単眼の狼
「商会長、ルミルくんも」
ジーク=キアンは、人ごみの中に紛れている雇い主と、その友人の少女を見つけ出した。
「ジークさん」
「そろそろ昼食の用意ができる。フェートン先生が準備しているが……」
ジークの言動は一回り近く年下の少女たちに対するには十分以上に丁寧だ。レレットは言うまでもなく雇い主であるからだが、ルミルの方にはそれ以上に借りと恩義を感じている彼にとってはどの道当然の態度だった。
「うん、でも少し待ってて」
レレットが答えるが、その視線はジークの方を向いていない。釣られてそちら――即席の剣闘舞台を改めて確認したジークは一目で状況を理解した。
「ああ、そういうことですか」
舞台上には四人の人物。二人はこの場を用意した巡業剣闘商会の剣闘士だろう。そして残りの二人は――。
「お兄ちゃんと、カタナさんが……」
「まあ、大体のことは分かるな」
血が騒いだか、誘い出されたか。どちらにしても不思議ではないし同じことだ。ジークにはいまいち理解できない神経だが、あの二人はそういう奴だということは納得している。
「しかし、これは」
そしてそこで、ジークは変わらず平静なままの表情で、眼前の戦いを一言で評した。
「話にならんな」
●
「ちぃい!」
「くう!」
横薙ぎに振るったカタナの剣が空を斬る。躱された瞬間に身体ごと捻って突きに連絡させるが、それには相手の剣が受け止めた。
「いいね、やっぱり最高だ! 木剣なのが惜しいくらいに鋭い剣気だ!」
セイ=シャインナッハは、戦意に満ちた顔に笑みを覗かせて気勢を上げる。
そしてお返しと言わんばかりに叩き込まれるのは下段から伸びあがってくる右の蹴り足。カタナは半歩退いてすり抜けるが、セイの身体は止まらない。
「そぉ、れっ!」
独楽のように回転する身体から突き出される剣は、正確にカタナの喉笛を狙っていた。
身体にかかる横回転の力をそのまま転嫁した突きの威力は、素の腕力を軽く凌駕している。
その威力と正確性は、言うまでもなく驚異的だ。全身をアクロバットのごとく躍動させたまま正確に剣戟を交わすセイの技量と身体能力は、疑うまでもなく二つ名級だろう。
「疾っ!」
だが、対するカタナも負けてはいない。空気を貫いて迫る剣を渾身の斬り上げでかち上げる。
刺突の勢いそのままに弾かれた剣ごとセイの腕も浮き上がり、胴ががら空きに隙を晒した。
「!」
「つあっ!」
狙い通りの一手に、カタナは大きく踏み込んで勝負を決する斬撃を叩き込もうと――。
「あらよっと!」
「な――」
しかし、カタナの剣はまたしても躱された。
腕を跳ね上げられた勢いそのまま、セイの身体ごと宙を舞ったのだ。
観衆からもどよめきが起こる程に、それは見事な後方宙返りだったが、カタナはそれを堪能することはできなかった。
「くあっ」
突如横合いから振るわれた剣が、カタナの肩を襲っていたからだ。
「――視野が狭いな」
否。最初から、『彼』はカタナの敵として立っていたのだ。それを一瞬でも忘れていたのはカタナの失敗。あるいは、セイの功績か。
「ニス・キス――」
「『独眼狼』。それが私の二つ名だ」
それだけ告げて、隻眼の剣士はカタナに平然と背を向けた。その一つだけの視線の先には、大上段から剣を振り下ろすコーザ=トートス。
「舐めた真似を!」
コーザの怒声。その感情の矛先は戦闘中に他所を向くなどという行為を行ったニス・キスか、それともそんな真似を許した自分自身へのものか。
「――青いな。これは貴様への侮辱ではなく……」
対する『独眼狼』は、コーザの斬撃を躱さず正面から迎え撃った。
「ただの余裕というものだ」
