第56話 予想外の急展開です。
「マグナーー!!」
怒涛の勢いで部屋に入って来たのは、グロニゲンの領主ルドルフさんだった。
あんたご領主様だろ!?
何ひとりで他人の家に突っ込んで来てんの!?
「る、ルドルフ殿?」
「マグナ! 大変だ! 大変なのだ! どうにかしろ!!」
ぶんぶんぶん
あ、頭をシェイクすんなぁーー!
「な、何が大変なのか、せめて説明して頂けないか?」
ああ、寝起きでくらくらする。
「そんな悠長なことを言っている場合ではないっ! く、クラウが!!」
「クラウディア殿がどうかしたのか?」
「クラウが拐われたーーー!!」
な、なんだってぇ!
マジで一大事だーーー!!
†
とりあえず大変なのは理解したけど、話が進まないので追いかけて来たクロに指示してルドルフさんは強制的に黙らせた。
ご領主様だけど、緊急事態みたいなので許してもらおう。
もしも罪に問われそうだったら、全力で反抗しよう。
うん。
「落ち着いて頂けましたか? ルドルフ殿」
簀巻きにされて、ベッドに転がされているルドルフさんに問いかける。
簀巻きの領主なんて、レアだろうな。
誰の得にもならないけど。
「う、うむ。すまなかった」
「クロ、もう大丈夫そうだ。拘束を解いていいぞ」
「イエス、マイマスター」
慣れた手つきで縄をほどくクロ。
どこで覚えたんだろうね?
長く生きてると、簀巻きスキルとか覚えるのか?
【緊縛】スキルとか?
あっ、なんかエロい響きだ。
SMの趣味はないですよ?
経験ないけど、多分。
「して、クラウディア殿が拐われたとは?」
なんだかんだと俺も気になる。
かなり心配はしているんだけど、このおっさんが必要以上に取り乱していたのでパニクらなくて済んだ。
「ふむ。まずは確認なのだが、夕刻に守備隊の詰め所を出た時には、マグナはクラウと一緒だったのだな?」
「うむ。詰め所を出た後はしばらくして別れたが」
「そうか。では、やはり真実か・・・」
「む?」
「未だにクラウが領主館に戻って来ていないのだ」
そういえば、クラウディアさんは領主館で寝泊まりしてるって言ってたっけ。
気さくな娘だから忘れそうになるけど、辺境伯のご令嬢だもんな。
でも、もう夜更けだ。
未だに戻ってないとなると、確かに心配して錯乱するのも仕方がないか。
親友の娘さんで、目に入れても痛くなさそうなくらい可愛がってるみたいだったしな。
「まだ不確かな目撃情報だったのだが、多分マグナと別れた後、領主館への途中で子どもに声を掛けられたしくてな。貧民街の方に向かったようなのだ」
「よく目撃者が見つかりましたな」
「クラウはあれで目立つからな。長く街に住む者なら大体は知っておろう。その目撃者というのも、クラウには世話になった事があると申しておった」
なんか分かる。
治安を守る騎士で気さくな娘さんだもんな。
美少女だし。
「そのクラウが、治安の悪い貧民街に向かったのを見て、念のためにその者が守備隊の騎士に知らせてくれたのだ」
「今も守備隊総出で貧民街を中心に捜索させておるのだが、一向にその後の足取りを掴めてはおらぬのだ。ああ、可愛いクラウよ。もしも何かあれば、バルツにも何と伝えればよいか」
親馬鹿なんですね。
まあ、あんな娘や姪がいたら、俺もそうなるかも知れないから気持ちは分かるけど。
バルツって、確かネデル辺境伯のことだったよな。
「うむ、理解した。我らも捜索に加わろう。クロ!」
「はい」
「冒険者と探索者たちを叩き起こし、早急に捜索依頼を出せ」
「イエス、マイマスター」
そう言うと、クロは踵を返して颯爽と部屋を出る。
くそっ、なんかカッコいい。
なぜ負けた気分になるんだ?
「頼りになりそうな配下だな。協力に感謝する」
「うむ。もちろん我らも捜索に加わろう。して、ルドルフ殿、クラウディア殿が貧民街に向かってからどれくらいの時間が経つのだ?」
「目撃者の話からすると、もう半日は経っておる」
「ならば、悠長な事はしてられぬか。まだ試してはいないが、あれを使ってみるか」
「な、何か術があるのか!?」
「ルドルフ殿も心配であろうからな。今から見た事については他言無用に願いたいのだが、よろしいか?」
「もちろんだ。それでクラウが見つかるのであれば、否とは言わん」
「承知した。では--」
まさか、昨日の今日で使う事になるとはなぁ。
開発しといて良かった!
「マップ・オープン!」
俺は昨夜開発した新魔法を発動させる。
円形の魔法陣が浮かび、中心に青い点が表示される。
「なんと!」
おっ、驚いてる驚いてる。
「【追跡】、クラウディア」
魔法陣に黄色い点が表示される。
安直だけど、金髪だから黄色にした。
「この屋敷から、ほぼ南であるな。少し西側のようだが、確かに貧民街の近辺のようだ」
「な、なんと!」
てんどん?
「【索敵】、クラウディアに害意、敵意を持つ者」
続いて魔法陣に赤い点が複数出現した。
ひーふーみー、結構いるな。
なんか離れたところにもひとつあるのが気になるけど、これはすぐに危険ではないだろうから後回しにしとこう。
「【念話】、『イヴ!』」
「はい、ご当主さま。ここに」
すぐにイヴが現れました。
廊下にいたようです。
念話の必要ありませんでした。
ちょっぴり虚しい。
「守備隊に連絡して、騎士たちを貧民街へ向かわせろ。よろしいか、ルドルフ殿」
「構わん」
ルドルフさんが頷く。
「敵の数は十人弱だ。この情報も合わせて伝えてくれ。ああ、クロたちにもだ。その後、イヴとクジマは連絡役だ」
「はい! では失礼致します」
イヴが部屋を後にする。
ふうぅ
よし!
俺のターンは、まだまだこれからだ!
やっと主人公がまともに活躍してます!
無双じゃないけど。
やってることは地味だけど。




