第57話 迷探偵マグナ?
せっかくの機会だ。
クラウディアさんの安全確認のついでに魔法の実証実験もしよう。
「【遠視】、クラウディア」
俺の視界に重なるように、ディスプレイみたいな枠が現れて彼女の見ている情景が映る。
ほっ
仮面を付けた黒ずくめたちが周りを囲んではいるが、R18展開にはなってないようだ。
なんせエルフの姫騎士ですからな。
お約束の凌辱展開になってないかが非常に心配でした。
いやマジで。
ん?
仮面の黒ずくめ?
俺を襲ったクジマたちがしてた格好と同じじゃないか!
とすると、首謀者は一緒か?
貴族がなんで?
俺とクラウディアさんの共通点ってなんだ?
あっ、クジマたちは俺というより、クラウディアさんからの手紙狙ってたのか!
全部クラウディアさん絡みか!
いや、今は黒幕の事よりも彼女の救出が先だな。
「ふむ。クラウディア殿は無事のようですな。少なくとも、大きな怪我などもなさそうだ」
「そ、そんな事まで分かるのか!?」
ふっふっふっ
驚くのはまだまこれからですよ?
「【遠話】、クラウディア」
『あー、あー、もしもし、クラウディア殿、聞こえるか? 大魔導師のマグナだ。聞こえたら、周囲の者たちに気付かれぬように頷いてくれ』
びくっとして視界が左右に振れた後、程なくして縦に動く。
まあ、驚くよね。
よし。
感度は良好、順調順調!
因みに、ルドルフさんはさっきからでかい図体に似合わずぽかんとしてます。
『クラウディア、今、そちらに守備隊の騎士たちが向かっている。我もこれから向かうので、そやつらを刺激したりしないでおいてくれ。不安であろうが、今しばらく辛抱して欲しい』
クラウディアさんが小さく頷く。
「さて、では誘拐犯共を成敗といきますかな。ルドルフ殿?」
「う、うむ。そうしよう」
何か言いたそうだけど、それは後回しだ。
まずはクラウディアさんを助けなきゃな!
「カルマ! ガリア! アルミナ! 囚われのお姫様を救出に行くぞ!」
『キュイ!』
『ガゥ!』
『ピィ!』
大人しくしてたけど、ずっといたよ?
一緒に寝て、さっきまでもふもふ楽園だったからね!
†
あれ?
ここだよな?
貧民街というには何かけばけばしてね?
なんとなく雰囲気がピンクっぽくない?
実際にピンク色って訳じゃないけどさ。
なんか色っぽいお姉さんが立っていらっしゃいますよ?
かなり薄着で、なんかこー、ね?
見えちゃいけないものがちらちらと、ね?
えっと、もしかして色街?
歓楽街?
あの、成人してからじゃないと踏み込んではいけない魅惑の!?
数多の男たちが、時に癒され、時に騙され、夢に破れながらも、また夢を追いかけてやまないという、あの!?
くぅ!
こんな状況じゃなかったら!
こんな、状況じゃ、なかったら!!
「ルドルフ殿、あそこの建物の様なのだが、ここは貧民街では・・・ないな?」
ん?
ルドルフさんがぷるぷるしてる。
「り、慮外者めらが! 純真可憐なクラウをこの様な場所に監禁するとは! 最早罪状は明白にして悪辣! 極悪にして非道! 一人残らずに滅殺してくれるわぁ!!」
怖えぇ!
目が血走っていらっしゃる!
「ルドルフ殿、興奮しないで落ち着いてくれ。先ほども言ったが、クラウディア殿はその、貞操の心配も含めて無事だ。その様に大声を出されては、気付かれてしまい助けられるものも助けられんかも知れんぞ」
このおっさん、ただでさえ声がでかいからな。
「う、うむ。すまぬ」
しゅんとすんなおっさん!
可愛くないからな?
ああ、今俺たちは、クラウディアさんが監禁されている建物の少し離れた場所にある娼館にいる。
多分、あっちの建物も同じだ。
あっ、娼館にいるといってもムフフなお部屋じゃないからね?
入り口の辺りだからね?
おっさんとアレな部屋なんて、想像しただけで身震いするわ!
ん、んん?
離れたところにあったマップの赤い点--クラウディアさんへの敵意を持つやつが近付いて来ている?
いや、なんでだ?
緑色の点--守備隊の騎士に設定した色に混じってる?
そうだ。
せっかくだし、索敵がどこまで出来るのか試してみるか。
「【索敵】、クラウディア誘拐事件の首謀者」
失敗したら情けないので、小声だ。
ヘタレ万歳。
あっ、出来ちゃった。
万能ですね、魔法。
開発しといて何だけど、どんな仕組みなんだ?
これがあれば、迷宮事件なんて無くなるな。
探偵業でもやったら儲かりそうだね。
異世界魔法探偵マグナ!
どんな事件も魔法で解決!
なんてな。
有名探偵のお孫さんや、宇宙飛行士じゃない方の探偵さん、アーノルドじゃない小学生の探偵さんの存在意義、異世界じゃまったくないね。
ミステリーも結構好きなんだけど。
という訳で、守備隊の騎士たちとこちらに向かっている赤点改め黒点のやつが首謀者、つまりは黒幕です。
内部犯かぁ。
俺を襲ったのもそいつなんだろうなぁ。
あっ。
重要なことに気付いてしまった!
これ、証拠能力とかはないな。
しらばっくれられたりしたらどうしよう?
「魔法が教えてくれました!」とか、「魔法は嘘つかない!」とかで乗りきれないかな?
ムリポ?
†
えっと。
今、俺の目の前に首謀者がいます。
なんだろうなぁ、この納得感。
うっわぁ。
どうしよう、これ。
マップの中心近くにある、緑色の騎士たちとひとつだけの黒い点。
「ジラルディエール卿、クラウは、彼女は無事なのですか!」
黒い点の人物が、さも心配しているように、大仰に言った。
はい。
みなさんもう分かりましたね?
イケメンエルフが黒幕です。
クジマたち冒険者を雇って俺を襲わせたり、クラウディアさんを誘拐して、今まさに監禁している張本人です。
あれ?
俺、クジマたちに襲われた時に真っ先にこいつのこと容疑者扱いしてなかったか?
ただの誹謗中傷か嫉妬かって、当てずっぽうの推理が当たってた?
名探偵マグナ!
来週からこの時間に始まるよ!
みんな、絶対に見てくれよな!
もちろん、放送の予定も執筆の予定もありません(笑)




