一方その頃のみんなは?
ヨーンとブリットが武具店に訪れている頃、ヘンリクは大地の神の神殿を探していた。元々聖地巡りなどで散策には慣れていたので、その辺は気楽な物だ。
街の様子を見ながら散策を楽しんでいた。
「よく見ると、亜人の方も結構居ますね・・・」
猫耳や犬耳、ウサギの耳を付けた亜人も多く見受けられる。人も当然居るが割合的には五分五分といった所か。
そんな感想を持ちつつも、神殿を目指す。何となく方向は解るが、念のためにとすれ違う人に尋ねながら神殿に向かった。特に迷うことも無く不思議と到着出来た。
その場所は街の南東の外れで、周りを見渡すと一面広大な農地と牧草地が広がる。さすが大地の神の神殿といった所か。神殿も町中の建物と比べるまでも無く大きい。信仰の大きさが窺える。
「あ・・・でも、この神殿にも何度か来ていることになるんですよね・・・どう言って入りましょうか?」
どう神殿に入ろうかと迷っていると、近くで声を掛けられた。
「ヘンリク神官。一週間ぶりですね。今日はどうされましたか?お祈りですか?」
自分と同じ神官衣をまとった女性が声を掛けてくれる。
(名前がわからない・・・取りあえず同意しておいた方が良いかな?)
「はい。昨日、王都から戻ったので、神殿に挨拶に伺いました。」
「それはそれは、中に神官長様もいらっしゃるので中へどうぞ。」
と言って、中へ通して貰えた。中に入ると、大地の神のシンボルに祈りを捧げている一人の女性がいた。
声を掛けてくれた女性神官が神官長へ声を掛けようとしたが、ヘンリクはそれを止めた。
「祈りが終わるまで待ちましょう。」
ヘンリクは佇まいを正し、同じように祈りを捧げる。不思議なことに祈りの言葉が頭から沸いてくるのだ。祈りを捧げ終わるとヘンリクの中に何かがス・・・と入ってくる気がした。
気が付くと、神官長も祈りを捧げ終わっており、こちらを見ていた。
「何か得るものがあったようですね。」
にっこりと微笑む神官長。
その笑顔にヘンリクは、
「はい。大地の神様より新たなるお力をお分け頂いたようです。」
「それは何よりです。これからも怠ること無く精進して下さい。」
「ピリカ神官も精進して下さいね。」
「はい。頑張ります。」
(あの子はピリカさんか・・・これからも顔を出すことになるから、名前と顔を覚えとこう。)
神官長とピリカと王都での話(TRPGの内容でのことだが)をして、ここ最近の街の様子なども聞いたりした。ハレックの街は平穏そのものだったと言うことが解った。
一方エリックはと言うと、精霊術士の店で丁重にもてなされていた。何故かと言うと、彼がハイエルフだからだ。店の亭主はエルフだった。となれば、こうなるという物だ。
エリックは困惑していた。まず自分がハイエルフであったことを失念していて、何の前準備も無く店に入ってしまった為、対応が後手に回る。
「精霊との契約を結びたい」
と言っても、
「あなた様に教える程の技量はございません。」
と返される。
堂々巡りだった・・・。しかも茶菓子まで出る始末だ。
困り果てたエリックは、正直に自分がまだ未熟であることを話すことにした。
本来ハイエルフとも為ると、精霊に愛される存在とされている。しかし自分はまだ若く、それだけの技量は備わっていないのだと話したのだ。
そこまで話してようやく納得して貰えた。
エリックが契約している精霊はどれも下位精霊ばかりだ。出来れば中位精霊との契約を結びたいと考えている。ただ、レベル以外にも精霊との相性という物があるのでどこまで成功するかはやってみないと解らない。
精霊術士もハイエルフに教えるとあって気合い十分だ。
精霊術士は中位の精霊を順に呼び出していく。
呼び出された精霊にエリックは精霊語で話しかける。
話しかける内容は至ってシンプルだ。
ただ、「友達になりましょう」と声を掛けるのである。
そして興味を持って貰えなければ、そのまま消えてしまい、興味を持って貰えれば、精霊の御霊を授けてくれる。
今回挑戦して契約出来たのは、光の精霊と、闇の精霊、そして水の中位精霊だった。と言うより、精霊術士の魔力がそこで限界を迎えたのだ。
「申し訳ありません。中位精霊を呼び出すのは私の力では1日に3体が限界です。そのすべてと契約出来たエリック様はさすがです。」
と、褒められたが・・・
「いえ、無理を言って申し訳ありませんでした。僕自身もっとハイエルフとしての自覚を持つべきでした。今日はありがとうございました」
と、エリックは精霊術士に感謝した。彼は少しでもパーティーの力になりたいと考えていた。ハイエルフの強みは精霊魔法だ。
レイピアや弓も使えるが、パーティーの戦力アップと考えれば、少しでも強い精霊との契約を進めることが第一だと考えていた。
また、デバフ担当としての役割は、自分が担っていることも自覚していた。
