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追放された無能魔術師、実は全属性適性だったので辺境で最強になります  作者: 蒼月アルト


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第72話 アレンの不在

 アレンは、境界の現場に行かなかった。


 依頼がなかったわけではない。

 むしろ、増えていた。


「……来ないんですか?」


 受付の冒険者が、恐る恐る聞いてきた。


「行かない」


 それだけ答える。


 理由は、説明しない。

 説明すれば、それが“判断”になる。


 ギルドは、回っていた。


 境界技師エルドの装置は稼働し、

 ロイドは基準を読み上げ、

 冒険者たちは手順通りに動く。


 問題は、起きていない。


「……順調ですね」


 リーファが、報告書をまとめながら言う。


「ああ」


 否定できない。

 数字は、嘘をつかない。


 被害件数は低下。

 混乱もない。

 苦情も減った。


 アレンがいなくても、

 世界は、ちゃんと回っている。


 ――それが、一番怖かった。


 数日後。


 境界が発生したのは、郊外の小集落だった。


 装置は設置され、

 拡大は抑えられた。


 だが、避難が遅れた。


「……子供が一人、取り残された」


 報告は、淡々としている。


「装置は正常」

「手順は遵守」

「責任者の判断も、基準内」


 ロイドが、黙り込む。


「……助けは?」


「現場判断では」

「装置の安定を優先しました」


 最善だ。

 規定通りだ。

 間違いではない。


 だが――

 子供は、怪我をした。


 命に別状はない。

 それでも。


「……アレンがいたら」


 誰かが、呟いた。


 その一言が、

 静かに、空気を変えた。


「いたら、どうなってた?」


 ロイドが、低く聞く。


 答えは、出ない。


 アレンなら、

 踏んだかもしれない。

 踏まなかったかもしれない。


 だが、確実に――

 誰かが“考えた”。


 今は、

 誰も考えなかった。


 夜。


 丘の上。


 アレンは、一人で空を見ていた。


 境界は、遠くで揺れている。


「……行かないのか」


 旅装の男が、現れる。


「行かない」


「責められるぞ」


「知ってる」


 男は、少しだけ間を置いて言った。


「それでも、離れた」


「ああ」


「なぜだ」


 アレンは、ゆっくり答える。


「俺が行けば」

「“もしも”が、全部俺のせいになる」


「それは」

「この仕組みを、完成させることになる」


 管理の中心。

 最後の判断者。

 責任の集積点。


 それは――

 彼が、最も拒んできた立場だ。


「……世界は、回っている」


「回っている」

 男は、頷く。

「だが」


「回っているだけだ」


 アレンは、目を閉じた。


 人が、考えなくなっている。

 判断が、仕組みに吸い込まれている。


 それでも。


 自分が戻ることが、

 解決ではない。


 追放された無能魔術師は、この日、

 **自分がいない世界を、あえて選び続けた。**


 それが、

 誰かを救えない選択だとしても。


 それが、

 責められる選択だとしても。


 中心に戻らない。


 それが、

 彼が引いた線だった。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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