司会者・三衣
●某日、居酒屋にて●
三「疲れた……正直疲れた……」
千「お疲れさま。ま、乾杯しようよ。カンパイ☆」
三「本日何回目の乾杯やと思てんの。いいかげん潰れそうやわ」
千「結婚式の二次会の司会くらいで何をへこたれてるの、らしくないなぁ」
三「聞いたん4日前やぞ!?進行表もなかったし」
千「それはまた急な話じゃない」
三「元々の司会が不幸事で来られへんようになったんやと」
千「それで三ちゃんだったんだ」
三「そ。俺にWhite Feather ArrowがStandしたんよ」
千「だいぶ酔ってるみたいね。白羽の矢って素直に言えばいのに」
三「飲まなやってられるかいな。音源は故障しとる、DVDは接触不良。
おまけに店員さんからは"もう少し静かに"ってクレームが来るしやな。
やー、散々やったわ」
千「グダグダね」
三「おぉ。新郎さんも随分歯がゆそうやったわ」
千「でも、一応やりきったんでしょ?」
三「当然。エンターテイナー・三衣とは俺のことや。
あの手この手でフォローしたよ」
千「で、調子に乗った訳ね。
3次会の幹事も当日なのに引き受けて苦労した、と」
三「正直後悔した。疲れで軽く意識が飛びかけたわ」
千「やー、お疲れ様。
じゃ何でその足で飲みにいこうなんて言ったの?」
三「迎え酒と言うか、自分の限界に挑戦と言うか……」
千「あぁ、愚痴聞いてほしかったんだね」
三「はっは。よぉお分かりで。
千づっちゃんは今日何しとったんや?」
千「……暇してたわよ?」
三「嘘が下手やなぁ。
やぁ、すまんなぁ。付き合わせて」
千「あたしは三ちゃんみたいに嘘つきじゃないから」
三「む。世の中すべてフィクションやないか。
何かを生み出す側の人間やったら多少の嘘は人生の彩りやろ」
千「いや、訳が分らない。三ちゃんのはただの愉快犯じゃないの」
三「千の偽り、万の嘘。俺の嘘は嘘の為の嘘やからな。
仮面ライダー電王より引用や」
千「今日は一段とコミュニケーションとりにくいなあ」
三「ふはははは。
酔っ払った俺とまともにコミュニケーションがとれるとでも?」
千「面倒くさいわねぇ。本当にちゃんと司会できたんでしょうね」
三「実は三次会の終盤あたりあんまり覚えてなかったりする」
千「まぁ、三次会ともなれば飲み会みたいなもんでしょ?」
三「せやな。携帯で各参加者の終電調べて、
挙式及び二次会の写真データ希望者の為に連絡先を配って……。
あとは新郎新婦からかって遊んでたな」
千「幸せ一杯の夫婦になんて仕打ちを」
三「まさか二次会の参加者が混成で来るなんて思ってなかったもんでな。
ばらっばらの団体のはずやのに妙に馴染んどったし。
皆に楽しんでもらおうと思ったら、これはもう、あれよ。
新郎新婦に共同作業で頑張ってもらうしか」
千「で、無茶な振りでもしたんでしょどうせ」
三「阿呆な。5分間お互いをべた褒めしてもらったり、
新郎新婦それぞれの友人に昔の秘蔵話をしてもらったり。
そんな大したことはしとらんぞ」
千「それを何の前情報も無しに投げるのが無茶振りなんだってば」
三「うん、新婦さんめっちゃテンパってたわ。
いやはや、我が後輩ながら情けない……」
千「新郎はそうでもなかったんだ」
三「元々ノリのええヤツやからな。
俺が何もせぇへん訳がないって思ってたらしい。
流石俺の後輩、よぉ分かっとる」
千「それを見越した上で三ちゃんに司会を頼むなんて……。
場を荒らして下さいって言ってるようなもんじゃない。
あれ?二人とも後輩だったの?」
三「おうよ。両方の友人っちゅう動きやすい枠やったよ。
せやから随分自由にさせていただきました」
千「……あたしが結婚する時は絶対三ちゃんに司会頼みたくない」
三「それは残念やな。参加者からは概ね好評いただいたんやけど」
千「さぞ迷司会だったのね」
三「おうよ、名司会やったんよ」
千「多分、字が違うよ三ちゃん」
三「もう一回言おう。名司会やったよ」
千「あくまでも認めないつもりね……」
準備は大切。でも、準備通りにしないことも大切。
優先されるべきはどんな感情を残してもらいたいか。
これは文の世界でも同じでしょう。と思っております。正しい文章、正しい言葉、これは大事ですが時には間違った表現の方が作品をより深く伝えることになることもある。
だって、文を書くにあたって、決められたルールは無いのですから。