ぎぢり、と同じ材質の木剣同士が悲鳴を上げてぶつかり合う。重力を乗せて振り下ろされたコーザの一撃を、ニス・キスの跳ね上がった剣が見事に受け止めていた。
「ぐ……!」
「ふっ――!」
一気に押し切ろうと渾身の力を込めるコーザに、ニス・キスは隻眼を細めて身体を跳ね上げる。
全身を躍動させた瞬発力で上から降りかかる圧力を一瞬跳ねのけたニス・キスはその間を逃さず身を翻してコーザの懐に肉薄する。
「喉笛――もらうぞ!」
『狼』の二つ名そのままに、ニス・キスの剣が牙となってコーザに喰らいつく。
「ほざけ!」
吐き捨てたコーザは無理やり上体を捻って襲撃から逃れ、不完全な体勢にも構うことなくほとんど意地で剣を振り抜く。
「本当に……視野が狭いな!」
だが、その斬撃の隙を穿ったのは、先までカタナと斬り結んでいたセイ=シャインナッハ。ニス・キスと同じく、好機と見るや自分の相手を放り出してコーザへ突進。その軸足を斬り払ったのだ。
「くそっ!」
「待てぇ!」
コーザの悪態とカタナの焦燥。
「今度は私が相手だ、カタナ=イサギナ」
「さあ、一気に行くぞぉ!」
それに対するセイとニス・キスは、阿吽の呼吸で剣を向ける相手を入れ替えると、息を乱したカタナたちへと怒涛の攻勢を開始した。
●
「……集団戦において、連携というものがどれだけ大事か。本当に良く分かる光景だ」
ジークは、ほとんど諦めの境地で溜息を一つ吐いた。
ジークの見るところ、カタナとコーザとセイとニス・キス、それぞれの実力に然程の差は存在しない。
流石に二つ名持ちだけあって『独眼狼』が頭一つ抜けているが、その他三人の身体能力や戦闘の勘はほぼ同格と言っていいだろう。
しかし現状、カタナとコーザには勝ち目の一片すらもありはしないとジークは判断していた。
「……どういうこと?」
凝然と、カタナの苦戦を見詰めているレレットがジークに眼を向けることなく問うてくる。それにジークは、相変わらず雇われの身として以上の丁重さで腰を折った。
「要するに、経験の差がありすぎるということです」
「カタナはそこらの剣闘士なんかよりずっと……」
「いいえ。これはただ修羅場を潜った数の問題ではありません。複数対複数の――集団戦においての戦闘というものは、一人で戦うこととはほとんど別物です」
一対一の決闘とも、一対多の孤独な戦いとも、『戦場』は違うのだ。
戦争に長く生きた元傭兵のジークにはそれが実感として骨身に染みついている。
多数の敵味方が入り乱れる戦いの場においては、敵を制することと同じくらい、味方を活かすことが至上命題なのだ。
一人の敵に二人で当たり、味方を追い詰める敵の背を襲う。優位をこちらに引き寄せ、苦境を敵に押し付ける立ち回りと、その状況を作り出すための仲間内での協力――つまりは連携。
「一の力を十に掛け合わせ、十の力を一に断ち切る――向こうはそれが抜群に上手い」
今の舞台上の戦いの趨勢もそこに終始している。巡業商会の二人は常に連携を切らず、互いを助け相手の隙を生み出しているが、カタナたちはそれにまったく対抗できていない。
「つまり、二対二じゃなくて、一対二対一? カタナさんとお兄ちゃんが、味方同士になれていないって、そういうことですか?」
「そういうことだ」
不安げに眉をひそめるルミルに、ジークは短く首肯する。
これはなにも、カタナとコーザが反目しているとか足を引っ張り合っているなどという次元の話ではない。
ジークもこの現状を見て初めて分かったことだが、おそらく彼らは、誰かに背中を預けて戦った経験がほとんどない。
多勢相手の立ち回りをしたことくらいは無論あるだろうが、それとても全方位を敵に囲まれたものと味方と助け合って切り抜けたものでは質が違う。
