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追放された無能魔術師、実は全属性適性だったので辺境で最強になります  作者: 蒼月アルト


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第56話 選ばなかった結果

 知らせは、遅れて届いた。


「……北の開拓村だ」


 ロイドの声は、低かった。


「境界絡みの異常」

「被害が、出た」


 俺は、何も言わず地図を見る。


 そこは――

 依頼が出ていなかった場所だ。


「規模は?」


「大きくはない」

「だが……死人が出ている」


 一瞬、胸が締めつけられる。


 それでも。


「……行く」


 現地は、静まり返っていた。


 壊れた家屋。

 倒れた柵。


 だが、戦闘の痕跡はない。


「……境界は?」


「もう、閉じている」

 同行した冒険者が答える。

「嵐みたいに、通り過ぎた」


 俺は、目を閉じた。


(……短時間型か)


 自然発生。

 誰かが踏んだわけでもない。


 だからこそ、予測できなかった。


「……死者は」


「三人」

 村長が、声を震わせる。

「皆、避難が遅れた」


 責める声は、ない。


 恨みも、怒りもない。


 ただ、疲れ切った顔。


「……助けは」

 村長が、ぽつりと言う。

「来ないと思っていました」


 その一言が、重い。


「……なぜ」


「噂を、聞いていたからです」


 村長は、俺を見る。


「アレンさんは」

「“境界を使わない”と」


「だから」

「危険なら、来ないだろうと」


 胸の奥が、静かに沈む。


 俺は、間違っていない。


 だが。


「……それでも」

 村長は、頭を下げた。

「来てくれて、ありがとうございます」


 感謝が、

 一番、重かった。


 帰り道。


 リーファが、声を震わせる。


「……アレンさん」

「私たちが、行っていたら……」


「分からない」


 正直に答えた。


「間に合ったかもしれない」

「間に合わなかったかもしれない」


「だが」

「俺は、呼ばれていない」


 それが、全てだ。


 丘の上。


 風に当たっていると――


「来たな」


 旅装の男が、静かに言った。


「……ああ」


「後悔は?」


「ある」


 即答だった。


「だが」

「線は、引き直さない」


 男は、何も言わない。


「俺が、全部を拾い始めたら」

「世界は、俺に依存する」


「それは」

「今日死んだ三人を、二度殺すことになる」


 沈黙。


 やがて、男が言った。


「……それでも、重いな」


「重い」


 否定しない。


「だから」

「忘れない」


 それが、俺にできる全てだ。


 追放された無能魔術師は、

 この日――


 正しい判断が、

 必ずしも正しい結果を生まないことを、

 はっきりと知った。


 それでも。


 線を、引き続ける。


 選ばなかった未来も、

 背負いながら。


 それが、

 冒険者として歩くということだった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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