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その手に見えるは機械装甲  作者: コラム
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36/948

#36

――ブロードが爆破(ばくは)しようとしたバイオニクス共和国(きょうわこく)を象徴(しょうちょう)する管制塔(かんせいとう)であるアーティフィシャルタワー広場での事件(じけん)から次(つぎ)の日――。


ミックスは病院(びょういん)で検査(けんさ)を受けていた。


彼が目を覚(め)ましたときには、ジャズはすでにおらず。


一緒(いっしょ)に病院へ運(はこ)ばれたはずのブロード、ヘルキャット、アリアの三人の姿(すがた)もなかった。


(ジャズたちはどこへいったんだろう……)


ミックスは検査を終え、病衣(びょうい)姿のまま、入院(にゅういん)している自室(じしつ)へと戻(もど)っていく。


廊下(ろうか)の窓(まど)から外を眺(なが)めながら、彼はジャズがいなくなってしまったことを気にしていた。


黙(だま)っていなくなるなんて酷(ひど)いじゃないかと、その内心(ないしん)で呟(つぶや)く。


それから午後(ごご)になり、もう陽(ひ)が沈(しず)みかけてきた頃(ころ)、彼の病室(びょうしつ)に二人の人物(じんぶつ)がやって来る。


「ミックスせんぱ~い! お見舞(みまい)いにきましたよ~!」


「ミックスくん、どうですか? 身体(からだ)の調子(ちょうし)は?」


|舞う宝石《ダンシング·ダイヤモンド》ウェディングとミックスの担任(たんにん)教師(きょうし)であるアミノだ。


ミックスは二人へお見舞いに来てくれたことの礼(れい)をいうと、もう身体のほうは問題(もんだい)ないことを伝(つた)えた。


すると、ウェディングは手に持っていた荷物(にもつ)から巨大(きょだい)なホールケーキを出す。


イチゴと生クリームが付いているシンプルなタイプのやつだ。


「せんぱいが元気になったお祝(いわ)いです。さあ、そのままガブッといっちゃってください」


ウェディングが出した巨大なケーキはなんと五層(ごそう)もある。


しかし、それがすべて生クリームとスポンジだ。


ミックスはそんなホールケーキを見て冷(ひ)や汗(あせ)を掻(か)いていた。


「いや、あのさ、ウェディング。すっごく嬉(うれ)しいんだけどさ……。この大きさのケーキを一人で食べ切れるかなぁ……」


「食べちゃってください。ミックスせんぱいのために作ってきたんですよ」


「嬉しいんだけど、ホンット嬉しいんだけどさ。ここはアミノ先生やウェディングみんなで食べようよ。ねえ先生?」


救(すく)い手を求(もと)めるかのようにアミノを見るミックス。


彼女はその巨大なホールケーキを見て目を輝(かがや)かせていた。


だが、すぐにブンブン首(くび)を横(よこ)に振ると、その表情(ひょうじょう)を厳(きび)しいものへと変えた。


「これはウェディングさんがミックスに作ったものですから、先生は遠慮(えんりょ)しておきます。なによりこのところ間食(かんしょく)の取り過(す)ぎで太(ふと)ってしまったので……」


どうやらアミノは現在(げんざい)ダイエット中(ちゅう)だったようだ。


しかし、それでも彼女はウェディングの作ってきたケーキを食べたそうにしていた。


それに気が付いたミックスが、体重(たいじゅう)なんて気にせずに食べましょうというと――。


「いいから早く食べてくださいッ! こんな美味(おい)しそうなケーキを目の前に置かれ、先生がどれだけ辛(つら)い思いをしているのかを、ミックスくんにはわかっているのですかッ!」


「なんで俺(おれ)が怒(おこ)られるの……」


ミックスが怪訝(けげん)な顔をしていると、ウェディングはまた荷物をゴソゴソとし出す。


「ドササァァァッ! ちゃんとチョコレートもありますよ!」


そして、今度は板(いた)チョコレートを大量(たいりょう)にミックスのベットに撒(ま)いた。


アミノはまた目を輝かせ、ミックスはさらに顔を強張(こわば)らせる。


「あのさウェディング……。実(じつ)は俺……甘(あま)いものって苦手(にがて)なんだよね……」


「これからお見舞いのときには毎回ケーキ作って来ますね。せんぱいが退院(たいいん)するまでずっとです!」


ミックスは正直に甘いものが好きではないことを伝えたのだが。


ウェディングはそんな彼の言葉を無視(むし)して、最高(さいこう)の笑顔を見せていた。


もはや話は聞いてもらえないと思ったミックスは、ガックリと肩(かた)を落として呟(つぶや)く。


「これは早く退院しないと別の病気にかかりそうだ……」


それからミックスは、一人でその巨大なホールケーキを食べたのだった。

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