第33話 解決
地脈の中心は、街道から外れた古い制御跡だった。
石柱。
崩れた魔法陣。
そして――歪んだ魔力の流れ。
「……これが」
リーファが息を呑む。
「王都が、昔使った制御術式ですか」
「ええ」
俺は、静かに頷いた。
「単属性で無理やり押さえ込んだ」
「そのツケが、今になって噴き出している」
王都式の魔術は、効率的だ。
だが、それは「単純な世界」を前提にしている。
(……世界は、そんなに単純じゃない)
俺は、ゆっくりと地面に手を置いた。
魔力を、流す。
――いや。
流さない。
火、水、風、土。
光と闇。
六つの属性を、同時に“感じる”。
どれか一つを強めれば、
別のどれかが歪む。
だから。
(……均す)
全属性を、同じ重さで扱う。
主張しない。
押し付けない。
ただ、元の流れへ戻す。
地面が、低く鳴った。
「……来ます」
リーファが、身構える。
だが。
暴走は、起きなかった。
荒れていた魔力が、
ゆっくりと、静まっていく。
「……安定」
ロイドが、呆然と呟く。
「嘘だろ……」
「魔力嵐が、消えた……」
石柱のひびが、音もなく閉じる。
歪んでいた魔法陣が、ただの石へ戻る。
――終わった。
俺は、深く息を吐いた。
「……これで」
「もう、暴走しません」
王都の魔術師たちが、震える声で言う。
「……なぜ」
「我々には、できなかった」
俺は、振り返らずに答えた。
「やり方が、違うだけです」
事実だった。
「全属性適性は、強さじゃない」
「干渉しすぎないための資質です」
だから。
測定では、数値が出なかった。
相殺し合って、ゼロに見えただけ。
無能だったわけじゃない。
規格外だっただけだ。
地脈は、静かだ。
空気は、澄んでいる。
長く続いた異変は、
この瞬間――完全に終わった。
追放された無能魔術師は、
この日――
世界を救ったが、
世界を支配することはなかった。
それで、いい。
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