表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その手に見えるは機械装甲  作者: コラム
73/948

#72

半壊(はんかい)した街中を進むブラッドとエヌエー。


エヌエーはブラッドと(となり)を走りながら、ハザードクラスである(くろがね)ブレイク·ベルサウンドを相手に何か(さく)はあるのかと(たず)ねた。


こちらの装備(そうび)はライオットシールドと発煙弾(はつえんだん)のみ。


電磁波(でんじは)放出(ほうしゅつ)装置(そうち)ーーオフヴォーカーを使わずに、どうやってブレイクを無力化(むりょくか)するのかと。


「なにいってんだ。作戦なんてあるわけないだろ」


ブラッドの言葉を聞いたエヌエーは大きくため(いき)をつく。


この人はいつも(いきお)いだけで考えなしだったと、辟易(へきえき)していた。


二人は今から七年前に起きた戦争(せんそう)――。


アフタークロエへ以前(いぜん)から、バイオニクス共和国(きょうわこく)のために戦っていた兵士だった。


現在(げんざい)は、自ら志願(しがん)して共和国の治安(ちあん)維持(いじ)する組織(そしき)――監視員(バックミンスター)へと参加(さんか)している。


ブラッドとエヌエーの経歴(けいれき)ならばもっと高い地位(ちい)()くことできたのだが。


二人は現場をほうが(しょう)に合っているといい、わざわざ身の危険(きけん)が多い仕事を(えら)んでいた。


ちなみに現在二十代半ばのブラッドとエヌエーは恋人同士であり、付き合ってもう十年以上()っている。


「訊いたあたしがバカだったわ……。でもブラッド、あたしたちはアンやシックスとは(ちが)うんだからね」


「それでもやるしかないときはある。第一に子どもが(あば)れてんだ。そこは大人が止めてやるのが道理(どうり)だろ」


「ブラッドったら、まるで父さんみたいなことをいうのね」


「当たり前だつーのッ! (おれ)たちはあのバイオの親父に(そだ)てられてんだぜッ!」


エヌエーは(あき)れているようで、ブラッドの言っていることを理解(りかい)していた。


それは、今は()き育ての親を(ほこ)らしく(おも)うからこそだ。


たとえ(ちから)(およ)ばないにしても、やらなければいけないことがあると、エヌエーはその言葉を(こころ)の中で復唱(ふくしょう)する。


「そうだよね。よし、(いそ)ぎましょう」


「ああ、さっさと止めてやろうぜ」


それから二人はついにブレイクを見つけた。


彼は笑いながら黒い日本刀(にほんとう)を振り回し、(かたな)から飛んでいく斬撃(ざんげき)で目に入るものをすべて破壊(はかい)している。


すでに周囲(しゅうい)にあったビルや建物(たてもの)(くず)れ、まるで怪獣(かいじゅう)でも通り過ぎたかのようなあり様だった。


ブラッドとエヌエーは、シールドを(かか)げこれ以上はやらせないとブレイクの前に立ちふさがる。


「あん? なんだテメェらは?」


ニタニタと(ゆが)んだ笑みを()かべブレイクは、二人に向かってゆっくりと(あゆ)み寄って来る。


たかだか一本の刀でここまでの破壊(はかい)ができるものなのか。


(あき)らかに人間技ではない。


「そうか……さっきから(けむり)()()らして逃げ回ってたのはテメェらだな」


ブラッドとエヌエーは、七年前の戦争以前からこれまでも何度も死線(しせん)(くぐ)り抜けてきた。


だが、所詮(しょせん)二人は特別(とくべつ)な力を持たない人間である。


このままブレイクと戦えば死を(まぬが)れないことは明白(めいはく)だった。


しかし、それでもブラッドとエヌエーは退()かない。


銃火器(じゅうかき)護身(ごしん)用具(ようぐ)すら持たず、ライオットシールドのみでこの人間離れした少年を止めようとしていた。


これは戦争ではないのだ。


自分たちは彼を傷つけたいのではない。


殺したいのでもない。


ただ少年を止めたいのだと。


「おい! いい加減(かげん)やめるんだ! こんなことして何になるッ!?」


ブレイクは叫ぶブラッドを見てさらに笑う。


いや、笑っているというというよりは、ただ不気味(ぶきみ)口角(こうかく)をあげている。


「うるせぇなぁ、もういいんだよ。ぜんぶブッ(こわ)すって決めたんだからよぉ」


ブレイクはそういいながら刀を振った。


(すさ)まじい黒い斬撃がブラッドのシールドへと直撃(ちょくげき)し、彼はなんとか()ん張って()える。


「くっ!? どうして壊す必要がある? 俺に話してみてくれよ」


「あん? テメェら大人がわりぃんだろ? この世界はクソッたれだ。だから壊すんだよッ!」


ブレイクは続けて斬撃を(はな)っていく。


だが、ブラッドもエヌエーもライオットシールドを前へと突き出し、何とか受け止める。


意味(いみ)なんてねぇんだよッ! (うら)むならこんな世界をつくったテメェら大人を恨みやがれッ!」


「どうしてそんなに世界や大人を恨む?」


「んなもんテメェで考えろッ!」


ブラッドは凄まじい斬撃を受けながらも、少しずつブレイクへと近づいていた。


エヌエーもそんな彼の後に続き、(あらし)のような攻撃に耐えながら進んでいく。


支離(しり)滅裂(めつれつ)だが、たしかにお前のいうことにも一理(いちり)ある。だけどなぁ、本当にこの世界のすべてが悪かったか? 本当にすべての大人が悪人だったか?」


「あなたにも(やさ)しくしてくれた人はいたでしょ? それともいないからこんなことをするの?」


近づいた二人がなんとかブレイクを止めようと声をあげていたが。


彼は急に攻撃を止めて立ち止まった。


「フギャアアアハッハアアッ! 少なくともこの国にはいねぇなぁぁぁッ!」


そして、次の瞬間(しゅんかん)――。


一瞬(いっしゅん)のうちに間合(まあ)いを()めたブラッドは、二人のライオットシールドを斬り裂いた。


その衝撃(しょうげき)により、二人の身体が(ちゅう)を舞って半壊している建物へと(たた)きつけられる。


もし防弾防刃ベスト着ていなければ、きっとシールドごと真っ二つにされていただろう。


「ビャッハハ! フギャアアアハッハアアッ! どうしたんだよッ!? オレを止めるんじゃなかったかぁッ!? あぁぁぁんッ!?」


ブレイクは、すでに気を(うしな)っているのだろうブラッドとエヌエーに向かって、まるで(くる)ったかのように高笑った。


ほぼ崩壊(ほうかい)している街に、彼のおぞましい笑い声だけが(ひび)いている。


もはや自分を止めようとする者はいない。


ブレイクはそう思いながら空に向かって笑い続けていた。


だが、どうしたことだろう。


ブレイクの持つ黒い刀――小鉄(リトル スティール)突如(とつじょ)(ふる)え出し始めた。


何かに(おそ)ろしいものに反応(はんのう)しているような、そんな震え方だ。


その正体(しょうたい)がなんなのかをブレイクはすぐに気が付く。


いつの間にか笑うのすら(わす)れ、その正体のほうを向く。


「なにしにきやがった……機械(きかい)ヤロウッ!」


そこには、右腕を機械化させて立っているミックスの姿(すがた)があった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