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最果ての流れ星  作者: 谷池 沼
『流れ星の誕生』編
3/39

幕間 この国のかたち

 地球に生まれた人類が、渇望していた星間航行技術――ワームホール理論に基づく空間転移技術――を手に入れたのは今から300年程前のことである。


 当時、人類は、その居住域を火星にまで広げ、総人口は200億に届こうかというところ。火星の開拓も軌道に乗り、『次』を目指した研究がなされていた頃であった。


 「次は金星」を合言葉に、テラフォーミングに関する研究と実験を積極的に行っていた科学者と技術者達は、空間転移――当初は小難しい名で呼ばれたが、結局、空想科学の時代から馴染みのある『ワープ』の名で定着した――の実用化の報に、躍り上がって狂喜した。


 人類の長年の夢、星々の世界への扉が開いたのだ。人類の誕生以降、かつては地表から見上げ、今も遠くから眺めることしかできない世界に、自分達が生きている間に到達できるのだ。

 もはや金星どころではない。

 人々は、眼前にニンジンをぶら下げられた悍馬(かんば)のごとく、星の海に向かって走り出した。科学者も、技術者も、そして政治家にマスコミも……。


 幸いにして、20世紀以降の観測により、系外惑星のデータは豊富に揃っていた。

 当然、それらの惑星の中には、少し手を加えるだけで、人類が居住できるものがあるはずだ。もしかしたら、手を加える必要がない惑星も見つかるかもしれない。

 少なくとも、金星をテラフォーミングするよりははるかに容易に事が進むだろう。


 そうと決まればまずは探査である。

 彼らは、技術が成熟することを待ちもしなかった。


 開発されたばかりのワープエンジンは、恒星・惑星などの大質量物体の近くで動作が不安定になることが当初から知られていたものの、どの程度距離をとれば大丈夫なのかというデータが不足していた上、機器の初期不良なども発生。さらに、転移先の恒星系における予想外の環境・事象などに起因する事故も多発し、探査初期には多くの宇宙飛行士達が文字通り『星』になった。


 しかし、その程度のトラブルでは、人類は立ち止まらなかった。


 ワープエンジンの実用化からわずか3年で、テラフォーミング可能な惑星第一号を発見。以後も『新天地』候補の発見が相次いだ。


 その当時、人類社会では、国家間の細かないがみ合いはあったものの、太陽系内に所在する大半の国が加盟する「太陽系連合」による調整が有効に機能し、大規模な戦乱の発生もなく、概ね平和であった。

 そのため、地球、月、火星、そして月軌道内のスペースコロニーに所在していた国々は、非生産的な争いで人員や資源を浪費することもなく、それぞれが競うように開拓・移民船団を編成し、送り出し、人類の居住区域を広げていった。


 技術の進歩も目覚ましく、ワープエンジンの信頼性向上、核融合炉の効率化、高効率のロケットエンジンの開発、そして重力制御装置の完成など、宇宙船に関する技術の基礎がこの時期に形作られた。


 また、惑星改造技術もほぼ確立され、人類が居住し得ると判定される惑星は年々増加。

 移民船団の編成が追い付かないため、その多くは手付かずのままとされたものの、それらの惑星は、人類の発展に資する「貯蓄」として、詳細に観察し記録されていった。




 こうして、太陽系外に居住区域を広げた人類であったが、当然ながら、星の海への進出は未知との遭遇の連続であった。


 恒星、系外惑星、白色矮星に中性子星、暗黒星雲、そしてブラックホール……。それらの天体は、旧世紀以降の研究と観測を通じて既に理論は確立し、観測データも豊富に揃っていたが、実際に近くまで行って観測することで、時に定説を覆すほどの様々な発見がなされた。


 地球外生命との邂逅は、探査初期において早くも実現。その数年後には、未だ惑星を離れるには至っていないものの、人類との意思疎通が可能な知的生命体も発見された。

 さらに、複数の星系において、宇宙空間に明らかに人工物と認められる構造体が存在することを確認。構造や材質等から、遥か昔に栄えていたであろう高度な星間文明の痕跡であることが認められた。


