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その手に見えるは機械装甲  作者: コラム
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2/948

#2

「コホン。まずは勘違(かんちが)いして悪かったわ」


目覚(めざ)めた後――。


どういう状況(じょうきょう)だったのかを理解(りかい)したサイドテールの少女は、座(すわ)っているミックスを見下ろしていた。


だが、それでもまだ少女は警戒(けいかい)していそうだ。


表情(ひょうじょう)を強張(こわば)らせたまま、彼のことを見ている。


「……それはいいけど。どうしてうちのベランダで倒(たお)れてたの?」


「一応(いちおう)、自己(じこ)紹介(しょうかい)をしておく。あたしはジャズ、ジャズ·スクワイア」


「いや……あのさ……」


「ほら、あたしも名乗(なの)ったんだからあんたも名乗りなさいよ」


「……俺(おれ)の名前は、ミックスです……」


ミックスは思った。


このミリタリールックの少女は人の話を聞いていないのだろうか。


どうして他人(たにん)の家にいたのかを訊(たず)ねたのに、いきなり自分の名を名乗り出したのだ。


礼儀知(れいぎし)らずというかなんというか。


だが、彼女に言い返せないミックスは、その鋭(するど)いつり目を見れずにそらしてしまう。


(ずいぶんマイぺースな子だなぁ……。まあ、相手の名前を覚(おぼ)えるのって大事だけど……)


そう、遠(とお)い目をしているミックスのことなど気にせずに、ジャズと名乗った少女は言葉を続ける。


「あまり詳(くわ)しいことは話せないけど。とある事情(じじょう)があって、とある問題(もんだい)を解決(かいけつ)するために、とある目的(もくてき)があってあんたの家にいたんだ」


「うん……。詳しく話せないだけあってとあるが多いね……」


「しょ、しょうがないじゃない!? 話せないことなんだから!」


慌(あわ)てて言い返すジャズ。


それを見たミックスが呆(あき)れていると、突然(とつぜん)彼女が床(ゆか)にヘナヘナとへたり込(こ)む。


心配(しんぱい)したミックスが駆(か)け寄(よ)ると、彼女の身体からグゥ~という音が鳴(な)った。


その音を聞かれたジャズは、へたり込んだまま顔を真っ赤にしていた。


「なんだ、お腹(なか)がすいてたんだ」


ミックスはそんな彼女にニッコリと微笑(ほほえ)んだ。


それから台所へ行くと冷蔵庫(れいぞうこ)を開け、中に入れてあった食材(しょくざい)を出し始める。


ジャズはミックスが一体何をしようとしているかわからないようで、呆(ほう)けた顔をして彼のことを見ていた。


「なにしてんの、あんた?」


「見てわかんないの? これからキミのご飯を作るんだよ」


ミックスはまず電子レンジに用意していたソースを入れ、鍋(なぜ)に水を入れ沸騰(ふっとう)させる。


そして、次にまな板を出して野菜(やさい)を切り、沸(わ)かしていた水がボコボコと鳴り出すとパスタを茹(ゆ)で始めた。


ミックスの動作は明(あき)らかにやり慣(な)れている。


しかも実に楽しそうに料理をする彼に、ジャズは思わず見惚(みと)れてしまっていた。


「はい完成。我(わ)が家(や)のオリジナルのソースを使ったパスタとサラダだよ」


ミックスは料理をテーブルへと置くと、ジャズに差し出した。


出来立(できた)てのパスタから湯気(ゆげ)が上がっていて、さらにチーズの匂(にお)いが食欲(しょくよく)を刺激(しげき)してくる。


「こんな簡単なものしか作れないけど、よかったら食べて」


「食べちゃっていいの? あんたの分(ぶん)でしょ、この料理?」


ジャズがそう訊ねるとミックスはコップに水を注(そそ)ぎ始めた。


「いいよいいよ。だってジャズはお腹減(へ)っているんでしょ? 俺はいま困(こま)るほど空腹(くうふく)じゃないし」


「だけど……」


「いいからいいから。それともパスタは嫌(きら)いだった?」


笑顔のミックスに訊かれ、何も言い返せなくなったジャズ。


彼女はフォークを手に取ると、申(もう)し訳(わけ)なさそうパスタに手をつけだした。


「うぅんッ!? なにこれ……美味(おい)しい……」


「でしょ? このパスタソースは兄さんと姉さんが長年かけて完成させたものなんだよ。そこら辺(へん)のパスタソースと同じにしてもらっちゃ困るね」


「あんたのお兄さんとお姉さんって、パスタソースを作る仕事をしてるの?」


「いや、違(ちが)うよ。二人とも、料理は趣味(しゅみ)だって言ってた」


趣味にしてはずいぶんと本格的(ほんかくてき)な味(あじ)のソースだ。


ジャズは料理や食べ物に疎(うと)いが、このパスタソースが、とても普通(ふつう)の家庭に出てくるようなものではないと思っていた。


「美味しいならよかった。それじゃ、冷(さ)める前に食べちゃいなよ」


「う、うん……。では、改(あらた)めていただきます」


ミックスにそう言われたジャズは、ひとまず空腹を満(み)たすことにするのだった。

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