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「誤解?誤解なんてない。今まで私はレベッカ様から嫌がらせを受けてきた。ユリウス様は、全て私が悪いと仰って責めるしかなさらなかった。お父様やお母様達もそう。私は、貴方達にあるがままを話した。でも、誰1人としてまともに取り合ってくれなかった……そればかりか、無理やりユリウス様と結婚させようとさせてきた……。ハッキリ言います。
気持ち悪い。お父様も、お母様も、ユリウス様も、レベッカ様も……気持ち悪い、嫌いです、顔も見たくないっ。……私、貴方達の娘をやめます。ユリウス様と婚約破棄します。」
言った。ついに、言ってしまった。
アイリーンは、呼吸すら忘れて一気に言葉を言い切った。
いつもなら、黙って耐えていた。俯いて、そのまま流されるだけだった。でも……アイリーンはシェルトを見遣る。彼が自分を庇ってくれた。彼が味方をしてくれているという事実だけで、何故だか勇気が出た。
「あ、アイリーン⁈何を馬鹿な事をっ、気でも触れたのか⁈」
皆一様に驚愕し、唖然としている。それもそうだろう。まさか、私が言い返すなんて誰も思ってもいないのだろうから。父や母は凄い剣幕で、私を睨んでいる。
だが、恐れる事なんてなに一つない。だって、私は間違った事は言っていないし、していない。だから、堂々と振る舞えばいいんだ。シェルト様が私にそう教えてくれた。
アイリーンは真っ直ぐ前を見据えた。スタスタと放心状態のユリウスの元まで歩いていくとピタリと止まる。そして、にっこり笑い口を開いた。
「ユリウス様、私貴方に凄~く、言いたい事があるので聞いて頂けますか?」
アイリーンは、ユリウスの返答を待たずに話を続ける。
「実は私……以前からユリウス様の事が大っ嫌いなんです。婚約者の前で他の女性とイチャつくのも気持ち悪いし、幼馴染幼馴染と連呼する姿にも鳥肌がたちます。顔も声も2度と見たくも聞きたくもないので、婚約破棄させて頂きますね?そんなに、レベッカ様がお好きなら、どうぞ、お2人でお幸せになられて下さい。とっても、お似合いですよ、似た者同士で」
終始笑顔でそう話すアイリーンに、ユリウスは生気が抜けていくように見えた。だがそんな事は御構い無しにアイリーンは、レベッカに向き直ると満面の笑みを向ける。
「ユリウス様なんか、レベッカ様に差し上げます。私のお古ですが……。あぁ、でも幼馴染のレベッカ様なら快く受け取って下さいますよね?例え、私のお古でも」
レベッカは、アイリーンの嫌味のこもった言葉に、驚きとも怒りとも取れる表情で、アイリーンを見ていたが言葉が出ない様子だった。
そこまで言い切ったアイリーンは、真顔になりユリウスとレベッカ、父や母達を一瞥し、踵を返す。
スタスタと軽快な足取りで、アイリーンは部屋を出て行った。
あ~スッキリした!ユリウスとレベッカのあの表情!実に情けなくて滑稽だった。それに、父や母達も呆気にとられていた。余りに驚愕して声も出ないようだった。
アイリーンは、外に出て背伸びをした。身体が軽い。スキップでもしたくなる。だが、この歳でそんな事は出来ないので思いとどまった。流石に誰も見てなくても恥ずかしいわ。
兎に角!私は、自由なんだ。もう、あの屋敷には絶対に帰らない。それで、いいよね。これから、どうするかはまだ考えていない。だが、これからどうするかを自分で考えればいいんだ。だって、私は自由なのだから。自分の事は自分で決める!
「なんだ、ちゃんと自分の気持ち言えたね」
「っ⁈」
忘れてた。言い切った事に満足してしまい、シェルトの存在を忘れてしまっていた。アイリーンは恐る恐る、振り返った。予想以上に至近距離にシェルトの姿があり、アイリーンは驚き息を呑む。
「シェルト様っ……⁈」
「よく出来ました」
シェルトは、アイリーンの頭をポンとすると、撫でてくれる。子供じゃないのに、気恥ずかしい。それより、スキップなんてしなくて良かった……そんな姿見せたら恥ずかしくて顔も見れない……。
「及第点だよ」
更に顔を近づけられた。鼻先が当たりそうなくらい、近いっ。顔が熱くなっていく……多分今顔はトマトの様に真っ赤になっている事だろう。
恥ずかしくて、心臓が煩い。視線を逸らしたいのに、逸らせなくて……唇が触れそうで、恥ずかしさに身体も心も震えた。
「アイリーン……」
シェルトは、アイリーンの前に跪き手を差し出した。
「僕のお姫様。僕のこの手を取って下さいますか?」
アイリーンは、吸い込まれる様にそっとシェルトの手を取った。
そして、2人は馬車に乗りある場所へ向かった。そして、たどり着いた先でアイリーンは呆然とする事となる。




