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太陽系興亡史  作者: 双頭龍
第3章目的のためには教育だ
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第2話

 ご飯中のかた大変申し訳ありません数行お飛ばし下さい。またこの黒い虫が苦手な方も同じくお飛ばし下さい。


 今年初めてのGが私の部屋の出現しまして、現在もまだ戦闘中です。なかなかしぶとい。テラフォーマー○ではありませんよ、リアルです。家の猫達が追いかけ回しているのでその内撃退されるでしょう。いえ、べ、別にさわるのが怖いとか、この対象が大きいから怖い、とか言ってるのではありません。ほ、本当ですってば。まあ対象は床においてある書類の束に逃げ込んだらしく、猫達は少々諦めぎみではありますが。しぶとかったらGジェットという化学兵器を使用します。

 こ、これが最後通告だからな。この二日にわたる決戦の行方やいかに、次回報告を待て! しません。ごめんなさい。


 さてさて冗談はさておき、軍学あるいは軍事学の模擬授業のお話、前編であります。模擬授業を次で終わらしたら、生徒を主軸にして少し書いていきたいと思います。

 いやー少し朝晩寒いのですが、本当に6月ですよね? 皆様も寒暖の差にお気をつけ下さい。すでに私は喉がいたいです。まあキーボード叩くのには関係ありませんが

 最終調整のために集まったのはこの学校で教師となる俺、エルザ、ブラム、コール、そして授業を体験してもらうためにシャムシ、ニムロデ、イシュナの3人である。

 「さて、これからこの学校の授業を模擬的に受講してもらって、我々教師達の実践的な練習としたい」

 俺がこの教室にいる皆を見渡し模擬授業の開始を宣言する。


 「生徒役が僕達3人なのは少なすぎないかい?」

 シャムシが当然とも言える質問を投げ掛ける。

 

 「大丈夫、君たち以外に適任がいなかっただけだから。ただし通常の授業と違って少々変則的に行く。と言うのも、既に2時間毎の授業の予行演習は皆大丈夫だからだ。だからこの授業は内容面の最終調整だな。さてまず初めにブラムの軍学からはじめよう。お願いします」

 言い終えてからブラムに教壇を譲る。


 「はい、改めまして、ブラムです。軍学そして工学を教えます、どうぞ宜しくお願いします。まずは軍学から。さてシャムシ君、ニムロデ君、君たちは次の王ともなる可能性が十分にあると思いますが、国とは何でしょうか?」

 いきなり難しい質問を投げ掛けられたシャムシ達、特にニムロデは俺の方をチラチラと見てくる。見たからといって手助けはしないぞ、ニムロデ。

 

 「国家とは人の集まった集団でしょうか。その集まった集団にその中から長がでて、集団同士が争い、吸収したり、されたり、潰したり、潰されたりそうして大きくなった物なのではないでしょうか」

 シャムシはさっさと答える。歴史的な観点から答えにたどり着こうとしている、これもまた答えではあるだろう。

 

 「ふむ、まあまあ良い答えですね。さてニムロデ君はどう答えますか?」

 ブラムもこの答えには納得らしい、しかし少々プレッシャーをニムロデにかけていく事にしたようだ。

 

 「えーっと、国家とは拠り所です。もしこの国家という物がなければ皆が安心して暮らせないかもしれません。だから国家というものは重要なものなのだと教わりました」

 ニムロデは王から配属された教師の言葉をそのまま答えたようだ。ある意味、統治の面からみたこの時代の国家論なのかもしれない。これもある意味なんとか答えになるだろう。

 

 「ふむ、いい回答ですな」

 ブラムに誉められてニムロデはうれしそうだ。

 「では、コウジ殿。あなたの時代における国家とは何でしょうか?」

 俺の方にも問題が飛んで来たよ。

 「国家とは、領土、そこに生活を営む国民、そしてそれを統治する政治組織のことになるな」

 俺の時代では模範解答だろう。もっとも国家とは狭義的には統治機構のみを、少し広義になるとその統治客体である国民も含むこともあるのだと記憶しているが、少々、嫌、実は曖昧にしか覚えていない。

 

 「我々の定義においてはその統治機構が国民の基本的人権を保証し、これを適切に運用している機構のみが国家を名乗ることができます」

 ふうん、つまり基本的人権も無視しているような国家は国家にあらずと。 ん? 基本的人権の定義によっては幅が広くなるのではないか? 

