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その手に見えるは機械装甲  作者: コラム
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48/948

#47

それから場所(ばしょ)を移動(いどう)したミックスとクリーン。


ファミリーレストラン前からかなり走ったのか、周(まわ)りには先ほど二人が争(あらそ)ったことによる喧騒(けんそう)もなく、子どもたちがさよならの挨拶(あいさつ)を交(かわ)わしている。


クリーンは屈(かが)んで白い犬――小雪(リトル スノー)の頭(あたま)を優(やさ)しく撫(な)でていた。


ミックスは、嬉(うれ)しそうに鳴(な)いている小雪(リトル スノー)と、それを愛(いと)おしそうに見ているクリーンの姿(すがた)から、先ほどのような凄(すさ)まじい戦いを仕掛(しか)けてきた人物と同じ人間とは思えないでいた。


この白い髪の少女は、なぜ自分に襲(おそ)いかかってきたのか?


試(ため)す必要(ひつよう)があった、あなたは強い――。


そして、急(きゅう)に刀(かたな)を収(おさ)めた彼女の言葉の意味(いみ)を考えていたが、結局(けっきょく)はわからない。


だがミックスは、クリーンにそのことを訊(き)けず、ただ彼女の傍(そば)で立ち尽(つ)くしていただけだった。


「ミックスさん」


「は、はいッ!」


すると、突然(とつぜん)クリーンのほうから声をかけてきた。


ミックスは考え事をしていたのもあって、思わず声が上ずってしまう。


クリーンは立ち上がり、彼の目を見た。


小雪(リトル スノー)も彼女と同じように、ミックスのほうへ顔を向けている。


「当然の無礼(ぶれい)、誠(まこと)に申(もう)し訳(わけ)ありませんでした」


そして、クリーンは慇懃(いんぎん)にその頭(あたま)を下げ、小雪(リトル スノー)もそれに続いた。


ミックスはまだわけがわからないままだったが、そのことはもう気にしないでいいと答(こた)える。


「それでさ。どうしていきなり襲ってきたのかを話してもらいたいんだけど」


「実(じつ)は、ミックスさんのことをウェディングに聞きまして……。それで、失礼(しつれい)ながらあなたの強さを確(たし)かめさせてもらったのです」


クリーンは、よくウェディングの話の中に出てくるミックスに、以前(いぜん)から興味(きょうみ)を持っていたという。


とても優しく、料理上手(じょうず)で差別(さべつ)なく誰にでも気を遣(つか)う素敵(すてき)な先輩(せんぱい)。


ウェディング自身(じしん)もミックスと出会わなければ、今のように明(あか)るく前向きな性格(せいかく)にはなっていないだろうと――そうクリーンは聞いていた。


「彼女がそこまで言う人と、私も会ってみたかったのですよ」


「う~ん、ウェディングは俺(おれ)の影響(えいきょう)というよりは、元(もと)からああいう性格だったと思うけど……」


クリーンは、首(くび)を傾(かし)げながらいうミックスを見て、クスッと上品(じょうひん)に笑う。


なんだか納得(なっとく)いっていない様子(ようす)の彼に、小雪(リトル スノー)まで嬉しそうに鳴いていた。


それからクリーンは話を戻(もど)した。


ウェディングから聞かされたこないだの事件(じけん)。


ストリング帝国(ていこく)から来たブロードたちが起(お)こそうとしたテロ行為(こうい)。


バイオニクス共和国(きょうわこく)を象徴(しょうちょう)する管制塔(かんせいとう)――アーティフィシャルタワーでの出来事(できごと)を。


「私は彼女から事件の話を聞いたときに、ミックスさんがマシーナリーウイルスの適合者(てきごうしゃ)であることを知りました。あの、アン·テネシーグレッチような“ヴィンテージ”と同じ力(ちから)の持ち主(ぬし)だと」


ヴィンテージとは――。


アフタークロエ以前に起きたコンピューターの暴走(ぼうそう)を止めた救世主(きゅうせいしゅ)たちのことである。


現在(げんざい)でも生存しているのは、先ほど出た筆頭(ひっとう)ともいうべきアン·テネシーグレッチと、ストリング帝国の将軍(しょうぐん)であるローズ·テネシーグレッチとノピア·ラシック両名(りょうめい)を合わせて三人のみ。


三人はマシーナリーウイルスの適合者であり、その身体を自在(じざい)に機械化(きかいか)――装甲(アーマード)させることができる。


クリーンは、その適合者の力を確かめるべく、ミックスに戦いを仕掛けたという。


「最初(さいしょ)はただ優しいだけの人と思いましたが。ミックスさんの拳(こぶし)を受けてみて、それが杞憂(きゆう)だったとすぐにわかりました」


「え~と、話が見えないんだけど……?」


ミックスが困(こま)った顔で訊(たず)ねるとクリーンは俯(うつむ)いた。


表情(ひょうじょう)はよく見えないが、彼女が悲(かな)しんでいることがわかる。


「誠に勝手ながら、ミックスさんにお願(ねが)いがあるのです……」


「お願い……?」


クリーンはゆっくりと顔をあげていうと、ミックスがまた首を傾げる。


そして小雪(リトル スノー)は、身を震(ふる)わせているクリーンの足に寄(よ)り添(そ)いながらくぅーんと鳴いていた。


「兄を止めたい……。そのために力を貸(か)していただけないでしょうか?」

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