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「アイリーン様、大丈夫ですか……顔色が宜しくありませんが」
今日は、とうとうお披露目の日だ。5日後には婚儀も控えている。
ユリウスの訪問の後、アイリーンは悩みに悩んだ。諦めるしかないのか…そう落胆したが、その瞬間シェルトの顔が頭を過ぎった。
シェルトに、会いたい……。
アイリーンは、シェルトに会いに行く事を決意した。が、部屋から出して貰えない。
「ちょっと、どう言う事ですか⁈」
「旦那様からの言付けで、アイリーン様を部屋から出さないようにとの事です」
最悪だ。外から扉に鍵をかけられた。こうなれば、窓から出るしか……窓を開けた。すると下には、使用人が立っている。
ここまで、普通する⁈
完全に閉じ込められた……。アイリーンは、今度こそ諦めるほかなかった。
お披露目は、ユリウスの屋敷にて行われるらしくアイリーンは父や母と一緒に馬車に乗せられた。
小さくため息を吐き、窓の外を見遣る。朝日も上らぬ内から起こされ、頭の天辺から足のつま先に至るまで綺麗に整えられた。
しかも超ゴテゴテのドレスを着せられ、これではまるで今日婚儀を執り行うようだ。
「……」
嫌な予感がする。まさか、今日挙げるつもりじゃ……。
アイリーンは、ちらりと父と母を盗み見る。これまでの事を考えると、この両親や、ユリウス達も含めやりそうだ。
そもそも、婚儀の直前に今更お披露目なんて普通はしない。なら、5日後に婚儀を行うのではなく、逆なのかも知れないと勘繰ってしまう。本当は今日婚儀を行い、ユリウスの妻として、5日後にお披露目をされるのでは……。
憶測に過ぎないが、あり得る。アイリーンを騙す意味は分からないが、多分それなら招待客にすら真実を告げていないだろう。敵を騙すには味方からと言うし……いやこの場合、私は敵になるのかしら……まあ、それはいいとして……もしかして、父や母すら知らなかったりして……。全てはユリウスの思惑の中……。
色々な憶測が駆け巡り、頭の中がごちゃごちゃする。
アイリーンは、暫し思考が停止した。そうこうしている内に馬車はユリウスの屋敷へと、到着をする。
両親が降り、アイリーンも馬車から降りる。その際に、父がアイリーンに手を差し伸べてきたが、素知らぬふりをして1人で降りた。せめての反抗だった。
貴方の手など私には必要ありません!と言いたいが、言えないのが情けない。
元々父や母を信用などしてはいないが、ここまでくると本格的に人間不信になりそうだ。
両親やユリウス、ユリウス両親……シェルトすらもう信じられない。この半月と少しの間、シェルトから連絡も接触もなかった。部屋に閉じ込められていたにしても、誰かの訪問があれば分かる。
何しろ、アイリーンの部屋の窓からは、正門がよく見えるのだから。
やっぱり、シェルトは自分の事などなんとも思っていないのだろう。アイリーンとユリウスの婚儀の事は耳に入っている筈。なのに、シェルトは会いにすら来てくれなかった。
だから……あれは、単なる暇つぶしだったんだ。いや、もしかしたら……レベッカに妬きもちを妬かせる為、とか……。
そんな事を考えると、益々気分は沈んでいく。胸が痛いし、苦しい。これは、まさか……所謂失恋というものなのかしら。
恋をすると、胸が苦しいとか痛いとか本に書いてあったけど……比喩じゃなかったのね。なんて、また下らない事を考えてしまう。悪い癖だ。
「アイリーン、早くしなさい」
アイリーンが立ち尽くしていると、父から声を掛けられた。
嫌だ。入りたくない。もの凄~く、入りたくない!帰りたい。今すぐ、何処か遠くへ逃げ出したい。
これが、昔読んだお姫様の物語ならばきっと王子様が助けに来てくれる。だが、これは現実で残念ながら、自分はお姫様などではない……。あの時みたいに、またシェルト様が……あり得ない。あんな、夢見たいな事はもう2度とある筈が、ない。
……致し方がない。
アイリーンは、諦めたようにため息を吐くと、ゆっくりと歩き出した。