 

 「質問です。基本的人権の中身はなんですか?」

 シャムシが即座に反応した。偉い。まあもっとも反応しなかったら俺が聞いただろうしね。

 

 「そうですね。基本的人権を説明しなければ国家の定義自体があやふやなものになりますね」 

 ブラムはこの事を修正点とするためにメモに書き留めてから説明し始めた。

 「基本的人権とは、最初に自由権、具体的にいうと考えることの自由、学問の自由、表現の自由等が有名でしょうか。次に政治権、これは政治に参加する権利、政治に対してお願いをする事の権利等、それ以外にもありますがここら辺が有名です。最後に経済権、生きる権利、働く権利、働くなかで不平等に扱われることがないようにする権利等が重要でしょう。これら3権をもって基本的人権としています。当然、連邦において、これ等を満たしていない場合、加盟国となれませんし、ひどい場合は準加盟国にすら、なれません。そんなことはあまりあり得ないのですが全く無いわけではありません」

 やっぱり幅広いものになりそうだ。まあ種族も多くなると幅はとらないと不都合が生じる物なのだろう。


 「さて国家という物がわかったところで軍学の概念をご説明しましょう。戦争に関する事を研究するための学問です。戦争とはなにか? 当然、戦争にも目的がありましょう。そうです、国家があるいは民族、政治団体間で武力によってある目的の為に争われる、いわゆる闘争です。典型例は国家間が自己の目的を達成するために兵力を以てする闘争でしょうか。だからこそ国家という物までこの学問の領域に入るのです。ちなみに連邦加盟国内において加盟国の国家は紛争を解決する最終的手段として戦争に訴える事は完全に違法であり、今や我々とその他の政治団体である連合、協商、帝国との間にも、この概念は適応されています。さてコウジ殿の時代ではどうでしょうか?」

 俺の時代に振らないで、バイトで家庭教師していた頃のうろ覚えな高校社会の知識しかないから。 

 「たしか、俺の時代で最大の国際機関である国際連合の国連憲章上、戦争は禁止されているし、戦争でない武力の行使、それによる威嚇も、自衛権の行使あるいは国連の強制措置を除いて禁止されている。だからといって平和だったわけでは無いし、これからも平和では無いだろうが」

 国連は言うまでもなく国際連盟に代わって1945年10月24日の国際連合憲章に基づいて設立された国際機構である。

 当然第二次世界大戦の影響が色濃く残るそのご時世、当然発足当時負けた枢軸国は参加できず、当時の連合国の主要メンバーである51ヶ国が原加盟国である。

 この日本語の国際連合という名前も英語ではUnited Nations となり連合国と同じになる、まあ、だからどうした? と思う方も多いだろう。ただ実際、日本以外で国連に対しての考え方は、日本とは違うのだということを実感して驚いた物である、まあ俺が少々おかしいだけかもしれないが。日本人の感覚としては国連は、何か万能の平和のための国際機関のような気がしていたが、そんなことはない、国家が自分の主義主張をぶつけ合う国際外交上の場所のひとつなのだ、と日本から出て初めて気がついたものだ。

 ここら辺もシャムシ達に教える機会があるのだろうか?


 「なるほど、ありがとうございます。さてここまではよろしいですか? 続けますよ。軍学の目的はお分かりいただけたと思いますので、中身の方にいきたいと思います。戦争哲学、軍事心理学、軍事史学、軍事地理学等の人の文化を対象にする学問。さらに純粋なる科学である軍事工学、軍事医学等。最後に社会を対象にする安全保障学、戦略学、戦術学等に分けることが出来ると思います。しかしどの学問においても分野、領域の壁を越えることが多く、例えば軍事医学や軍事心理学は医学とも密接に関係するでしょう」

 

 「つまり軍学だけ学びたいと言っていた軍人や、軍学だけ軍人に学ばせろ、といっていた官僚がいたけど、そんな事は不可能だと?」

 シャムシが質問する。

 

 「高度になればなるほど不可能ですな。言うまでもなくこの軍学は士官となるものが対象ですので。もっとも兵といえど高度な兵器や戦術を使用しようとすると訓練や習得する技術は分野の壁を越えることは確実ですが」

