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その手に見えるは機械装甲  作者: コラム
71/948

#70

ミックスに(ささ)えられたクリーンは、その死人のような顔で彼のことを見上げる。


その目は(うつ)ろで、元から(はかな)さを帯びていた彼女の雰囲気(ふんいき)がさらに強まり、まるで幽霊(ゆうれい)のようだった。


「……(はな)してください」


クリーンは技を()き、ミックスの手を(はら)って待合室(まちあいしつ)を出て行こうとする。


顔色は先ほどよりは良くなっていたが、それでも足取りはおぼつかず、今にも(たお)れてしまいそうだ。


「ダメだ。キミを行かせるわけにはいかない」


(ふたた)びクリーンの前に立ちふさがるミックス。


クリーンはそんなミックスを(にら)みつけると小雪(リトル スノー)を彼へと向けた。


邪魔(じゃま)をするのならば、いくらミックスさんといえど()って捨てますよ」


白い(やいば)を目の先まで突きつけ、すぐにでも斬りかかろうかというクリーン。


だが、ミックスは動かない。


(だま)ったまま彼女を見つめているだけだ。


退()かねば……本当に斬りますよ……」


そしてクリーンは、ついにその刃をミックスへと振り落とす。


彼の(かた)は斬り()かれ、()き出した血が待合室を()める。


「なぜ……()けないのですか……?」


クリーンはミックスの態度(たいど)に言葉を(うしな)っていた。


なぜ振り落とされた(かたな)を避けないのか?


なぜ身体を機械化(きかいか)させて刃を(はじ)かないのか?


それらをしないせいで、今あなたは血を(なが)してしまっているではないか、と。


彼女にはミックスのしていることが理解(りかい)できないでいた。


そんなクリーンの背中(せなか)から、目を覚ましたのか、ニコの()き声が聞こえてきた。


クリーンが振り向くと、ニコはとても悲しそうな顔で彼女のことを(なが)めている。


(ねが)いだからやめて、といっているようにメェーメェー鳴いている。


「わ、私は……(にい)(さま)を……」


(おび)えながら(ふる)えているニコの姿(すがた)を見て、クリーンはさらに動揺(どうよう)した。


だってしょうがないではないか。


ここで自分が兄を止めなければ、一体誰が彼を止めるんだ。


もう頼れる人間などいないのだ。


クリーンの頭の中では、そんな言葉がグルグルと回っていた。


(おれ)がやる……」


ミックスは動揺しているクリーンの持つ小雪(リトル スノー)の刃を(にぎ)る。


すると、ミックスの(うで)が機械化し、小雪(リトル スノー)の刃と共鳴(きょうめい)するように輝きだした。


クリーンは何が起きているかわからず、ただ唖然(あぜん)としていると――。


「なんとなくわかるよ……。俺にもさ。母さんがいなくて、父さんも戦争で死んじゃったんだ。だから……もし、兄さんと姉さんになにかあったら……自分の(いのち)を捨ててでもなんとかしようとすると思う」


ミックスが(おだ)やかな顔を向けて声をかけてきた。


自分もクリーンと同じように両親はすでに死に、兄と姉しか家族がいないのだと。


だからクリーンの気持ちは痛いほどわかるのだと。


クリーンには彼のいっていることがわからなかった。


何故ならば彼女は、自分の両親が死んでいることをミックスに話したことなどないからだ。


それなのにどうしてそのことを知っているか。


先ほど小雪(リトル スノー)()れたことと何か関係(かんけい)があるのか。


「ミックスさん……いったいどうして……?」


クリーンが立ち尽くしていると、小雪(リトル スノー)が犬の姿へと戻り、()け寄ってきたニコと抱き合っていた。


ミックスはそんな二匹を見て微笑(ほほえ)むと、再びクリーンのほうを向く。


「俺なんかじゃブレイクに勝てないかもしれないけど……。でも、クリーンの(おも)いならきっとあいつに(とど)くから……。だから……今度は絶対(ぜったい)に負けないッ!」


「ミックスさん……」


気が付くとクリーンは、その場に両膝(りょうひざ)をついて泣いてしまっていた。


いくら(こら)えても(あふ)れる(なみだ)を止めることができない。


「ここで待っててよ。クリーンの兄さんは(かなら)ず俺が連れてくるから。そしたらみんなが笑えあえるような、そんなハッピーエンドな終わり方にできるでしょ」


ミックスはひざまずくクリーンの(あたま)をポンッと(たた)くと、待合室から走り去っていった。

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