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追放された無能魔術師、実は全属性適性だったので辺境で最強になります  作者: 蒼月アルト


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28/121

第28話 処分

 魔術局の裁定は、早かった。再現調査から、わずか半日後には、正式な処分が文書として通達された。例外は、なかった。


「カイル・ローデン」


 監察官が、無機質な声で名を呼ぶ。カイルは、俯いたまま動かない。


「虚偽報告。職務権限の濫用。ならびに、調査妨害」


 一つ挙げるごとに、彼の肩が沈んでいく。


「よって、王都魔術局所属資格を、即時剥奪する」


 その一言で、部屋の空気が凍りついた。


「……待ってくれ」


 カイルが、かすれた声を絞り出す。「俺は、ただ……」


「動機は、考慮しない」


 監察官は、顔色ひとつ変えなかった。「結果のみを裁く。それが、王都だ」


「加えて、冒険者登録も永久停止とする」


 逃げ道は、どこにも残されていなかった。カイルは床に膝をついた。誰も助け起こさない。誰も声をかけない。かつて彼が周りを従えていた広間で、今は誰ひとり、彼の側に立たなかった。


「次――セシリア・ヴァイス」


 彼女は静かに顔を上げた。背筋こそ伸びていたが、その目に、以前のような余裕はない。


「虚偽報告への黙認。不適切な影響力の行使」


 貴族の娘にとって、最も痛い場所を突く罪状だった。


「よって、ヴァイス家の推薦枠を、正式に剥奪する」


 セシリアは、唇を噛んだ。「……承知、しました」


 それだけ言うのが、精一杯だったのだろう。声は静かでも、その背後で、家の後ろ盾が音もなく崩れていくのが見えるようだった。


「以上をもって、本件は完全に終結とする」


 監察官が言い終えると、記録官たちが動き出した。もう誰も俺を責めない。誰も、疑わない。


 廊下に出たところで、リーファがそっと隣に並んだ。


「……本当に、終わったんですね」


 その声には、まだ緊張の名残がある。


「ああ」


 短く答えたところへ、廊下の奥から足音が近づいてきた。


「アレン・フェルド」


 冒険者ギルドマスターのロイドだった。腕を組み、値踏みするような目でこちらを見ている。


「見事だったな」


「俺は、何もしていません」


「それが、一番恐ろしいのさ」ロイドは苦笑した。「王都はな、感情に任せて復讐する人間より、静かに事実だけを積み上げる人間を、ずっと恐れる。お前は、後者だ」


 少し間を置いて、彼は続けた。「さて。これから、どうする」


 俺は、迷わなかった。「辺境へ、戻ります」


 王都には、もう用がない。


「……そうか」ロイドは頷き、懐から一枚の書状を取り出した。「なら、餞別を一つ持っていけ。王国正式依頼――辺境監察を兼ねた、自由行動の許可だ」


 つまり、誰にも縛られない権限、ということだ。


「……ありがとうございます」


「礼はいらん」ロイドは、皮肉げに口の端を上げた。「これは、王都の“後悔”だからな。受け取ってやってくれ」


 書状を懐にしまう。王都の空は、今日も白く澄んでいた。だが、その白さに、もう気圧されることはない。俺を縛るものは、ここには一つも残っていなかった。


 あとは、帰るだけだ。土と人の匂いのする、あの辺境へ。


 だから、帰り道のあいだずっと、あの水晶球のことを考えていた。俺の何を測り損ねたのか――王都の誰も、ついに一度も口にしなかった。

王都には、もう用がありません。帰り着いた門の内側で待っているものが、拍手だけかどうかは分かりませんが。

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