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魔王様の紹介で竜王様にお会いする

 キュリーシアからの連絡で、俺達は急遽王城へ向かう事になった。馬車で王城に乗り付けると、入り口でキュリーシアが待っていてくれた。


「皆さんこちらです。」


 少し慌てている感じがするが、竜王って怖いんだろうか?


「待たせて済まんな。しかし何でまた竜王が、ワシ等に会いたいと言うのか、さっぱり解らん。」


「父の快気祝いに竜王様が要らしたのですが、そこで、『魔王領の救世主』の称号を与えた冒険者がいるという話題になりまして・・・。」


「それで会ってみたいと?」


「それだけでは無いようです。何か相談事があったみたいで・・・。」


「相談事?また厄介ごとで無ければ良いのだが・・・。」


「そればっかりは、会って話をしてみない事には何とも・・・。」


 キュリーシアも、苦笑いをするのが精一杯のようだった。そして、魔王と竜王がいる部屋の前まで到着すると、


「お父様、ヨーン様達をお連れしました。」


 そう言って部屋からの返事を待った。


「そうか、中へお通ししてくれ。」


 魔王がそう言って俺達へ部屋に入るように促した。中に入ると、そこには魔王と、竜の顔に人の姿をした人物が二人で酒を酌み交わしていた。


「今日は急な呼び出しにもかかわらず、良く参られた。折角なので、なかなか表に顔を出さない竜王殿が、ワシの快気祝いに参ったので、是非紹介したいと思ってな。」


 魔王がそう言って竜王を紹介した。竜の顔なので男か女か解らなかったが、立派な角を持ったその姿は、流石竜王を名乗るだけの事はあると思わせるだけの貫禄を見せている。


「おおっ!そなた達が、魔王や魔王領を救ったという、『魔王領の救世主』殿達か?ギュレイドスが言う事を信じられ無かったがなるほど、人族とは思えぬオーラを感じるぞ?人族としての限界を超えておるな?」


「『魔王領の救世主』と言うのは恥ずかしいので、表立って言わないで貰えるだろうか・・・。」


 俺達が竜王からの言葉に身もだえていると、


 そう言った竜王がおもむろに立ち上がり、こっちに歩み寄ってきた。何やら値踏みされているようだ。しかし、俺の意識は竜王の立派な角に気が行ってしまう・・・。


 俺の目の前まで来ると、突然俺に向かって拳を振るってきた。強烈な一撃だ。しかし俺はその拳を躱す。すると第二撃が飛んでくる。それも手の甲を使って、いなしてみせる。そんな組み手みたいな事を数手繰り返していると、魔王が、


「竜王は、強い者に目が無くてな。ほんの挨拶代わりだと思ってくれ。」


 はた迷惑な!と思いつつもこちらも応戦する事にした。そして組み手を5分ほど交わした後に、竜王は満足したように、拳と拳が交差したままの状態の至近距離から、


「人族で私の拳をここまで受け止めるとは大したものよ。」


 そう賞賛の言葉を述べてくれたのだった。


「いやいや、この竜王様の攻撃の重さは流石ですな・・・ワシで無ければ受け止める事は出来なかったでしょう・・・。しかし竜王様の角は立派な者ですな・・・。」


 そう言ってスッと、先ほどから気になっていた竜王の角に、俺は無遠慮に触れてしまった。すると竜王の口から思いも寄らぬセリフが聞こえてきた。


「ひゃんっ!」


 その声を聞いた瞬間、俺は竜王の角に触れていた手を離してしまった。すると竜王は、腰が砕けたようにその場にへたり込んでしまったのだ。


 キュリーシアや魔王からの口からは、


「「あっっ!!」」


 と言う驚きの声とともに、口をポカンと開けた姿が目に入る。俺は何かやってはいけない事をしてしまったのだろうか?自然と不安になってきた。


「ワシは何かしてはいけない事をしてしまったのか!?」


 するとキュリーシアは、


「異性がその相手の竜の角に触れると言う事は、求婚を意味しているのです。」


 それに加えて魔王からも、


「そして、自身の角を触らせると言う事は、その求婚を受け入れるという意思表示になる。しかし、竜王は今まで誰一人として求婚を受け入れなかったし、まして竜王の角を触る事の出来るものはおらんかった。それをこうもあっさりと触れてしまうとは・・・。」


 ・・・と言う事は・・・、俺は竜王に求婚をして、竜王はその求婚を受け入れたと言う事になるというのか!?


