第93話 またそれですか!
「あのねぇ、少し前のグロニゲンでの魔物の大氾濫よ! 私たちにも討伐要請がきてたでしょう!」
「おお、あれであるか! しかし、あの要請は直ぐに取り消されたのであるぞ?」
「だから! その取り消された、り、ゆ、う!」
「ああ、あの嘘臭い報告書でしょう? あんなんでルドルフ様の署名入りなんでびっくりするわよね」
「あっ!」
「「あ?」」
「あの報告書にあった名ですか!」
「「あっ!」」
「そうよ!」
「「「「「〝不発の大魔導師〟のマグナ!!」」」」」
ぐふぅ
またそれですか!
俺の活躍の場面と格好いい二つ名の野望が・・・
はい、消えました!
あぼーん
†
「改めて、剣士のステファン、だ」
「騎士のフュルヒテゴットなのである」
「狩人のアーシュラよ。よろしくね」
「攻撃系の魔法士のパーヴェルです」
「同じく、治癒系の魔法士のフルヴィアです」
ステファンさんとそのパーティーメンバーが自己紹介をしてくれました。
さっき野次馬連中に呼ばれてた大層な二つ名は、自分で言わないものなのでしょうか?
「大魔導師のアルス・マグナだ。よろしく頼む」
不発とか言われたくないからな!
「マスターの従魔をしております。地竜王のクロティルド・ファフニールです」
「ステフの話は本当だったのね」
「うむ。半信半疑だったのである」
「アタシはほぼ疑ってた」
「僕はそういうこともあるかなぁ、くらい?」
ステファンさん、英雄の割にはパーティー内では案外扱い良くないんですか?
ちょっと親近感が湧いて来ました。
「同じく従魔のリンじゃ! 聖獣麒麟なのじゃ!」
おい、いつ戻ってきた?
「「「「「聖獣!?」」」」」
『キュイ!』
『ガゥ!』
『ピュイ!』
『ミュー!』
キミたちは良い子ですね。
なでなで×4
「「「「「あれも従魔!?」」」」」
あー、ピーちゃんたちはともかく、たまっちについては仕方ないですね。
というか、気が付いてなかったんですか?
「あっ、同行している第三百二十六代目の勇者のエルメントラウト・フォン・シュパールヴァッサーです。継承帝国の自由騎士です」
ぺこり
「「「「「勇者付き!?」」」」」
付きて。
「うぅ、あたしは風精族、ラトランド氏族の、グウィネスですぅ」
エルメさんの陰に隠れながら、おどおどと精霊さんも自己紹介します。
「「「「「精霊種まで!?」」」」」
驚き過ぎじゃないですか?
変わった集まりなのは認めますけどね?
「まあ、とにかく、いきなり喧嘩を売るなんてダメでしょう? ステフ、ほら誤って」
「むぅ、すまなかった」
案外素直な英雄さんでした。
「まあ、誤解が解けたのならよい。で、クロ。絡まれたのはともかく、ステファン殿とは知り合いなのだな?」
「あの、それが、本当に思い出せないのですが・・・」
すまなそうにするクロ。
ショックで隅っこで膝を抱えるステファンさん。
「うわぁ、ステフの壮大な片想いなのは分かってたけど、覚えてすらもらえてないとは」
「うむ。不憫なのである」
「まあ、美化されまくってたから、現実はこんなもんでしょう。美人なのは本当だったけど」
「まあ、想像通りというか、実在してただけ良かったんじゃない?」
妄想の疑惑まであったんですか?
「そうね。来月にはパーティーでウィンテンの迷宮攻略に旅立つところだったもの」
「そうなのか?」
またどうしてこのタイミングで?
「グロニゲンからの報告書に、ウィンテンの迷宮が踏破されたって書いてあったからね。それでステフが「嘘だぁ!」って喚いて、それでね」
納得です。
俺のせいでしたか。
「ということは、マグナさんが〝三日踏破者〟なんですよね?」
「う、うむ。まあ、な」
その二つ名も嫌なんだけどなぁ。
不発よりはマシか・・・
「そうか。〝最強生物の飼い主〟がマグナなのか。クロティルド殿までもが従魔となるとは・・・。迷宮都市のことなど放っておいてでも、ウィンテンに行くべきであったか・・・」
ぶつぶつと呟くステファンさん。
十年以上だもんなぁ、気持ちは分からなくもない。
でも、いい歳した大人が土にのの字を書くのはそろそろ止めにしませんかね?
野次馬の女性陣の目が百年の恋も醒めそうな勢いですよ?
あと、〝最強生物の飼い主〟ってのが何かは後できちんと問い詰めます。
「ステフがあの状態なので、私が説明しますね」
眼鏡美人さんに俺は頷く。
「十数年前に彼がウィンテンの迷宮に挑んだのはご存知のようですが、その理由は?」
「知らぬな。グロニゲン領主のルドルフ殿からは、パーティー内で何かあり、単独で挑んだとだけ聞いた」
「ああ、それはですね。当時のステフはルドルフ様たちとパーティーを組んでいたのですが、今のネデル辺境伯でいらっしゃるバルツァー様とその夫人となっているツェツィリア様が恋仲になってしまい、密かに彼女に憧れてた彼が傷心でグレたんです」
予想以上にしょうもない理由だった!
まあ、ネトゲですらカップル出来るとパーティー解散したりするから、あり得るけど。
あぶれた奴が嫉妬で「きっとネカマだ」とかいい始めるのは、こういう時のお決まりです。
ん?
ということは?
「クラウディア殿はその二人の娘か?」
「あっ、そうです。ご面識が?」
「うむ」
「まあ、それでパーティーを抜けて八つ当たり気味にウィンテンの迷宮に挑んだ訳ですが・・・」
「第二十階層で諦めたと聞いたな」
「はい。その第二十階層にいらっしゃったのがクロティルドさんらしいのです」
は?
第二十階層になんで迷宮主のクロがいたの?
あそこは第三十階層が最深だよな。
「クロ?」
「第二十階層で戦った人種? ・・・ああ! 思い出しました! あの弱いくせに偉そうだった若造ですか!」
ぐさぁ
ああっ!
ステファンさんの心に刺さった剣が見えるよ!
「あの生意気な小童がそこの御仁ですか。人種は歳を取るのが早いので分かりませんでした」
あっ、なんかステファンさんがぴくぴくしてますね?
あれ、死んじゃわないですか?
英雄がストレスで死んだとか、笑い話にもなんないですよ?
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