 当たり前と言えば当たり前だが、それをこの時代の人間が理解できるとは限らないいい例である。


 「じゃあ、逆にこの学校にいる工学系の生徒に軍学を教えた方が、先生としても楽なのでは?」

 ニムロデが我々にとって当たり前の事を口に出す。まあそれが簡単に出来るなら既にしているのだが。


 「それはそうなんだけど、この学校の立ち位置も関係してくるからね」

 シャムシがフォローする。

 「あ、ごめんなさい、言いすぎました」

 ニムロデが事情を理解して、あやまる。空気が読めたようだ。

 「いやいや、気にしないで。それより分野の壁が問題なら工学だけでも全員に教えたらどうだろうか?」

 「はい、教えるつもりです。と言うより教えなくては授業が進みません。特に貴方達の求める程度にすることを望むのであるのならば。いや、お気になさらず。すでにお嬢様から責任はとるからと言質をとっておりますので」

 「ありがとうございます。エルザ様」

 ニムロデがエルザに、すかさずお礼を言う。エルザがブラムに何か言おうとしていたのを察知して先手を打ったようだ。

 「いえいえ、ニムロデ君達のためよ」

 

 「では、話を戻しまして。シャムシ君、ニムロデ君に一番これから必要なことを今回は講義させていただきます。それは戦略です。戦略とは何か? 我々はこう定義しております。戦略とは何時如何なる時も勝利を追求し、敗北する可能性を減少さしめ、目的に最大限に寄与するための手段である、と。

 当然この目的は政治的なもの場合も軍事的な物の場合もありますがこれが国家的なものになりますと国家戦略、軍事的な物ならば軍事戦略になるわけです。もっともこの目的の為の手段を具体化すると、政治的、外交的、経済的、心理的、技術的な物や能力、さらにはこれを育成して、活用する学や術でしょうか。

 例えば我々の目下の状況に当てはめると、都市国家間の戦争を現在進行しておらず、平和です。しかしこういう時に何をすべきか? 目的を立て、其を為すために何をするべきか、そして戦時に成ったら何をすべきかを考える、これこそが国家戦略となるわけです。

 一方実際に戦争が勃発したら何処を攻め、あるいは守り、という国家戦略に沿って軍事力を行使する、これが軍事戦略となります」


 「じゃあ、今僕たちがこの学校を作ったりしているは国家戦略になるのかな?」

 シャムシが首をかしげながら質問する。


 「そうですね、そうなりますな。では問題です。この戦略を考えるために最低限必要なことは何でしょうか?」


 「正確な情報、軍事以外の国の力、軍事力、技術力、外交力等、色々とありそうだけど、やっぱり情報かな。これがないと怖くて行動できないよ」

 「僕もシャムシと同じです情報が一番だと思います。相手が強いというのが分かれば戦わないという選択肢も出てくると思います」

 ふむふむ、2人とも考えているな。シャムシにお金だ、と言われたらどうしようかと思ってしまったのは内緒だ。横でイシュナもうなずいている。


 「そうです。情報とお答えいただき、私は嬉しい限りでございます。お嬢様は最初この質問を出した際に、お金、と言っておられましたが、さすがにお二方、正解を当てられました」

 エルザに睨まれるブラム、しかし当人は気にしていないようだ。

「軍事においても情報の重要性は言うまでもなく特別足る意義がございます。この情報は常識的あるいは合法的な手段によって入手されるもの、または非合法、非道徳的、秘匿が絶対に必要な手段によって入手されるものに分けることができます。

 例えば、国家戦略上相手国の動員可能兵員数を把握することは重要でありますが、さてこの場合どのようにこの情報を入手すると良いでしょうか? そして縦しんば収集できたとして誰が、どのように分析、評価、判定するのでしょうか?」

 えらくまた実戦的な質問だな。

 「村の数から人口を概算して、そこから最大動員数を割り出し、その数と過去の動員数から考え、実際の兵糧軍備の準備量から最終的な兵員数を割り出す。たぶん将軍、あるいは王が直接、家臣とこの作業をやるかな」

 シャムシが答える。この時代の常識はニムロデが答えた。

 「普通は商家が教えてくれますけどね、情報収集に長けていますからね。彼等は穀物の価格や弓矢、馬具の値段から算出しますから、もっとも間違いも多いですが」


 「なるほど。我々は情報収集、分析、評価、判定に専門家を養成してこれら任務に着かせています。何故か、と言うと専門性が高くなるから、ですね。例えば戦域となりうる宙域の安全度を計るとき、宇宙の専門家でないと見落とすことがあるかもしれません。当然、他の専門家もこの作業を手伝いますし、逆に彼も別の段階においては手伝いもします」

 

  さらに模擬授業は続く。


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