契約した中位精霊と何が出来るか、色々と検討しないといけない。
時間を作って実践で役立てるように頑張らないと!と、エリックは再度身を引き締めた。
エステルは魔法屋で悩んでいた。
中級魔法の本は1冊金貨5枚するのだ。予算は金貨25枚まで。となると買える本は5冊・・・
ちなみに上級はもっと高いらしいのだがこのお店には置いていない。と言うよりも、危険度が高い為、国が管理している。
今持っている攻撃魔法は火魔法と風魔法、氷魔法の初級だ。
攻撃以外は、支援魔法で、対物と対魔法を持っている。
悩む・・・どうしよう~~~・・・中級の攻撃魔法は増えれば戦闘が楽になるんじゃ無いかなぁ・・・
と頭を抱えていると、魔法屋のおばあさんが話しかけてくる。
「何をそんなに悩んでるんだい?」
「いえ、中級魔法を揃えようと思ったんですけど、攻撃にしようか支援にしようか悩み中です・・・」
「それは困ったねぇ・・・だけどあなたは何の為に魔法を使いたいんだい?」
「え?それは・・・」
皆を支援する為に他ならない。魔法の種類に翻弄されて、そんな当たり前のことに気付けなかった。
支援の仕方は色々ある。遠方から初手で攻撃魔法、接近戦になれば前衛への支援魔法。そのどちらもバランス良く扱えなければ意味が無い。
本当に魔法が使える異世界に来て、少し舞い上がっていたかもしれない。攻撃魔法に魅力を感じてしまったのもそれが理由だ。
「ん~・・・決めました!」
「どれにするね?」
「これと、これと、これにしますっ!」
そう言って、魔法屋のおばあさんに持っていった魔法書は、対物・対魔法の支援魔法書各1冊ずつと、火、風、水の中級魔法書だった。
本当は氷魔法も欲しかったが、それはまたお金が貯まってからにしようと決心する。
さて、次の冒険までにこの5冊の魔法書を読破しなければ!しっかり中級魔法をマスターして皆をビックリさせるんだ♪
そして、小さな妖精は魔法鞄に5冊の中級魔法書を詰め込み、パタパタと店を後にする。
エイナルは盗賊ギルドを探していた。
冒険者をしていれば裏情報も必要になることは必然だ。冒険者として活動していたのだから盗賊ギルドに顔を出したこともあるはずだが、そこは本人の知らない所である。
ただ何度かTRPGの中でも盗賊ギルドには、情報収集の為に訪れたことになっている。と言うことは顔は知られているはずだ。
こうなるとカンを頼るほか無い・・・裏路地を歩いていると、浮浪者らしき人物が酒瓶を抱えて眠っていた。何故だろう、何か引っかかる・・・エイナルは浮浪者に近づいた。すると声を掛けられる。
「おう!兄ちゃん!酒おごってくれよ!」
「・・・」
無言でいる間もエイナルの頭の中ではこの浮浪者は盗賊ギルドの関係者だと警鐘を鳴らしている。
エイナルは無言でチップを渡す。そして小声で、
「盗賊ギルドへ行きたい。」
と、囁いた。これは一か八かの賭けだった。
するとその浮浪者は、
「久しぶりだなエイナルこっちだ付いて来い」
小声で返してきた。
どうやら正解だったようだ。そしてその浮浪者は、
「兄ちゃんが奢ってくれるなら取って置きがあるぜ~」
と言って肩を抱いて誘導していく。
連れて行かれたのはとてもそこには店があるとは思えない場所。裏路地も裏路地、全方角から光も差しもまないような場所だった。合い言葉を送ると扉が開く。
中に入ると酒や薬の臭いだろうか?何とも言えない臭いが隠っていた。
奥のテーブルに一人の男が左右に女を抱えて座っていた。
「一週間ぶりか?良い稼ぎには為ったのか?」
ギルドマスターだろう。
「道中で潜りの山賊に出くわした。」
そう言って、金貨30枚が入った袋をギルドマスターに渡す。
ギルドマスターは中身を確認して、
「何か欲しい情報とかあるのか?」
と聞いてきた。察しが良い。
「うちのパーティのリーダーが地図をほしがってた。世界地図があれば御の字だが、無ければこの国の地図でも良い。」
「世界地図は無理だがルステーゼ王国とその周辺の地図なら用意してやる。」
「助かる。」
「地図を手に入れて何をやらかす気だ?お前んとこのリーダーは?」
「俺も詳しいことは解らんな・・・」
「まあ、ここじゃ詮索はしないってルールがあるから、これ以上は聞かねえよ。」
「悪いな・・・」
脇に控えていた女が羊皮紙に書かれた地図を持ってきた。
「ほれ、これがそうだ。」
その地図を受け取り引き上げようとすると、ギルドマスターは引き留める。
「ここに来て酒の一杯も飲まないのは、どうかと思うぜ?」
そう言って、コップに並々注がれた酒をエイナルによこす。
エイナルはその酒を一気にあおると、その場を後にした。
盗賊ギルドを後にして暫く歩いた場所でエイナルはフラフラになっていた。
「俺、酒飲めねえんだよ・・・」
言うまでも無く「鹿の角亭」に直行するエイナルだった・・・