彼らが、元々居た環境で周囲から隔絶した実力の持ち主であったこともその一因だろう。
カタナには、そしてコーザも。対等の相手と肩を並べて戦った経験というものが決定的に欠けていた。
「じゃあ、カタナは……」
「幾らかは粘れるでしょうが、敗北は時間の問題でしょうね」
苦みを噛み締めるようなレレットの声に、ジークはあくまで冷静に自らの結論を口にした。
だがその予想は、実際の結末とは異なるものとなる。
しかも――より悪い意味で。
●
一方、舞台上のカタナとコーザ、実際に苦境にある彼らこそが、自分たちを追い詰めているものをより切実に理解していたと言えるだろう。
他人と連携して剣を振るった経験はなくとも、戦いそのものへの直観力は飛び抜けている二人だ。相手の連携の脅威と、己にそれを埋めるものが備わっていないことも理解していた。
「……このまま」
「やら、せるか……!」
だがだからこそ、それで諦める選択肢など彼らの中には存在しない。
カタナとコーザは、ほぼ同時に舞台の端へと走り出す――それも正反対へ。
「ふふん?」
「成程な」
セイは面白そうに目を輝かせ、ニス・キスは首をこきりと鳴らして敵の動きを見守った。
ほぼ四角の剣闘舞台。その隅、対角線上の位置にそれぞれ陣取ったカタナとコーザは、剣を構えて動かない。
「下手に近くに居ても分断されてこっちには連携される。ならいっそ、完全にばらけてしまえばいいってことかな?」
「まあ、付け焼刃で連携して対抗しようとするよりはマシな選択だ」
遠く――と言っても舞台上ではたかが知れているが――離れたカタナとコーザ。それぞれを相手するためにはセイたちも完全に二手に分かれてしまうことになる。
「どうする? 二人がかりで一方を即潰すのもアリだけど」
「やめておこう。下手に粘られた隙にもう片方に背中を襲われるのも面倒だ」
「じゃ、誘いに乗って一対一? おれはそれでもいいけどさ」
「ああ……いや、ちょっと待て」
ニス・キスが、頷きかけた頭を横に振って苦笑する。
「そうだな、一対一、か。『それなら負けない』と、そう思っているんだろうな」
この『独眼狼』の二つ名を前にそんな自信を持って挑むものなど、古巣の都市に居た頃以来か。
(いかんな。どうも自分で思っていた以上に、私は『餓えて』いたらしい)
これではセイの稚気を笑えないと、隻眼を閉じて瞑目する。
「セイ。お前は少し下がっていろ。木剣なのが不満だが、本気を見せる」
「え?」
ぱちくりと眼を丸くするセイをよそに、ニス・キスは数年ぶりに獰猛な笑みを剥き出した。
「この若造どもに――思い上がりの罰をくれてやる」
そして。
「獣奏剣舞――」
剣を牙とする、人工の獣が咆哮を上げた。
「『災狼』!」
●
「何だ――!」
コーザは、眼前に突進する『独眼狼』ニス・キスの姿に瞠目した。
極端な前傾姿勢と、それに見合わぬ速度の速さ。構えるコーザに向かって、その姿が大きく跳ねる。
「さあ――貪ってやろう」
ぎらりと見据える隻眼と裏腹に冷徹そのものの声音。コーザの背筋に戦慄を含んだ寒気が走る。
「ぐ、あぁ!」
危機感に突き動かされるように振るった剣を、ニス・キスの剣と打ち鳴らされる。
否――。
「おおぉ――!」
連打、連突、連撃連撃連撃――!
切っ先、刀身、柄頭まで使ったニス・キスの剣が、嵐のようにコーザに降りかかる。『独眼狼』の右腕が、空に溶けて見えるほどの怒涛の剣。ただ単純に速いだけではない。瞬間的な最高速を突き詰めた、瞬発的な高速剣。
「ぬ、ぐ!」
コーザの剣は瞬く間に押し切られ、体勢を立て直す間もなく身体に届く。
そして、コーザの全身から見る見るうちに血が飛沫を上げる。
(鋭い――! 木剣で、身体を穿たれる!)
