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性悪勇者と困ったさん  作者: もちごめ


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3/14

3

「あ、あの旅費を頂きたくて」


「王都で貰えた筈では?」


はて? と首を傾げるおじいさんに説明をする。


「ほほう、人助けで無一文に。成る程、成る程。でしたら傷付いた者達にヒールを掛けて貰っても宜しいですかな? 何せ人手が足りないもので」


奥の部屋へと通されると至る所から、うめき声が聞こえてくる。


目を背けたくなる傷を負った者が多く居た。マリアは銀貨10枚の為に頑張るぞと腕を捲くる。


1人また1人とヒールを掛け続ける。一度掛けただけでは治しきれずに何度か掛けていた。


そんな様子を見て司祭は疑問に思う。普通は酷い怪我だろうと一発で治せるものなのに、何故治せないのだろうと。


「つかぬことをお聞きしますが、もしやヒールを掛ける事に慣れておられないのでは?」


ビクリと肩を揺らして司祭を見つめる。


「ぁ......わ、私に順番が回ってくる事はあまり無くて......すみません」


「順番?」


「あの、王都の...教会にはシスターが沢山居て、それで......私の所にまで回って来なくて」


「はぁ、成る程」


正直な所、次期聖女という肩書きからあっと言う間に治してくれるだろうと期待していただけに残念に思ってしまう。

同時に王都には、それだけの人が集まっているのだと地方との格差を実感していた。

もしかして王都の教会よりも1人1人の質は此方の方が高いのでは。


これが次期聖女ねぇ? と意地悪な視線を送ってしまう。


結構な時間を使ったが部屋に居た人達を治す事が出来て達成感を感じていたマリア。


「ありがとうございました。こちらを受け取り下さい」


差し出されたお金を受け取り頭を下げる。


「こ、此方こそ、ありがとうございます」


慣れないヒールを沢山掛けて疲労困憊の中、宿屋へと戻った。外はオレンジ色で既に夕方になっている事が分かる。


扉の前に立ちノックをする。


「誰だ?」


「あ、マリアです。銀貨10枚稼いで来ました」


「ふーん」


ガチャリと扉が開き中へ入れた。


手を差し出され首を傾げてから手を重ねようとすると、サッと手を避けられる。


「金だよ、金」


「あ、すみません」


銀貨10枚を袋から取り出して渡すマリア。


「はい、確かに。風呂入って来たら? アンタ臭いから」


「はい」


確かに今の自分は臭いだろうなと大人しく風呂へと向かう。


居なくなったのを確認してから何気なくマリアの全財産の入った袋を覗く。


「大銀貨13枚、教会行ったな。こんな甘ったれでも生きていける訳だ。教会には、しこたま金があるのかねー」


はぁと溜め息をこぼすと元に戻して舌打ちを1つ。

大した生活力も無ければガッツも無く自分から動くという選択肢も余り無い次期聖女。こんなお荷物を抱えての旅こそが自分への試練なのかもしれないと考えた。


「神なんて信じてないけどね」


タイプの女性だったら旅も楽しい物になったろうが、マリアは自分のタイプではない。むしろ嫌いな部類だ。

自分を持っていない流され易い女。

プライドもそれなりにあるのに自覚が無い。顔もそれなり体は貧相。最悪だ。


「はぁムカつく」


いっその事1人で魔王退治に向かった方が楽だろう。あのお荷物は足手まといだ。


風呂場から寝間着に着替えたマリアが出て来てモソモソとベッドに潜り込むと、そのまま寝てしまった。


「いや、コイツ何なの。僕のお陰で行動出来たのに、お礼の1つも無い」


腹立つなぁと呟く。


扉をノックされた。


「お食事の用意が出来ましたので下の階の食堂へどうぞ」


「分かったよ。ありがとう」


マリアを起こすなんて事はせずに部屋を出て階下へ降りる。


温かな具沢山のスープに白パン。美味しそうな肉料理もある。食べたい分を自分でよそうスタイルの様だ。

白パンを幾つか取りスープはたっぷり。肉料理も食べれる分だけ盛り付けて座った。


どれも美味しくてお腹を満たされた事により幸福感に包まれる。


食器を返却場所へと出し部屋に戻った。


マリアはいびきをかいている。煩い。

また気分を害されたゼーロンは耳栓を着けてベッドに入った。真ん中を陣取っていたマリアを端へと押して動かして、やっと眠れると目を閉じる。


少しするとマリアに抱き着かれ目を覚ます。


「くそ、この貧相女が」


ベリッと剥がして端へ転がす。


「安眠も出来ないのかよ、くそ」


マリアは全く起きる気配も無くスヤスヤと良く眠っていた。

マリアとの間に枕を配置して此方側に来ないようにと対策を立ててから、また目を閉じる。


翌朝、先に起きたゼーロンは身支度を済ませて食事の為に階下へ降りる。


少ししてからマリアも起き出す。空腹を感じているが何処で食べられるのか知らない。どうしようとオロオロしている間にゼーロンが戻って来た。


「あ、あ、あの、お腹が空いて」


「で?」


「......た、食べる場所は何処ですか?」


「階段降りて右手側の奥」


「あ、ありがとうございます」

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