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その手に見えるは機械装甲  作者: コラム
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3/948

#3

それからジャズは、パスタを食べながら自分のことを話し出した。


ミックスはそんな彼女の態度(たいど)に、やはり美味(おい)しいものは偉大(いだい)だなと、笑みを浮(う)かべる。


「あんた……人がせっかく話してやろうと思っているのに何を笑ってんの?」


「いや~、やっぱ食事って大事だなぁってさ」


「変(へん)な奴(やつ)……」


気を取り直(なお)し、ジャズが口を開く。


自分が今二人がいる国――バイオニクス共和国(きょうわこく)の住民(じゅうみん)ではないこと。


とある国の軍人(ぐんじん)であること。


この国へは友人に会いに来たことを、早口(はやくち)にさらに簡素(かんそ)に述(の)べた。


「えッ!? 軍人!? だからミリタリーっぽい格好(かっこう)しているのか!?」


「これは私服(しふく)」


「えッ!? あ、でもさ。ジャズは軍人なんだよね?」


「さっきそう言ったでしょ。何度も同じことを聞かないでくれる」


ミックスは、普段(ふだん)から軍服(ぐんぷく)を着る軍人が、私服もミリタリールックなのはどうなのだろうと、心(こころ)の中で思う。


だが、それを口にするとまたジャズの鋭(するど)いつり目に睨(にら)まれると考え、黙(だま)っていた。


(なんか、マイペースな子だと思っていたけど。それ以上に怒(おこ)りっぽいなぁ、この子……)


そして、なるべく彼女の機嫌(きげん)を損(そこ)ねないように振(ふ)る舞(ま)うのであった。


そして、食事を終(お)えたジャズは床(ゆか)から立ち上がり、ドアのほうへと向かっていく。


「“とある”ところへ行くつもりなの?」


ミックスに訊(たず)ねられたジャズの足が止まる。


だが、彼女はけして振り返(かえ)ることはなく、そのまま返事をした。


「一応(いちおう)、礼(れい)は言っとくわ。ありがと……」


「一応って言葉が好きだよね」


ミックスの言葉を聞いたジャズは握(にぎ)っていた拳(こぶし)に力(ちから)を込(こ)めた。


別(べつ)に、こっちだって好きなわけじゃない。


だか、謝罪(しゃざい)と感謝(かんしゃ)は他人(たにん)に対(たい)する礼儀(れいぎ)だろうと言いかけて止める。


そして、再び足を動かそうとした。


「ねえ、ひとりで大丈夫(だいじょうぶ)? この国へは初めてきたんでしょ? 俺(おれ)なんかでよかったら力になるけど」


「いい、出てくよ。見ず知らずのあんたまで巻(ま)き込めないからね」


部屋をこんなにしておいて今さら――。


と、ミックスはそう思った。


だが、やはり彼女が不機嫌(ふきげん)になると思い、そのことは黙(だま)っていた。


「巻き込めないって……さっき言ってた友だちの問題(もんだい)にってこと?」


「あんたにそこまで説明(せつめい)する理由(りゆう)はない」


「でもさ。ここを出て、どっか行く当てでもあるの?」


「だからさっき言ったでしょ? あたしは見ず知らずの奴(やつ)を巻き込みたくないんだよ。あたしに関(かか)わったせいで、あんたも死ぬかもしれないんだ。何度(なんど)も言わせるな!」


「ちょっと待ってよ! 死ぬとか物騒(ぶっそう)なこと聞いたら、余計(よけい)に放(ほう)り出せないよ!」


ミックスが声を張(は)り返すと――。


ジャズは彼を小馬鹿(こばか)にするような笑みを浮かべた。


「じゃあ、あんたにあたしと死ぬ覚悟(かくご)があるっていうの?」


彼女は笑みを浮かべたまま言葉を続けた。


勝手(かって)に部屋に侵入(しんにゅう)し、しかも別の国から来た初対面(しょたいめん)の人間のために――。


あんたは命(いのち)を懸(か)けられると言うのかと。


「半端(はんぱ)な優(やさ)しさはいらない。偽善(ぎぜん)はもっといらない」


「俺は別に……」


「パスタ……ありがと……。とっても美味しかったよ。もし生き延(の)びたら、お礼(れい)は必(かなら)ずするから」


そして、ジャズは扉を開けて部屋を出て行った。


ミックスは彼女を追いかけて家の外へとまで出る。


「困(こま)ったことがあったら、いつでもここに来ていいからね!」


だが、ジャズの姿(すがた)はもうすでに遠(とお)く。


ミックスは、彼女に届(とど)いているかわからない言葉を投げかけるのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 会話と雰囲気が凄く伝わってくる。 [気になる点] 情景描写が全くないのが気になる。会話の雰囲気は伝わるがどこで何をしているのかが伝わらない。 [一言] 地の文をしっかり挟まないと会話劇で単…
2021/10/14 04:35 退会済み
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