックスたちを見ている。


「どうしたの? 食べないのハンバーグ? このお兄さんの作る料理はとってもおいしいんだよ」


そういったジャズは、フォークに自分の(さら)にのったハンバーグを突き刺し、彼女の前へと出す。


サービスは(くび)(かし)げて、ただハンバーグを見つめていた。


「はい、口を開けて。あ~ん」


「あ~ん」


ジャズはそう言いながら口を開けると、サービスも彼女の真似をした。


それから大きく開いたサービスの口の中に、ハンバーグを入れる。


「うんッ!?」


「どうおいしい?」


「うん! おいしいッ!」


サービスは笑顔でそういうと、(すさ)まじい(いきお)いで料理を食べ(はじ)めた。


そして、あっという間に(たい)らげてしまうと、いきなりテーブルに体を預けて(ねむ)ってしまう。


「あらら、寝ちゃったみたいね」


「お(なか)いっぱいになって安心したんじゃない?」


そんな無邪気(むじゃき)なサービスを見たミックスとジャズは、(たが)いに顔を突き合わせて笑ってしまっていた。


ニコもそんな二人を見て(うれ)しそうに鳴き、サービスとは反対に、ゆっくりとハンバーグを食べるのであった。

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