これが、ニス・キスの瞬間最速がもたらした剣の威力。
鉄でもない切っ先に突かれただけで、コーザの皮は突き破られていた。これほどの斬気――もしも真剣での勝負であったなら、すでにコーザは穴だらけの死体と化していただろう。
正に狼の牙。野生の獣は、ただ鋭いだけの爪牙で、鋼でなくとも肉を裂くのだ。
「まだ、だ!」
だが、今コーザは生きている。どんな傷を負っても、生きているならコーザの戦意は翳りを見せない。
豪風一閃。身体を突き破る剣を敢えて喰らいながらも、両手に握る剣を叩き付ける。
嵐も裂けよとばかりの重撃は、ニス・キスの剣を弾いて本体へ迫る。
「人に仇為す災いの獣――それが餓狼」
しかし、ニス・キスはあろうことかコーザの剣を左手で受け流した。骨をも砕く一撃であったことは間違いないが、それも正面から受けてしまえばこそと言わんばかりに。
そして、驚愕するコーザに構わず、ニス・キスは不気味に言葉を紡ぐ。
「災は災害。害は害獣。狼とは、人には抗えない災いを招く象徴だ」
己が『それ』だと言うかのごとく、『独眼狼』は牙を剥く。
しかも彼の牙は右手の剣だ。頭は冷静な人のまま、腕だけが野生の暴威を宿したもう一つの顎へと変じている。
剣を外され体を崩したコーザに、さらなる牙が群らがっていく。蝗が大地を食い荒らしていく光景を縮小化したような、それは蹂躙。
「――っ!」
その寸前、無言のまま乱入したのはカタナ=イサギナ。
なぜか引き下がって静観しているセイを捨て置いて、この荒ぶる狼の背を襲う。
「来たか――だが無駄だ」
カタナの奇襲の一撃を、しかし完全に予期していたニス・キスは当然躱す。そして今度は、カタナに向かって狼の牙が打ち鳴らされる。
「おれの前で、獣を名乗るな!」
「ほう?」
だが、今度はカタナの剣がニス・キスの怒涛を喰い止めた。瞬発的に跳ね上がる『独眼狼』の腕力を、反射的な体捌きで抑え込み、鍔迫り合いに持ち込んだ。
「そうだ、違う。これは、獣とは……」
カタナは、自らに言い聞かせるようにそう呟く。
ニス・キスの「これ」は、あくまでも技術だ。獣の動きを武術に組み込む、拳法で言うところの形意拳。
有名なところでは、カマキリの特徴的な腕を模した蟷螂拳か。獣の狩りに用いる機能を人間の動きに落とし込んだ真似事に過ぎない。
――決して、狂った人間が宿した野生の暴走などでは……有り得ない。
そう己に言い聞かせるカタナだが、彼の分析には穴がある。
自身のトラウマに起因する『獣』と酷似した形態を見せつけられて動揺していたのだから無理からぬことだが、それはこの状況では致命的な見落としだった。
「――そうか、牙は効かないか」
ニス・キスは、カタナと激しく剣を打ちつけ合いながらも静かに笑う。
獣を模しているだけ――つまるところそれは、人の冷静な思考で戦況に合わせた効果的な運用ができるということだ。
「ならば……爪でいこう」
同時、カタナの視界がぐるりと回転した。
「ぐはっ!」
そして次の瞬間には、カタナは舞台上に背中から叩き付けられていた。
急激な変転に混乱する間もなく、上から突き落とされる剣先を転がって回避して立ち上がる。
「なにが――」
疑問が口を突く間もあらばこそ。
「さあ、そろそろ終わらせようか」
「ふざけっ――!」
急追する『独眼狼』の牙に、再び挑むカタナ。しかしそれは直前の攻防を再現することに他ならず。
「おおっ!」
だが、再びカタナが地を這う前に、立ち直って来たコーザがニス・キスに剣を突き込む。
「……しぶといな」
軽く飛び退いて距離を作るニス・キス。カタナとコーザは肩で息をしつつも横に並び『独眼狼』を睨み据える。
