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その手に見えるは機械装甲  作者: コラム
81/948

#79

バイオニクス共和国(きょうわこく)象徴(しょうちょう)する管制塔(かんせいとう)アーティフィシャルタワー。


まるこの共和国すべてを監視(かんし)しているようにそびえ立つ、いうならば異端(いたん)審問官(しんもんかん)神殿(しんでん)ともいうべきものだ。


その建物内(たてものない)地下(ちか)には、ガラスの円筒(えんとう)墓場(はかば)墓石(トゥームストーン)のように(なら)んでいる。


墓石(トゥームストーン)のような円筒の中は、様々(さまざま)な色の液体(えきたい)()たされている。


その中を進むボサボサ(あたま)の少年――ジャガーは相変(あいか)わらず気味(きみ)の悪いところだと、内心では()()がしていた。


地下には当然(とうぜん)(まど)はなく、ここはいつもそのカラフルな墓石(トゥームストーン)から出ている(あか)りしかないため、まるで悪趣味(あくしゅみ)なナイトクラブのような雰囲気(ふんいき)だ。


「ミラーボールでもつけてみれば、ちっとは変わるかねぇ」


ジャガーはウゲッと(した)を出し、さらに(おく)へと歩いていく。


その奥には一人の人物が立っていた。


三つボタンのスーツをカチッと着た成人(せいじん)男性。


着こなしや仕草(しぐさ)から(さっ)するに、いかにも厳格(げんかく)そうな人間に見える。


男の名はメディスン。


バイオニクス共和国の前身(ぜんしん)――(はん)帝国(ていこく)組織(そしき)バイオナンバーの幹部(かんぶ)であり、その組織の全員の義父であり、リーダーだったバイオを(ころ)したといわれている男。


現在(げんざい)の彼は、共和国の暗部(あんぶ)組織ビザールを指揮(しき)している立場だ。


(やっぱ変だよなぁ……)


ジャガーはメディスンの格好(かっこう)を見て、引きつった笑みを()かべる。


ジャガー自身も作業用(さぎょうよう)ジャケット姿(すがた)ではあったが、自分も(ふく)め、やはりこういう場所では白衣(はくい)でも羽織(はお)っていたほうが(さま)になると彼は思っていた。


「タワー内でスーツはおかしいか? しかし、そぐわないのはお前も同じだ」


思っていたことを見抜(みぬ)かれたジャガーは、ただ笑みを浮かべるとメディスンに会釈(えしゃく)する。


そして、口頭(こうとう)連絡(れんらく)事項(じこう)(つた)え始めた。


永遠なる破滅(エターナル ルーイン)のメンバーが共和国内に入り()んだことを。


永遠なる破滅(エターナル ルーイン)とは、かつて人類(じんるい)(ほろ)ぼそうとしたコンピューターを(あが)める宗教(しゅうきょう)団体(だんたい)であり、武装(ぶそう)集団(しゅうだん)


現在でもなおバイオニクス共和国にもストリング帝国にもテロ行為(こうい)()り返している世界中に信者(しんじゃ)がいるテロリスト組織だ。


「まあ、正確(せいかく)には(もと)メンバーなんすけどね」


なんでもジャガーの話では、侵入(しんにゅう)してきた永遠なる破滅(エターナル ルーイン)のメンバーは、組織を裏切(うらぎ)って共和国へとやって来ているらしい。


メディスンはまあよくある話だと、ズボンのポケットに入れていた両手(りょうて)を出して両(うで)を組む。


「宗教団体とはいっても人間が作る組織である以上(いじょう)一枚岩(いちまいいわ)ではないってことだな」


「それにあそこは思想(しそう)うんぬんじゃないですからね。生きるためにしょうがなく入ってる(やつ)大半(たいはん)ですから。そりゃお手て(つな)いで仲良(なかよ)くとはいかないんでしょ」


大昔(おおむかし)の宗教に、(なんじ)隣人(りんじん)(あい)せという(おし)えがあったそうだが……」


「あ~そういう話いらないっすから。オレ、ノピアさんじゃないんで、じゃあ失礼(しつれい)しま~す」


ジャガーの態度(たいど)にメディスンは(まゆ)をひそめた。


だが、そんなメディスンのことなど気にせずに、彼はその場を後にしようと(ある)き出す。


メディスンはその背中(せなか)を見ながら(あき)れる。


「そうそう。大事なこと言い(わす)れてました」


くるりと振り返ったジャガーは、腕に付けていたデバイスから立体(りったい)映像(えいぞう)をメディスンの前に(うつ)す。


メディスンは見てすぐに何の映像か理解(りかい)したのだろう。


(ふたた)び眉をひそめていた。


「ルーザーリアクターが研究所(けんきゅうじょ)を飛び出したのか? まったく永遠なる破滅(エターナル ルーイン)のメンバーといい、上層部(じょうそぶ)はなにをやっているんだ」


「だから“元メンバー”ですって。それよりどうします? 動いちゃっていいすっか?」


「お前に動かれるとこっちにしわ寄せはくるんだ。指示(しじ)があるまで大人(おとな)しくし情報(じょうほう)集めでもしててくれ」


「う~す、舞台裏(ぶたいうら)はオレのステージすっからね。せいぜい死人が出ないようにがんばりま~す」


ジャガーはそうやる気なくいうと、今度こそこの場から立ち去った。


残されたメディスンは笑っていた。


ジャガーがいった“舞台裏(ぶたいうら)はオレのステージ”という言葉を聞き、ずいぶん上手いことをいうと思っていたからだ。


()まるところ、それが暗部組織ビザールのメンバーであるジャガー·スクワイアの仕事だった。

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