第117話 交差点
同じ境界を、両方が見ていた。
外縁寄りの中間地帯。
規模は、中程度。
無視はできない。
「……ここ、ですね」
ミレナが言う。
結晶板に映る位置。
だが——
「中央も動いてるな」
アレンが、遠くを見る。
空に、
わずかな光の線。
管理網の干渉予兆。
「……来る」
技師が呟く。
つまり、
同じ境界に、
両方が関わる。
「どうします?」
若い冒険者が問う。
ミレナは、一瞬だけ考える。
そして——
「予定通り」
「ばらつきを残す」
短い指示。
だが、
覚悟はある。
一方、その頃。
中央管理区。
「対象、同一座標」
技師が報告する。
「外縁側と重なります」
中堅技師が、少しだけ眉をひそめる。
「……干渉は?」
「向こうは遮断状態です」
「こちらが優先されます」
数秒の沈黙。
判断の時間。
「……通常通りだ」
結論は変わらない。
「最適処理を優先」
それが、
彼らの選択。
そして——
境界が、発生する。
同時に。
こちらでは、
揺れ始める。
ばらつき。
不規則。
人が動く。
「右、抑える!」
「いや、残す!」
声が飛ぶ。
選択が、分かれる。
その瞬間。
空から、
光が降りる。
「——っ!」
管理網の干渉。
強制収束。
「来たか……!」
アレンが低く言う。
境界が、
一気に安定へ引き寄せられる。
「……止める!」
ミレナが叫ぶ。
「干渉、逆流させて!」
「できるのか!?」
「やるしかない!」
技師が、必死に操作する。
光と光が、ぶつかる。
収束と、
ばらつき。
相反する力が、
同じ境界を引き合う。
揺れる。
歪む。
裂け目が広がる。
「……まずい!」
若い冒険者が叫ぶ。
これは——
どちらでもない。
不安定すぎる状態。
「抑えろ!」
「でもそれだと——!」
選択が迫られる。
完全収束か。
ばらつき維持か。
両立はできない。
その時。
アレンが、一歩前に出る。
「止める」
短く言う。
そして、
境界に手を伸ばす。
「——!?」
誰もが息を呑む。
直接干渉。
危険すぎる行動。
だが——
アレンの周囲だけ、
揺れが変わる。
固定でもない。
暴走でもない。
“間”を保つ。
「……そこだ」
静かな声。
「均すな」
「潰すな」
「残せ」
境界が、ゆっくりと形を変える。
収束しきらない。
だが、
崩れもしない。
中間。
不安定なままの安定。
数秒。
やがて——
境界は、収まる。
完全ではない。
だが、
どちらにも偏っていない。
静寂。
「……今の」
ミレナが呟く。
「どっちなんですか」
アレンは、少しだけ笑う。
「どっちでもない」
遠くで、
管理網の光が消える。
中央側も、
干渉を止めた。
結果は——
中間。
誰の想定にもない形。
だが、
確かに存在した。
選択でもなく。
最適でもなく。
“残された状態”。
ミレナは、息を吐く。
「……こんなの、ありなんですね」
「ああ」
アレンは、空を見る。
「まだ、な」
その言葉は、
希望でもあり、
警告でもあった。
この状態は、
長くは続かない。
どちらかに、
寄る。
だからこそ——
次は、
もっと大きな衝突になる。
それは、
もう避けられなかった。
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