第80話 境界の向こう側
境界は、今日もどこかで生まれている。
管理装置が反応し、
技師が動き、
数分で消える場所もあれば――
人が走り、
声を上げ、
必死に避難させてから、
ようやく消える場所もある。
世界は、相変わらずだ。
均一でも、
完璧でもない。
「……終わらないな」
丘の上で、
アレンは空を見上げていた。
揺れはない。
だが、どこかに“向こう側”がある。
「終わらせる気も、ないだろ」
旅装の男が、静かに言う。
「……ああ」
管理は、続くだろう。
便利さも、進むだろう。
判断を手放す街も、
判断を抱え続ける街も、
これから先、増えていく。
それでいい。
境界があるから、
人は考える。
境界が管理されるから、
人は考えなくなる。
その両方が、存在する。
街の外れ。
子供たちが、
境界の跡を指差して話している。
「ここ、揺れたんだって」
「でも、すぐ消えた」
「見てみたかったな」
誰も、怖がっていない。
誰も、無関心でもない。
ただ、
自分の世界の出来事として、
受け取っている。
「……これでいい」
アレンは、そう思った。
誰かが全てを決めない。
誰かが全てを背負わない。
間違えることも、
失うことも、
選び直すことも――
まだ、許されている。
リーファが、隣に立つ。
「終わり、ですね」
「区切りだ」
「答えは?」
アレンは、少し考えてから首を振った。
「ない」
「でも」
「問いは、残った」
それで十分だ。
冒険者は、
世界を救わない。
ただ、
世界が“まだ続いている”ことを、
証明し続けるだけだ。
境界の向こう側に、
正解があるわけじゃない。
あるのは――
選び続ける人間の姿だけだ。
追放された無能魔術師は、この日――
**境界の向こう側に、
答えではなく、
“続いていく世界”を見た。**
それは、静かで、
派手さのない未来だ。
だが、
誰かが考え、
誰かが選び、
誰かが責任を持つ限り。
世界は、
まだ――歩いていける。
彼は、冒険者として、
その歩みの横を、
今日も黙って進んでいく。
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