 ただ、探査初期から移民初期に至るまで、宇宙空間で発見された人工物は遺跡ばかりであり、幸か不幸か、現在活動中の、星間航行能力を持つ知的生命体と接触することはなかった。

 人類が、人間を捕食する昆虫型の異星人と遭遇し、散発的な戦闘を繰り広げることになるのはもう少し先の話である。


 未知との遭遇の極めつけは、解析不能の『(ゲート)』と、それを抜けた先にある並行世界(パラレルワールド)の発見である。


 人類が最初に見つけた(ゲート)は、宇宙空間に浮かぶ巨大な『筒』であった。

 そう、筒である。そうとしか説明しようがなかった。

 探査船が余裕で中を通り抜けられる程大きいその筒は、見えてはいるが接触はできず――実体がないようにすり抜ける――人類の科学力では、どういう原理で存在しているのかさえも解明することができなかった。


 原理も構造も不明のままではあったが、地道な観察と研究と実験の結果、この『筒』は、その内部を通過したものを、『どこか』に転移させる転移装置であると結論づけられた。


 後に、同様の効果を持つ存在が別の宙域で複数発見――形は全部違い、板にしか見えないものや、一定範囲に集まったガス状のものもあった――され、その転移装置を抜けた先の宙域を調べていた探査船が、地球起源の人類にしか見えない知的生命体と接触するに至り、この謎の存在は、この世界と並行世界(パラレルワールド)を繋ぐ(ゲート)であると認識されるに至る。


 (ゲート)は、惑星上でも発見されており、その原理や構造、そして接続先の並行世界(パラレルワールド)については、ゲートが存在する国単位で継続して研究が行われることとなった。


 これら未知との遭遇は、科学者達には多数の研究材料を、為政者達には重い課題を与えることとなったが、新天地を求めて地球を出た多くの移民船団にとっては、まず自分達が住む惑星を居住可能な状態まで開拓すること、そして、その惑星の安全を維持することこそが重要であり、異星人も並行世界も、自分達の惑星に影響を及ぼさない限りは、対岸の火事としか認識されなかった。




 そんな時代のさなか……。


 地球上に所在するとある国家が、移民船団の編成を始めた。


 過去、地球において広大な帝国を作り上げ、繁栄を謳歌したこともあるその国は、時代のうねりの中で没落して国力を大きく落とし、当時では地球上に存在するありきたりな規模の国家の一つとして、目立たつこともなく存続していた。


 そんな国が移民船団による惑星開拓を企図したのは、もちろん長期的な経済的見返りを期待してのことだ。

 当時、惑星開拓は、余程のことがない限り、確実に投資した以上の見返りを得られる事業であると認識されていた。


 当然ながら、旧世紀の植民地のように、支配して収奪するという方式をとるのではない。開拓した惑星を国家として独立させた上で、貸付資金の返済――当然利子つきだ――と、長期的な貿易により利益を上げるというモデルである。


 しかし、没落したその国家に単独で移民船団を編成できる力はなかったため、共同で事業を行うパートナーを募集したところ、遥か昔に同盟を組んだことのある東の果ての島国が手を挙げた。

 技術力と資金力については定評のあるパートナーを得たことにより、計画は急速な進展を見せる。


 移民船団の目的地は、太陽系から60光年ほど離れた位置にある壮年の恒星系。当然、その星系には比較的容易に開拓可能と思われる惑星の存在が確認されている。


 移民船団の規模は、開拓移民用大型輸送船9隻を基幹とする輸送船団と、人員1万8千人。

 これまで、大国と呼べる有力国家が送り出した主要な移民船団と比べて、かなり小規模なものであったが、地球上の中堅国家2国による計画としては、かなり頑張った方であった。


 移民船団の任務は、対象恒星系の調査と、初期的な拠点の構築、そして惑星のテラフォーミングだ。

 それらの作業を行う移民船団の基本原理は『現地調達』、『自給自足』。

 これは、今まで出発した移民船団も同様であり、送り出した国家による継続的な支援は行われない。


 とはいっても、移民船団に属する輸送船は、当然全てワープエンジンを搭載しているため、必要であればいつでも地球圏に帰ってきて、不足する資材の買い付けを行ったり、追加の移民の受け入れを行うことができる。


