第32話「そして惨劇の舞台へと──」
※ 悲鳴が響き渡る少し前のこと──。 ※
「おー。来た来た♪ 遠くでウロウロしてるから来ないのかと焦ったわー」
結構な人数がばらけているのか、
どうやら約50人全部がひと塊に動いているわけではなく、5、6人に分かれて移動しているらしい。
これは好都合。
さすがに一遍に来られたら取りこぼしが出るからね。
素人っぽい連中に返り討ちに会う気はまったくしないので、懸念は取り逃がすことだもーん。
「これはうまくすると各個撃破できるかも。そうすりゃ、夢の50人食いができぞー」
えへへ、ぜーんぶ捕まえてやるんだ!
「なので、まずは近づいてきたグループを順繰りに捕まえて、締めて……」
──じゅるり。
「おっと、よだれよだれ──」
まだ食べてないのについ、ね。
舌で涎を拭いつつ、
「それよりも、大事なのはなるべく死体を損壊しないようにしないことだねー」
──や、別に鮮度とかの話じゃなくて、匂いの問題。
「私」的にはイイ匂いなんだけど、その臭気で部屋の異常に気づかれたらことだ。
「だから、なるべく中身が出ないように仕留めて、素早くストレージにしまう。そんで、綺麗に片づけてから次を待つ──」
名付けて、猫糞作戦だー!
「いえー!……ん? ミユちゃん?」
『はぁはぁはぁ』
そこにはいつの間にか戻ってきたゴースト(化)したミユちゃんが荒い息をつきながらフワフワ浮いている。
……つーか、ゴーストって息荒くなるもんなん?
「なに? 警告はうまくいったー?」
無理だろうけど。
『くっ……! コイツ──』
「はいはい、残念だったね」
この様子だと、多分、だいぶ頑張ったんだろう。
なにせ、「はぁはぁ」言うくらいだもん──…………って、なになに?
「ど、どーしたの?…………それ土下座?」
怖いんだけどー。
あと、土下座が何か知らん以下略──。
『くそっ! アンタなんかにこんなこと頼みたくないけど、』
「はい?」
いやいや、
なになになに?
「……あ、まさか命乞い? やめてよーそーいうの。無駄だよー。全部たべるよー」
どーせ子供だけでもー!
とか、そういうこと言う気でしょ?
無駄無駄。
子供が一番楽しみなんだから。
「なにせ、ガキなんてダンジョンではまずお目にかかれないからねー」
『わかってる! アンタがそういうモンスターだってことは分かってる──だから、』
「だからー?」
一応、聞くだけ聞いたげる。
全部食うけど。
『──せ、せめて一撃で! く、苦しまずにしてあげて!」
「…………はい?」
何言ってんのこの子?
サクッとやれって?
「……………………あー。この前の忍者の話?」
『くっ』
あーはいはいはい。
青忍者の話ねー。
たしかに、じ~~~~~~~っくり足から食ってやったわ。
見ててドン引きしたとか言ってたな。
「そんなに見るのがイヤなら、どっかいけばいいじゃ~ん」
何を言われても、
食うのはやめない。
ぜ~~~~~~ったいやめない。
『ち、違う! アタシが見たいとか見たくないとかじゃない!』
「……じゃーなに?」
『そんなの……』
「ん? はっきり言ってプリーズ」
聞くだけ聞く。
『ア、アンタがいっつも言ってるじゃん! 食材に対する畏敬とか敬意とかそう言う話よ!』
「……ん? ごめん、意味が分からない?」
マジで何言ってんの?
『くそっ、この化け物! い、痛いのが嫌だって言ってんの! 苦しいの──本当に痛いの!』
「や、君はもう──ほら、死んでるし」
痛かったのはゴメン。
でも、ミユちゃんも割と一瞬だったと思うよ? 青忍者ほどじゃない。
『だからこそ! ほんとうに……本当に、身体が痛いの、苦しいの──熱くて、惨めで、寒くて、つらくて、悲しくて……。そ、それをあんな子たちが!』
あーん?
「やー。な~~んとなく、言いたいことは分かるんだけどさー。それ、君に関係なくない? 別にミユちゃんが痛みを肩代わりするわけじゃなし」
そもそも、痛いの割と一瞬だと思うよ?
青忍者は──……何秒くらいだったっけ? いや、何十秒だったかな?……ま、忘れた。
『──わかってる! だけど、わざわざ苦しめる必要はなくない!? 何も悪いことしてない子たちだよ』
「あー。あー。あー。なるほどね」
はいはいはい。
わかったわかったわかった。
「ミユちゃんさー。「私」をなんだと思ってるの? ただのミミックだよー。食べるのは好きだけど、別にイジメたいわけじゃないよー?」
そういうのが好きなモンスターがいるか知らんけど、
少なくとも、ミミックである「私」にあるのは食欲だけだ。
いたぶって楽しくは──……ない、はず。
や。
青忍者は別よ!
だ、だって、アイツ等なんか爆弾とかずるいじゃーん? むかついたし。
『そ、それなら──』
「んー……。「私」と君って、約束したり何か決めごとするような関係じゃないと思うんだけどさー」
食べた人と
食べられた人だし。……あ、食べた箱か。
「一応言っとくと、なにも、別に無理に青忍者みたいなことはしないよー」
多分。
でも、爆弾投げてきたりしたら、知らん。
あと安全地帯からチクチク攻撃してきたりしらた、絶対許さん。
『ほ、本当?』
「ん。多分だけどね。──まぁ、食べる時に工夫はするかもだけど」
喉越し楽しんだりとか色々。
長く味わいたいし──。
あとは、
『く、工夫って……』
「工夫は工夫だよ。いや、別に無理に意地悪したり拷問する気はないよ? 前の青忍者のときも、カジカジカジしまくっても味は変わらなかったしね──」
あれはムカついたからやっただけだし。
「あー、でも、丸飲みはくらはね。生きたまま喉で暴れる喉越しが結構いいんだよねー」
ジュルリ。
あれは多分やる。
……絶対一回はやる。
一口サイズのは絶対に、ね。
まー、毎回するもんじゃないから、多分一回だけだと思うけど?
「それ以外は普通に食べるつもり。──まぁ、いいアイデアが思いついたら、普通以外にもするかもしれないけど……。それは、しゃーないってことで」
だって、50人くらいでしょ? 色々試したいじゃーん。
『コイツ!』
うっさいなー。
「とにかく、無理に変なことはしないよー。食べるだけ食べるだけ」
──美味しく食べるだけー。
つーか、
それをとやかく言われたら存在意義に疑義を呈されてるみたいで、さすがに腹立つわ。
『わか……った。お願いよ! 小さい子もいるの──だから、なる%&%&’%(’』
お。
バグった。
「さて、久々の餌だ──どうやって楽しもうかなー」
まず一匹目は踊り食いは決定──……あ、一人目ね。
尊厳尊厳。尊厳大事、汝食材を愛せよ。
よーし、張り切っちゃうぞー!!




