第65話 それ、俺のことじゃないの?
「魔物を使って町の女子供を拐かし、守備隊の本部を偵察していた怪しい一団とは貴方たちですね!」
と、白い装備に身を包んだ女性騎士が剣を突き付けながら仰いました。
あー、確かに言われてみれば間違いではないんだけど、なんか過分に悪意が込もってないですか?
俺たち、ただ歩いて観光してただけなんですけどね?
あっ、俺に剣を向けられて、クロがキレかかってる。
こりゃ不味いかも。
「ふむ。何のことか分からぬが、お主は何者なのだ? 守備隊の騎士なのか?」
なんとなく最近分かってきたんだけど、クロやクジマみたいな忠臣キャラは、主である俺が話してる間は余程のことがないと口も挟まないし行動もしないんだよね。
これで一先ずは話が出来る。
「むっ、それはそうですね。例え悪漢狼藉者とはいえ、名乗りもしないのは失礼かも知れません・・・」
悪漢狼藉者て。
はっ!
待て待て、いきなりのことでよく見てなかったけど・・・
この娘、か、な、り、の、美少女!
美少女ではないですか!
くっ!
一瞬とはいえこのクラスの美少女に気付かないとは、アルス・マグナ一生の不覚!
流れる黒髪、透き通った肌、キリッとした眼差し。
しかも!
もふもふさんです!
狐耳っ娘の第二弾がきましたっ!
尻尾のふさふさ感が触らなくても分かります!
ひゃっほい!
これは、タイプは違うけどクラウディアさんにも勝るとも劣らない逸材!
もしもあっちの世界でアイドルグループやってたら、きっとセンター取れるぜ!
さあ、俺と一緒に芸能界でスターを目指すんだ!
とまあ、そんなよく分からんノリはどこかにうっちゃって、と。
「うむ。悪漢扱いされる謂われはないのだが、どのような場合でも名乗りはするものだ」
シャキン
俺に向けた剣を構え直し、掲げて彼女は言った。
「私はエルメントラウト・フォン・シュパールヴァッサー! デスヴォルクス継承帝国ファルシア領主、シュパールヴァッサー家の長女にして騎士、【勇者】の称号を持つ者です!」
あっ、黒い狐耳と尻尾がピンとした!
可愛い!
じゃないって!
今、勇者って言わなかった!?
称号を持つって、ステータスに書いてあるってことだよな?
それ、俺のことじゃねーの!?
ねぇ?
†
「さぁ! 私は名乗りましたよ! こんどは貴方の名乗る番です! クルメール商協同盟の手の者ですか!? それともエール連合王国? いえ、小柄ですが人族に見えますね。ということはクラウン共和国? ですが、あの国は我が帝国とは良好な関係のはずですが」
あんぐりと口を開けて、ショックを受けていた俺に、その勇者と名乗った美少女は捲し立てて言う。
「勇者、ですか?」
茫然自失としていた俺の代わりに、クロが問う。
「そうです! 私は【勇者】の称号を持つ帝国騎士、エルメントラウト・フォン・シュパールヴァッサーです! さあ、私は名乗りましたよ! 貴方たちも名乗りなさい!」
「マイマスター?」
「う、うむ。少々気になることがあってな。すまん」
「いえ」
よし!
気を取り直して、と。
「我は孤高にして万象を司る大魔導師アルス・マグナである。騎士であればシュパールヴァッサー卿か? 卿の言はどのような根拠があってのものなのかまずは説明頂きたい」
「そうです、小娘! 勇者といえど、偉大なるマスターへの無礼は許しませんよ!」
「大魔導師ですか? マスターとは、どこかの宮廷魔導師、でしょうか?」
「我は孤高。どの国にも属する気はない」
「当然です。至玉なるカルマ様の主たる、至高なるマイマスターの上に立つ者など存在してはならないのです!」
なんか魔導師ロールプレイとかしといてなんだけどさ?
クロは言い過ぎじゃね?
まあ、九分九厘はピーちゃん補正だろうけど。
あれっ?
そういえばピーちゃんたちは?
・・・寝てた。
寝る子はよく育って言うしね!
いいことだよな!
あっ、ピーちゃんたちって育ったらどうなるんだ?
・・・・・・
グッモーニン! マイ・ファミリア!
美少女勇者登場!
第一弾狐耳っ娘のウィンテンの魔石商の看板娘ロスヴィータとは同郷になります。