 そもそも、どの移民船団でも、初期の移民だけで惑星の開拓を完了させることは予定されておらず、追加で移民を受け入れることは当初から計画に織り込み済みだ。

 数万人で惑星1個を領有したところで、まともな開発が進むわけがない。適正な人口を確保するためにも移民の受け入れは必須だった。


 そうした移民募集は、既に先行した移民船団により実施されており、今後、さらなる移民獲得合戦に発展することは容易に想像できる状況であった。

 それはすなわち、太陽系連合から『第18次移民船団』の名称を授かった今回の移民船団が、必要な時に、必要な人員を確保できない可能性があるということだ。


 真っ向勝負で人員獲得合戦に参入したとしても、開発が先行している大国の移民船団に勝てるはずがない。

 ならばどうするか。


 差別化を図るしかない。

 人々が、わざわざ18次移民船団を選んでくれる付加価値、特異要素を持たせるのだ。



 計画に参加する二つの国家が、第一陣となる移住希望者の募集を発表した際、その募集要綱には次のような一文が付されていた。


『本移民船団は、ヒトとして自然な進化の道を歩む者により構成される。その目的を達成するため、ヒト遺伝子に対する改変・操作や人体への機械類の埋め込み・接続等はこれを禁止する』


 治療行為などにかかる例外規定はあったものの、本条件に同意した者でなければ船団に入れないとの方針を打ち出したのだ。


 遺伝子改造による免疫力の向上や、利便性・快適性向上を目的とした機械埋め込み(インプラント)すら禁止するという方針を批判する者も多かったが、予想以上のペースで賛同者が集まり、定員はすぐに埋まった。


 計画開始から4年。第18次移民船団は地球を出発し、3ヶ月後には目的の星系に到着。

 恒星の名を、彼らの故郷に由来する『アルビオン』と定め、惑星のテラフォーミング、居住用スペースコロニーや軌道エレベーターの建設を開始した。


 また、各種作業と並行して、近傍の恒星の探査を行っていたところ、ほんの8光年先の恒星が、移住先として有望な惑星を従えていることを発見する。


 しかし、18次船団の開拓者達は、自身の足元に広がる惑星の開発で手一杯であり、後にアウディアと呼ばれることになるその星の情報は、日々蓄積されるデータに埋もれていった。




 その星についての情勢が変わったのは、『アルビオン』国内――開発が進んで人口が増え、国家として独立した――において、機械埋め込み(インプラント)の許可を求める運動が起こってからである。


 この運動は、小惑星において鉱物採掘に従事する作業員らによるもので、位置情報収集、通信などの機能を内蔵するデバイスを身体に埋め込みたいという、しごくまっとうな要望から始まったものであった。


 しかし、移民船団編成時のいきさつから、人体に恣意的に手を加えることをよしとしない者は多く、国を二分する大激論となってしまったのである。


 最終的には、作業員の生命・身体の保護を目的に機械埋め込み(インプラント)の許可がおりたのだが、反発も根強く、特に1人の科学者が『このまま許可範囲が広がれば、人類の自然な進化を観察するという船団の当初の目的が失われる』と激しく訴えを続けた。


 容認派は、なし崩し的に許可範囲が広がることはないと説得したが、すでに各分野で許可範囲を拡大すべきとの声があがり始めていた。


 1年にわたる激しい議論を経て、結局、その科学者と、彼の説に賛同する一部の団体・企業・個人などは、アルビオン政府と袂をわかち、新たな移住先を求めることとなった。


 アルビオン政府としても、彼らを無理に引き留めて国内に遺恨と対立を残すよりも、適度に支援の手を差しのべつつ惑星開発を行わせることにより、近隣の居住者として良好な関係を構築する方が無難であると判断。以前発見した後、誰も手を着けていなかった近傍の星系への移住を打診したのである。



