第66話 恐怖の薔薇騎士団。
「すいませんでした!」
と、狐耳っ娘の勇者様が物凄い勢いで直角に頭を下げました。
いえね?
なんか男連れの女性がさっき、ピーちゃんたちに目がハートになってたらしい。
それを隣を歩いていた俺に見蕩れたと勘違いして、悪意をふんだんにまぶした話を通りすがりの騎士然としたこの狐耳っ娘にしたっぽい。
迷惑この上ないですね!
俺に見蕩れるとか何の冗談ですか?
可愛い娘(希望)に見蕩れられるとか、十五年の人生でただの一度もないわ!
「話を聞くとその通報した男が悪いようだからな。構わん」
「その男、見つけ出して灸を据えるべきでは?」
案の定、ご立腹のクロさんです。
「まあ、そのくらいにしておけ。ただの勘違いと分かって頂けたようだしな。そうだろう? シュパールヴァッサー卿」
「はい。その、申し訳なく・・・」
狐耳と尻尾がしゅんと垂れている。
くうっ
可愛いね!
たまらんね!
もふもふしてぇ!
ふぉっくすしてぇ!!
もう、この目の保養だけでお腹一杯です。
これ以上は俺、堪えられませんよ?
「シュパールヴァッサー卿、少し話が聞きたいことがあるのだが、よろしいか?」
「あっ、エルメントラウト--長いので、エルメで構いません。マグナ、殿、さん?」
「我もそれで構わぬ。もう気にせんで良いぞ。あと、さんでいい」
あっ、ちょっと耳尻尾が復活した。
軽くぱたぱたしてる。
やべぇ
クラウディアさんみたいなキリッとしたタイプもいいけど、ちょっと抜けた女騎士ってのもいいね!
ギャップ萌えか?
これがリアルなギャップ萌えというやつなのか!?
「あっ、この辺りはあまり治安が良くないですし、先ほどのお詫びもありますので、守備隊の詰め所に行きませんか?」
「うむ。そうするか」
ちょっとお茶しませんか?
みたいな美少女からのお誘いに、内心うきうきしてた俺が馬鹿でした。
まさかこの先に、この世の地獄が待っているなんて・・・
アルス・マグナ、本日二度目の一生の不覚です。
†
「あらぁ、可愛い子ねぇ。ふふふっ」
「もう、アタシのタイプだわぁ。食べちゃいたい」
「・・・・・・」
オストエントの町の守備隊の詰め所は魔物や魔獣との最前線ということもあり、ネデル領内でも屈強な戦士が多いそうです。
これに加えて、帝国全土からも騎士団が持ち回りで派遣されてくるらしく、今もいくつかが駐屯している。
エルメントラウトさん--エルメさんはちょっと立場が違っていて、継承帝国の東部にあるファルシア領主の娘という事もあり、皇帝陛下直属の自由騎士という立場らしい。
まあ、ここまではいい。
守備隊の詰め所に来て、隊員が食事をしたり休憩したりする大部屋に俺とクロは案内されました。
ピーちゃんたち従魔は流石に入れてもらえなかったので、訓練場で遊ばせています。
この部屋の窓からも訓練場は見えるから安心だ。
守備隊や騎士団のこてを聞いて、エルメさんに本題の勇者の話に入ろうかとしたその時です。
大勢のがやがやとした声がして、こいつらが--
〝麗しき紅薔薇の勇姿騎士団〟のオネェ様たちが現れたんです!
しくしくしく
もう分かりますよね?
お姉様じゃなく、オネェ様たちです。
俺、今、絶賛筋肉祭りの中にいます。
美少女の狐耳っ娘に着いて来て、マッチョに囲まれる。
美人局というやつですか?
大人な春を売る方面だけじゃなく、上京してきたお上りさんの新大学生やモテない若者を狙って高額商品を売り付けたりするという、あの、美人局ですか!?
どうしてこうなった!
しくしくしく
マッチョ硬い、マッチョ怖い、マッチョ嫌ぁ!
助けて! クロ様!
と、心の中で叫んでいる気持ちは従魔さんには届かず、逆に俺が褒めまくられているので上機嫌なクロさんです。
しくしくしく
「あ、あの、ステファヌス団長、マクシミリアン副団長、他のみなさんも・・・マグナさんは私のお客さんで、まだ話の途中なのでそれくらいに・・・」
「あらぁ、エルメちゃん、アタシのことはステフって呼んでって言ってるでしょう? 愛称だと、あの双剣と呼ばれる素敵な大探索者のステファン・スヴィンケルス様と一緒なのよぉ。きゃ! これってもしかして運命!?」
「マグナちゃん、アタシは気軽にミリアちゃんって呼んでね。きっと、アタシの運命はマグナちゃんだからぁ、ねっ!」
「あら、ミリアったらずるいっ!」
ぞわぞわぞわぁ
じ、地獄だ。
い、異世界が新宿○丁目みたいだ。
踏み入れてはいけない世界だ。
ああ、お父さん、お母さん、マグナはもう、お婿に行けない体になってしまうでしょうか?
孫を見せられなかった親不孝をお許し下さい。
「あ、あの・・・」
おろおろしているエルメさんの言葉も何処吹く風で、俺は小一時間マッチョオネェたちに玩ばれました。
ま、まる。
†
・・・・・・
じゅ、純潔は守ったよ!?
お持ち帰りだけは、断固阻止したからね!?
「す、すみませんでした。紅薔薇騎士団の皆さんは遠征中だと聞いていたので・・・」
アンタやっぱり、この危険人物たちのこと知ってたんかい!
これならスラム街の方が絶対に安全だわ!
本人は気付いてませんが、可愛い娘に見蕩れられたこともありました。(閑話参照)
マグナはショタっぽいので、年上の探索者や町娘たちに秋波を送られたりしてますが、いつも一緒のピーちゃんたちにだと思ってます。
鈍感系じゃないと豪語してますが・・・
っつーか、後半書いてて気持ち悪くなってきた。
もしかして墓穴掘った?