――一対一ならどうにかなるなどとんでもなかった。
そう見込みの甘さを痛感しているのは二人に共通した意識だろう。この『独眼狼』一人相手に、カタナもコーザもこの様なのだ。
「コーザ。今、おれは何をされた?」
目線をニス・キスに向けたまま、カタナが問う。先刻の奇妙な技は、カタナにとっては完全に未経験。何をされたのかも不明瞭ではどうしようもない。答えるコーザもまた、正面を見据えて唸る。
「奴は、剣でお前の身体をすくって……投げた。他にも手足で何か体捌きをしていたようだが」
「っ投げ――?」
カタナは、思わず目を見開いて息を呑む。武器を持っての戦いの最中に投げ――それも剣自体を用いてのものなど聞いたこともない。
と言うよりも無茶苦茶だ。相手の身体に剣が当たるなら斬ってしまった方がよっぽど早い。わざわざ重量で武器がへし折れる危険を負ってまでする意味は――。
「いや、そうか」
そもそも本来の意味では投げるのは「ついで」なのだ。
刃で身体を引き裂きつつ身体を宙に浮かし、地に叩き付けるとともに突き殺す――あれはそういう技なのだ。ただ斬るだけに留まらず、確実に命を狩り獲ることを目的としている、獣を模した殺人剣。
「爪で獲物を引き倒すのは、狼じゃなくて虎のやり方だろうが」
思わず毒づくが、目の前の脅威は変わらない。
「終わりだな」
そして、『独眼狼』はそんなカタナの言葉も知らぬ気に、そう告げた。
「何だと?」
コーザが犬歯を剥いて一歩進むが、ニス・キスは傲然と二歩進み出る。
そして、この戦いで最後となる言葉を発した。
「一度バラバラに別れた貴様らが、結局そうして肩を寄せ合う羽目になる。それでどうして――」
「!」
「――おれたちに勝てると思うのさ?」
完全に意識から外れていた、セイの声が背後から届き。
直後、完全なる連携で、二人の剣士の武威がカタナとコーザに降りかかってきたのだった。
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「あーもう、あのお調子者ども」
巡業剣闘商会の長、フェイ=フィターニアは舞台上で絶好調に暴れ回る自らの剣闘士たちに頭を抱えた。
「こんなの初っ端から見せつけちゃって、他の挑戦者が出て来るとでも思ってんのかしら」
結局一戦限りで挑戦終了となるだろう有様は、興業としては大失敗だ。せめて派手な戦いを見た観客のお捻りに期待するしかないだろう。
本人たちは好きに剣が振り回せて楽しかろうが、それを金に換えねば生きていけないのが現実である。
「これはやっぱり、一月後の『双剣祭』で取り返して貰うしかないわね」
フェイはこの後に控えている『祭り』を思って一人頷く。
『双剣祭』。
それは、毎年シュームザオンの夏の終わりに開かれている、剣闘大会の名である。
この大会が、通常の剣闘と違う点はいくつかある。
第一に予選の後の本戦は勝ち抜き式のトーナメント制であり、商会間の調整が一切行われないこと。
第二にその優勝賞金が桁外れに大きいこと。
そして何より最大の特徴は、『双剣祭』の名が表すように、出場剣闘士は必ず二人一組として出場しなければならないことだ。
それ以外に制限はない。シュームザオンに籍を置かない巡業剣闘士であっても出場できるし、二つ名持ちと新人が組んでも構わない。それに――所属する商会が違っていても、一つの組を作ることは許される。
「さてと……今年は楽しいお祭りになりそうね」
舞台上で勝ち名乗りを上げている自分の仲間と、膝をついている若き剣闘士たちの姿を目に写し、フェイは少女のように微笑んだ。