 その星系は一言で言うと最果ての僻地であった。


 もともと、アルビオン星系自体、人類の居住区域のほぼ外縁に所在する辺境国家なのだが、その星系は、辺境国家アルビオンのさらに『外側』に位置し、背後に数百光年にわたって恒星が存在しない宇宙の空洞を背負う、『最果て』の宙域にあった。


 もちろん、恒星間航行技術がさらに発展し、その宇宙の空洞を『飛び越える』ことができるようになれば情勢は変わるだろう。

 しかし、現時点ではそのような技術革新が起こる見込みはなく、その星系は、恒星や惑星などから得られる資源は期待できても、航路上の要衝にはなり得ない、ただの僻地でしかなった。


 優良な物件とは言い難かったが、科学者らは、『むしろそんな環境こそが欲しかった』とばかりに、用意された6隻の輸送船に分乗して、喜び勇んで新天地へ旅立ったのである。




 新天地に到着したのは、6隻の開拓移民用大型輸送船と、5千余名の人員だけであった。


 彼らは、その星系と恒星を、親しみを込めて『アウディア』――ある国の言葉で『村』を意味する――と名付け、ここに、アウディア星系の歴史の第一歩が踏み出されることとなった。


 彼らは、慢性的な人手不足に悩みつつも、第三惑星の衛星に拠点を構築し、とりあえずの居住環境を整えるとともに、『シュライク』と名付けた第三惑星のテラフォーミングを開始する。


 同時に実施していた星系内探査により、レアメタル、レアアースを大量に含む小惑星を複数発見。速やかに採掘事業に取りかかり、外貨獲得の目処も立った。


 そして、彼らは人手不足の解消のため、多産を奨励するとともに、惑星開発のセオリーに従い、自分達と同じ思想・信条を持つ移民を積極的に受け入れ始めた。



 アウディア星系への移住開始からちょうど30年。人口10万人余りとなったアウディア植民者達は、星系国家『アウディア』の建国を宣言。同年、惑星シュライクの公転・自転周期に基づくアウディア暦を制定。建国の年をアウディア暦1年とした。


 ちなみに、シュライクの公転周期は369日、自転周期は24時間45分であり、地球を基準とした標準歴との差は少なく、生活上大きな混乱は生じなかった。


 その後も、星系国家アウディアは多数の移民を受け入れつつ着実に発展を続け、アウディア暦74年に第三惑星『シュライク』のテラフォーミング完成を宣言。待望の惑星への移住を開始する。


 アウディア歴78年には、首都機能をシュライク地表に移転。首都『グリンウッド』が機能を開始した。



 そんな中、首都から見ると惑星の裏側にあたる大陸で調査にあたっていた学者らが、周囲とは明らかに異なる動植物の生育を確認。さらなる調査の結果、調査団は『(ゲート)』を発見する。


