#73
ブレイクはミックスを睨みつけると、再び笑みを浮かべる。
だがその笑みは、嘲笑しているのか、それとも怒りのあまり笑いがこみ上げているのかよくわからないものだ。
二人の視線が交わり、そんなブレイクへミックスが答える。
自分はお前を止めに来たと。
それを聞いたブレイクは、歪んだ笑みのまま高笑い始めた。
ミックスは、狂ったように笑っている彼に向かって、少しずつ近づいて行く。
「ビャッハハ! フギャアアアハッハアアッ! 何様だよテメェ? オレにボロ雑巾のようにされたのを忘れたのか?」
ご機嫌な様子でいうブレイク。
ミックスはそんな上機嫌の彼とは反対に、距離が縮まるたびに震えていた。
表情にも余裕はない。
今ブレイクがいったように、ミックスは彼に負けたときのことを覚えているのだ。
だが、内心から溢れる恐怖を押し殺し、ミックスは向かって行く。
「面白れぇ、面白れぇよテメェ。あれだけやられてもまだこのオレとやろうなんてよぉ。英雄気取りもここまでくると道化だなぁ」
「クリーンは……お前のために泣いてたんだぞ」
「あん?」
震えが止まったミックスがそういうと、ブレイクの顔を強張らせる。
その鋭い眼光から目をそらさずミックスは言葉を続ける。
「俺にも兄さんや姉さんがいるからわかるんだ。クリーンは……お前のことを考えた結果、戦いを挑んで……。それなのにどうしてまだこんなことをするんだッ!?」
「ザコがなにイキがってんだ、あん!? 道化がまだ英雄になるつもりかよッ!? それじゃ笑えねぇ、笑えねぇぞ機械ヤロウッ!」
「狂ったふりして暴れているお前のほうがよっぽど道化じゃないかッ!」
「テメェ……殺す、殺してやる……。バラバラに斬り裂いて粗大ゴミの日に出してやんよッ!」
ブレイクが黒い刀――小鉄を構えた瞬間に、ミックスは彼に殴りかかった。
マシーナリーウイルスによる機械化により、常人の何倍もの身体能力を身に付けたその動きはたしかに速い。
だが、それでもミックスの機械の拳はブレイクには届かなかった。
当たる寸前で避けられ、下からアッパー気味に振り上げた刀でミックスを吹き飛ばす。
「ビャッハハ! だからぁ、おせぇぇぇんだよぉぉぉッ!」
そこからブレイクは立て続けに刀を振るい、飛ぶ斬撃を放っていく。
ミックスは両手を機械化させ、その猛攻に耐えながらじっと彼を見続けていた。
「テメェが英雄なりてぇのかは知らねぇがなッ! もしこの世にそんなもんがいるんなら、オレもクリーンもこんなイカレた国に来ちゃいねぇんだよッ!」
飛ばされ続ける斬撃で辺りには爆風が舞い、ブレイクはその中へと飛び込んでいく。
ミックスに止めを刺すつもりだ。
「ベルサウンド流、モード小鉄。斬鉄ッ!」
そして爆風の中からミックスを捉え、近距離から繰り出される光速の剣撃を放った。
だが、その光の速さともいうべき攻撃に手応えはなかった。
捉えたはずの敵が、いつの間にか視界の外にいたのだ。
ミックスはブレイクの刀をかわし、彼の顔面へ機械の拳を叩き込む。
カウンターの形となって繰り出された攻撃によって、今度はブレイクが吹き飛ばされた。
「どうなってんだ……? オレの技を……避けただけじゃなく……やり返してきやがっただと……?」
半壊した建物へと叩きつけられたブレイクは、口から流れる血を拭いながら唖然としていた。
おかしい。
前にやりあったときは、今の技で仕留められたはずだ。
それなのに、どうして今で奴を倒せないのだと。
そんな狼狽えるブレイクの前に立ったミックス。
膝をつく彼を見下ろしながら、力強く言葉を発する。
「お前は俺には勝てても、クリーンの想いには勝てない……。それを今から教えてやるッ!」




