#34
突如現れた少女は、はしゃぎながら両手をあげて喜んでいる。
間一髪のところを救われたジャズだったが、彼女が何者なのか、一体何が起こったのかもよく理解できずにその場で立ち尽くしていた。
「あの啖呵を切るようなセリフ、とってもステキでしたッ! あたしファンになっちゃいそうッ!」
「あんた、誰……なの……?」
その少女は、ほぼ放心状態のジャズの両手を掴んで嬉しそうにしていた。
ジャズの両手を掴んでいる彼女の手の表面には、宝石のようなもので覆われている。
「なんでウェディングがここにいるんだよッ!」
ミックスの叫び声でジャズがハッと正気を取り戻す。
そして彼女は、目の前の少女のことをよく見た。
「ウェディングって……じゃあ、あんたがあの|舞う宝石《ダンシング·ダイヤモンド》なのッ!?」
「知っていただけ光栄で~す。以後お見知りおきをくださ~い」
「なんでハザードクラスがあたしを助けたのよ……?」
「まあまあ、お姉さん。それはちょっと置いといてぇ~。今はあれを止めればいいんですね」
二人が話しているうちに、ナノクローンはアーティフィシャルタワーに迫っていた。
ウェディングはまだ驚いているジャズにニッコリ微笑むと、まるでコンクリートの地面をすべるように駆け出していく。
彼女には特殊能力があり、その名を|超復元《グレート·リストレーション》という。
実質的にどんな重傷を負おうが、どんなウイルスに感染しようがすべて正常な状態に治してしまう治癒能力である。
彼女はその能力があるがゆえに、バイオニクス共和国のとある研究所で行われた実験――。
増幅計画と呼ばれた人体実験の被験者であった。
その全身の骨格には分子レベルでダイヤモンドを結合され、自分の意思で全身のどこからでも武器として露出可能(皮膚を突き破ってダイヤモンドにするなど)。
だが、彼女の能力の本当に恐ろしいところは、たとえ心臓を潰されようが頭を吹き飛ばされようが、瞬時に蘇生できることに他ならない。
実験により身体能力も向上され、人間離れしたスピードと宝石を使って戦うその姿から、科学者たちは彼女に舞う宝石というコードネームを付けた。
今ウェディングがやっているのは、足の裏にダイヤモンドを露出させ、走る勢いですべらせている。
氷の上をすべるスケートの要領だ。
「これやっちゃうと靴がダメになるからイヤなんですけど。お姉さんがカッコよかったからやっちゃいま~す!」
そして、ナノクローンに追いついたウェディングは両手の拳を握った。
すると、手の甲から剣の形をした宝石――ダイヤモンドが表れる。
手から生えた宝石の剣。
まるで手甲剣のようなダイヤモンドが、ナノクローンの放つビーム兵器――スモールコーラスの光に当てられて輝いていた。
「ビームなんて私の身体には効きませんよ」
ウェディングは、飛んでくるスモールコーラスを弾き返しながら、その両手に付いた手甲剣をナノクローンへと振るう。
ジャズの使っていた銃剣のナイフでも傷がつかなかった装甲が、まるでバターのように斬り裂かれた。
「あとひとつですね」
ウェディングは残ったナノクローンを追いかけようとした。
だが、その一体はすでにアーティフィシャルタワーまでたどり着いてしまっていた。




