第93話 戻れない場所
空白地帯のさらに奥に、
小さな集落があると聞いた。
管理装置は、設置を拒否。
観測も拒否。
外部の干渉を嫌う場所。
「行くのか」
ロイドの通信は、慎重だった。
「様子を見るだけだ」
アレンは短く答える。
――――
集落は、静かだった。
杭もない。
記録もない。
ただ、日常がある。
「管理は入れない」
代表の女性が、はっきりと言う。
「理由は」
「任せたくないから」
それだけだ。
「危険は承知です」
「それでも?」
「それでも」
管理があれば、安全は増す。
効率も上がる。
だが、
決定権は外へ渡る。
「境界は、どうしている」
ミレナが問う。
「見る」
女性は答える。
「感じる」
「動く」
具体的ではない。
「非合理だと思うだろう?」
女性は、少し笑う。
「だが、ここはこれで続いてきた」
アレンは、否定しない。
「管理を入れれば、もっと楽だ」
「楽は、必ずしも良いとは限らない」
その言葉に、
若い技師が息を呑む。
理解はできない。
だが、否定もできない。
ちょうどその時、
微かな揺れが走る。
集落の人々は、慌てない。
子供を抱え、
一定の方向へと移動する。
誰も、叫ばない。
誰も、指示を出さない。
境界は、集落の外縁で薄れた。
「……偶然かもしれない」
若い冒険者が呟く。
「かもしれない」
アレンは、同意する。
「だが」
「選んでいる」
管理を拒否することも、
選択だ。
間違っているかもしれない。
だが、押しつける理由もない。
「……理解できません」
技師が正直に言う。
「いい」
アレンは答える。
「理解できないものがあると知るだけでいい」
空白地帯の奥。
そこは、
管理も、
橋渡しも、
届かない場所。
戻れない。
だが、
存在している。
第四章は、
正解の外にある生き方を、
否定せずに通り過ぎていく。
本話もお読みいただき、ありがとうございました!
少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、
ブックマーク や 評価 をお願いします。
応援が励みになります!
これからもどうぞよろしくお願いします!




