第22話 判断の差
任務の開始は、王都北門からだった。
「今回の調査区域は、旧採掘場跡地だ」
役人が地図を広げる。
「魔力反応が断続的に観測されている」
「小規模だが、原因は不明」
俺は地図を一瞥し、すぐに視線を上げた。
「……この地点」
指で一点を示す。
「採掘場じゃありません」
「地脈の分岐点です」
一瞬、場が静まった。
カイルが、鼻で笑う。
「地脈?」
「そんな学説、聞いたことがない」
「王都の教本には、載っていないでしょうね」
事実を言っただけだ。
「辺境では、実測で判断します」
セシリアが、冷たく言う。
「感覚論ですわ」
「正式な魔術理論に基づいていません」
「……では」
俺は役人を見る。
「どちらを優先しますか?」
役人は、一瞬迷い――俺を見た。
「……アレン・フェルドの判断を採用する」
カイルの顔が歪む。
「……勝手にしろ」
「俺は、俺のやり方で行く」
彼は、部下を引き連れ、別ルートへ進んだ。
(……予想通りだ)
「アレン……」
リーファが小さく言う。
「放っておいていいんですか?」
「大丈夫です」
「死なせはしません」
そう言って、俺は歩き出す。
地脈の分岐点に近づくにつれ、
空気が重くなっていく。
(……やっぱりだ)
「止まってください」
全員を制止する。
「ここから先は」
「不用意に魔力を使わない」
数歩進んだ、その時。
地面が、波打った。
「なっ……!?」
魔力の逆流。
罠だ。
だが――
俺は、魔力を“流さなかった”。
結果。
地面の揺れは、俺たちの足元で止まる。
「……回避、成功」
その瞬間。
――遠くで、爆音。
反対側のルートだ。
「……まさか」
嫌な予感が、確信に変わる。
数分後。
負傷者を抱えた部隊が、こちらへなだれ込んできた。
「カイル隊が……」
「地面の魔力暴走に巻き込まれた!」
役人が、蒼白になる。
「死者は?」
「……いません」
「ですが、戦闘続行は不可能です」
俺は、即座に判断した。
「リーファ」
「回復を」
「はい!」
無詠唱治癒魔法。
傷が、瞬時に塞がっていく。
「……な」
「詠唱、なし……?」
カイルが、担架の上からこちらを見る。
屈辱と、困惑が入り混じった目。
俺は、淡々と告げた。
「言いましたよね」
「地脈だと」
返事は、ない。
役人が、深く頭を下げる。
「……判断を誤りました」
「アレン・フェルド」
「いえ」
「判断を聞かなかっただけです」
静かな言葉。
だが、それは決定的だった。
その後、俺の指示で調査は完了した。
原因は、地脈の歪みによる魔力滞留。
つまり――
俺の読み通りだった。
帰路。
カイルは、終始無言だった。
セシリアも、俺と目を合わせない。
王都の空は、相変わらず澄んでいる。
だが。
この日、
王都の人間関係には、確かな“ヒビ”が入った。
追放された無能魔術師は、
力だけでなく――
判断力でも、完全に上に立った。
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