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誕生日・三衣

●某日、三衣宅にて●




千「……」



三 ♪ Happy Birthday to me ♪

  ♪ Happy Birthday to me ♪



千「……」



三 ♪ Happy Birthday Dear 自分~ ♪

  ♪ Happy Birthday to……



千「あ、気づいた。いいよ。三ちゃん。そのまま続けて」



三「い、いつからおったん?」



千「三ちゃんが陽気にキッチンに入っていく辺りから」



三「声かけてくれたらええやないか!!」



千「陽気すぎてびっくりしちゃったのよ!大体、何やってるの?」



三「バースデーパーティー」



千「一人で?」



三「今、他に誰か見えるか?」



千「一人ね」



三「うむ。ちょうどケーキも焼きあがるわ。

  ちょっと冷ましてクリームでデコッたら完成や。

  千づっちゃんも食べて行くか?」



千「自分で作ったんなら、このケーキは要らない?」



三「お!?ガトーさんのとこのやないか!

  いるいる!!買うてきてくれたん?」



千「暇してるんじゃないかと思って。じゃあげるわ。有難く思いなさい」



三「ははーっ。ありがたき幸せ。

  座って待ってて。すぐに紅茶いれるから」



千「なんか三ちゃん見てると自信なくなってくるなぁ」



三「んー?何が?」



千「三ちゃん、絶対あたしより家事出来るもん」



三「そら当然やな。千づっちゃんは実家暮らし。

  それに対して俺は一人暮らし。やらなあかん立場や」



千「そうなんだけどさー」



三「まぁまぁ。気にしなさんな。

  ダージリンのちょっとええ茶葉買うたからそれにしよう」



千「なんだその無駄に高い女子力は。

  はーい。じゃお願いする」




  ○   ○   ○




三「美味い。流石の一言や。生きてて良かった……」



千「ケーキ一つで大袈裟ねぇ。美味しいけどさ」



三「あれ?そういえば……」



千「どしたの?」



三「千づっちゃん、どうやって家に入ったん?

  あ、もしかして鍵開いてた?」



千「合鍵借りてきた。快く貸してくれたわ」



三「犯人は父さんか!甘い!いつもながら千づっちゃんに甘すぎる!

  息子のプライバシーを何やと思とるんやほんま」



千「あ、それから伝言。誕生日おめでとう、だってさ」



三「驚いた。父さん、俺の誕生日覚えてたんやな。

  ……ありがとうくらい言うとくか」



千「ほんと、こんな息子じゃ大変だったでしょうね」



三「俺ほど手のかからん孝行息子もおらんと思うが……」



千「よく言うわ。旅好きの放浪息子じゃない」



三「む。ひどい言われようやな。

  旅は俺の人生や。"No 旅、No life"やな」



千「何で旅だけ日本語なのよ」



三「細かいこと気にしたらあかん。

  食べたら出掛けるけど、千づっちゃんも行くか?」



千「あ、ごめん、予定あったんだ。どこ行くの?」



三「いや、今決めたんやけどな。プレゼントを買いに行く」



千「そういえば一人バースデーパーティーしてたんだっけ」



三「俺の分やないで。父さんに」



千「へ?」



三「まさか誕生日覚えてくれてるなんて思ってなかったからな。

  育ててくれた感謝の気持ちをちょっとだけ込めてお返しや」



千「素敵じゃない。ねぇ、三ちゃん三ちゃん」



三「ん?」



千「お誕生日おめでとう」



三「おお、ありがとう」



千「……ん♪」



三「なんやその手は……。

  いや、千づっちゃんにはないからな?プレゼントは」



千「なんでよー!!祝ったじゃん!感謝のお返しは!?」



三「見返り前提やったやないか今!」



千「いいじゃない別に。三ちゃんの育ての友はあたしよ?」



三「なんや育ての友て!」



千「あたしがいないと今の三ちゃんは無かったと思うの」



三「お互い様やろうよ。……まったく。

  ほな美味いケーキの分くらいならお返しするわ」



千「やった♪可愛いパンプス見つけてあるんだー」



三「ケーキ代超えるよなそれ。それは彼氏に買うてもらえぃ」



千「なによ、三ちゃんのケチ」



三「いやもう何を言うたらええやら」





 見方を変えれば、誕生日は育ててくれた人へ感謝する日でもあります。


 文もまた然り。面白い文を読めれば、読む人は面白かったと言います。書いた人は、読んでくれてありがとうと言います。どちらかが一方的に何かを受け取ることは無いんじゃないかと思う次第です。


 いろんな視点でものごとが見られる事は良いことです。

 

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