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その手に見えるは機械装甲  作者: コラム
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23/948

#23

そこにはミックスが咆哮(ほうこう)をあげ、立っていた。


吹(ふ)き飛ばされたブロードは思う。


危(あぶ)なかった。


奴(やつ)の拳(こぶし)を受ける前に効果装置(エフェクト)をオンにしなければやられていた。


しかし、今の一撃(いちげき)は適合者(てきごうしゃ)による身体(しんたい)能力(のうりょく)の向上(こうじょう)だけではない。


この重力(じゅうりょく)を直接(ちょくせつ)身体(からだ)にかけられたような感覚(かんかく)は一体(いったい)?


かのアン·テネシーグレッチは自身(じしん)の機械化(きかいか)に加(くわ)えて電撃(でんげき)を操(あやつ)ったというが。


この少年もまた身体能力の向上以外(いがい)の力(ちから)を持っているということか?


想像(そうぞう)もしていなかった攻撃を受けたブロードが困惑(こんわく)していると――。


「大佐(たいさ)ッ! ブロード大佐ッ! 奴が来ますッ!」


ヘルキャットが彼に向かって叫(さけ)んだ。


ブロードはすぐに頭(あたま)を切り替(か)え、向かって来ているミックスに対(たい)して身構(みがま)える。


すでに距離(きょり)を詰(つ)めていたミックスの拳(こぶし)を避(さ)けきれず、ブロードは機械化した両手(りょうて)をクロスさせ彼の攻撃を受け止める。


ミックスの拳を受けた瞬間(しゅんかん)、ブロードは身体ごと地面(じめん)へとめり込(こ)んでいく。


(まただ。やはりこの少年……何か適合者以外(いがい)の力を持っているッ!?)


先ほどと同じように――。


重力を直接かけられた感覚を味(あじ)わったブロードは、両手だけなく両足も機械化させて踏(ふ)ん張り、ミックスをはね除(のけ)ける。


ミックスはただ払(はら)われただげで苦痛(くつう)の表情(ひょうじょう)を浮(う)かべていた。


「その怪我(けが)でよくやるな。褒(ほ)めてやる」


そんな彼を見たブロードは静(しず)かに口にする。


たとえ相手が未知(みち)なる能力を持っていたとしても、腹(はら)に穴(あな)が空(あ)いて血(ち)を流(なが)しているのだ。


そんな重症(じゅうしょう)の――ましてや素人(しろうと)の子どもに、自分は何を恐(おそ)れる必要(ひつよう)があるのか。


ブロードはそう思うと冷静(れいせい)さを取り戻(もど)していた。


そして、今度こそミックスが立ち上がれないように彼へと襲(おそ)いかかろうとする。


「貴様(きさま)はよくやったよ。出会ったばかりの相手にそこまでしてもらえれば、ジャズの奴(やつ)もさぞ嬉(うれ)しいだろう。そこまで姪(めい)が好(す)かれるのは叔父(おじ)として鼻(はな)が高い」


ブロードの余裕(よゆう)の言葉を聞き、腹に空いた穴を押さえながらミックスは身構(みがま)える。


だが機械の拳を固(かた)めていても、今にも気を失(うしな)いそうだ。


そして、今まさにブロードが飛びかかろうとしたとき――。


「大変だぁぁぁッ!? こんなところでケンカしてるぞッ!?」


突然若(わか)い男の声が聞こえた。


狼狽(うろた)えているような、ふざけているような、そんな調子(ちょうし)の声だったが、ブロードたち三人は目立(めだ)つのはまずいとその場から立ち去ろうとする。


「一人は腹から血を流してるぞ! 誰か早く監視員(バックミンスター)、いや医療(いりょう)ドローンを呼べぇぇぇッ!」


男の声はさらに続き、ブロードは舌打(したう)ちをすると、ヘルキャットとアリアへこの場から離(はな)れるように言った。


去っていく二人を確認(かくにん)した彼は、彼女たちとは別(べつ)の方向(ほうこう)へと駆(か)け出す。


「待って叔父さんッ!」


ジャズがその背中(せなか)に向かって叫(さけ)ぶと、ブロードはそのまま背を向けた状態(じょうたい)で走りながら返事をした。


「その少年を早く治療(ちりょう)してやれ。そして、お前は国へ帰るんだ」


そして、ブロードはジャズの前から姿(すがた)を消すのであった。


残(のこ)されたジャズは、今にも倒(たお)れそうなミックスを支(ささ)えながら自分の唇(くちびる)を噛(か)んでいた。


だが、すぐにミックスの手を肩(かた)に回(まわ)すと、ゆっくりと歩き出す。


「ジャ、ジャズ……」


「いいからッ! 今はあんたを医者(いしゃ)のところへ連れていくのが先だよ」


呻(うめ)くミックスへ黙(だま)るように言ったジャズは、表情を強張(こわば)らせながらも、その足を止めることはなかった。

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