 先述の通り、並行世界への入り口と言われる(ゲート)は、既知宇宙でもすでにいくつか発見されており、大きさや形状はまちまちである。


 シュライクで発見された物は、高さ3メートル、横幅4メートル程度の厚みのないガラス板のように見えるもので。そのガラス板に『入る』と別の世界に移動できるらしかった。


 周囲の動植物は、並行世界から(ゲート)を通ってシュライクに来て、そこで繁殖・繁栄していたものであると思われた。


 (ゲート)の先にある世界については、政府が防疫対策も含めて調査を進め、程なく人類――正確には『ヒト種にしか見えない何者か』――を含む知的生命体との接触に成功。

 『向こうの世界』の国家との交渉も開始され、アウディア暦83年現在では、並行世界の住人との交換滞在を行おうとするまでに関係は進展していた。




 そんなアウディアに住む人々は、控え目に言っても『変わった奴ら』であった。


 建国に至る経緯から、遺伝子操作や機械埋め込み(インプラント)等を強く拒否することはよく知られている。

 なにせ、アウディア開拓民の第一陣は、『自然な進化』の看板の下に集まったアルビオン星系移民者の中から、最強硬派を抽出して集められた人々なのだ。


 その思想は、多数の移民を受け入れたことで薄まり……はしなかった。

 アウディアの開拓者達が、自分達の国への移住者を募るに際して、自らの国が標榜する理念をきちんと説明し、賛同するものしか移住を認めなかったからだ。


 『自然な進化』に賛同する者、人類の遺伝子に手を加えることを忌避する者は、アルビオン星系だけでなく、太陽系や他の星系にも一定数いた。

 そうした者達の中から、過激な思想の持ち主や、極端な宗教的思想の持ち主を慎重に排除しつつ、アウディア国民は集められたのである。


 そうして集まった国民の精神的支柱となったのは、建国にも深く関わった一人の科学者だった。


 その科学者は、『後天的に獲得した資質や環境適応能力が、生存に有利な突然変異を引き起こす』という説を唱え、身体や脳の鍛練の必要性を説くとともに、人類が厳しい環境に身を置くことには意義あると訴えた。


 その説は、国内の科学者、政治家、マスコミにも支持され、アウディアの基本的理念として、国民に広く受け入れられることとなったのだが、科学的知識を持たない人々に説明される過程で、より単純に、分かりやすく意訳され、『後天的に獲得した有利な資質が子孫に受け継がれる』と誤って解釈されるようになった。


 さらに、その科学者が寿命を迎えてこの世を去った後、『鍛練により強化された肉体は、遺伝子レベルで記憶され、子孫に遺伝する』、『人間の強力な意識は遺伝にも影響を与え得る』などと唱える学者も現れ、アウディア人達の間に、「子孫をより強くするため、自身の肉体と精神を鍛えなければならない」という考えが流行し始める。


 アウディアの人々は、結婚前の若い世代を中心に、一斉に体を鍛え始めた。

 学校教育の現場においても、体育やスポーツ系のクラブ活動が重視され、アウディア人児童の身体能力は劇的に向上。さらに、その世代の多くが、大人になっても習慣として運動やトレーニングを続けたことから、アウディア人は全体として頑健な肉体を持つに至る。


 さらに、アウディアの人々は、人類が元々有している――または、有していた――であろう特殊な能力の検証や強化にも熱意を持って取り組んだ。


 すなわち、第六感とも呼ばれる超心理学の分野である。


 オカルト的な扱いを受けやすいジャンルながら、アウディア人達は真に科学的なアプローチを続け、精神感応者(テレパス)や予言者、サイコキネシス等の実在を証明することに成功。

 以降は、能力者の発見を目指した調査や、その能力向上についての研究が継続的に進められることとなった。



 そして現在。

 アウディア人は『ヒトの能力拡張はヒトの意識と行動によってなされる』との考えを広く共有しており、若い世代を中心とする幅広い年代の国民が、日常的に身体を鍛えつつ、新たな能力を獲得するためのトレーニングを積極的に行っている。


 その姿・行動を見た他星系の人々から『脳筋』『マゾ集団』などと揶揄されることはあっても、彼らは気にしなかった。

 アウディア人は自分達の進む方向に自信を持っていた。なにせ、結果は実際に数値として現れているのだから……。


 アウディア人は、幼児期の段階で、既に人類全体の平均と比べて、身長や体重が1割以上大きいのだ。

 特に骨密度・筋肉量は明らかに優れており、移民期に入ってむしろ身体能力が低下しつつある他星系人との差は開く一方である。

 また、惑星シュライク入植までの長い期間を宇宙で暮らしたアウディア人は、先天的に『無重力酔い』をしないことも知られている。


 それらは、『自然な進化』を目指す自分達の行動が間違っていなかったことの証。

 アウディアの人類は、ゆっくりではあるが着実に進化しているのだ。


 現在のアウディア人の多くは、『努力』とか『根性』とかいう言葉が大好きだ。


 努力は人を強くする。根性があれば更なる努力ができる。

 この世で遭遇する大抵の問題は、頑張れば解決できる。解決できないなら、それは努力が足りないから。

 自らの世代で必要な努力を積み重ねられないなら、数世代をかけて積み上げれば良い。

 努力によって身に付いた強さは、子孫に遺伝し、受け継がれるのだから……。


 彼らは今日も、ゆっくりと、しかし着実に前に進む。

 困難にぶち当たっても、めげず、腐らず、諦めず。

 『進化』を信じて、自らの体と心を鍛えながら……。

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