 俺の全身から汗がどっと噴き出してきた!


 俺は助けを求めようと仲間達に顔を向けたが、皆明後日の方向を向いて気付かないふりをしている・・・。


 毎度の事ながらこういう時、俺の仲間は頼りにならない!


 メイドゴーレム達も流石にどうしたモノかと、オロオロするばかりだ。


 俺はどうしたモノかと頭を抱える事になったのだが、まずは謝罪をしなければと思い、へたり込んでしまった竜王に目をやった。


 するとそこには先ほどまでの竜の顔をした竜王では無く、一人の美女がへたり込んでいた。


 年の頃は25歳位で黒い髪は腰まで伸び、その一本一本が絹のようにきめ細やかだ。先ほどまでの雰囲気とは全く違って見えた。


 服装も替わっている。今の姿は女性らしい和服に似た服装だった。きっと変身能力によるものだろう。全体的に細いラインが印象的だった。


 しかし、額に見える角がある事からも、同一人物である事は間違いない。


「竜王殿、申し訳ない。竜族のしきたりを知らず、不用意に角に触れてしまった事に謝罪させて欲しい。」


 すると竜王は、若干声を震わせながらも返事をしてきた。


「いえ、油断していたとは言え、私の角に触れる事が出来たのは、過去においてもヨーン様以外にありません・・・ここは竜族のしきたりに則り、ヨーン様を受け入れたく存じます・・・。」


 だぁ~っ!!こっちの話を聞いてねえっ!何とかこのピンチを切り抜けねば!


「イヤしかし、ワシはドワーフ、竜王殿は竜族。種族の壁があるのでは無いか?」


「私の事はティニエとお呼び下さい・・・。旦那様・・・。種族の壁など竜族には関係ありません・・・。」


 『きゃっ!』っと両手を頬に当て顔を染めながらクネクネしている竜王・・・。


 その姿に可愛いと、少しだけ思ってしまったのは勘弁願いたい。しかし参ったな・・・。このまま受け入れるわけには行かないし。


 それに受け入れたとして、子供なんて種族が違うのに出来るものだろうか?


 ・・・ヤバい俺も考えが受け入れる方向に傾き始めている!?


 俺は今までに無いほど頭をフル回転させていていたが、良い案が思いつかない!こういう時こそのニーニャ様!!


 と思ってニーニャを探すが、どこかに隠れてしまっているようだ。さしずめエステルのフードの中だろう・・・


 何かこの場を有耶無耶に出来る事が起こらない者だろうか・・・。


 そんな事を考えていたら、城内が騒がしくなってきた。キュリーシアが確認のため部屋を離れた。


 暫くして戻って来ると、血相を変えていた。


「ヨーン様、冒険者ギルドからの報告ですが、今都に向けて野生のワイバーンが向かっているそうです!ワイバーンが都に入る前に迎撃しないと都が火の海になってしまいます!


 俺は内心よしっ!と思いつつも冷静を装って、


「解った。皆このまま出られるな?それで、どちらの方角から向かってきている?」


「北の方角からです。中央の湖を通過中との事でした。」


「ならば丁度良い。城の裏側であるならば都に入る前に落としてしまおう!」


 そう言って城の更に北側に陣取りワイバーンの出現を待った。ワイバーンは予想通り中央の湖を通過し真っ直ぐ都を目指していた。


 しかし高い場所を飛んでいる。このままではこちらの攻撃が届かない。俺は、エステルにファイヤーアロー、エリックに火の上位精霊の召喚を頼む。


 とにかく地面に落とさなければならない。ワイバーンのサイズはかなり大きかった。翼を広げた状態でざっと20mはあろうか?


 視認出来る位置まで接近した所で、エステルのファイヤーアローが炸裂した。エステルのファイヤーアローは狙い違わずワイバーンの両翼を貫いて、その揚力を失わせ墜落させる事に成功させた。


 ワイバーンの攻撃の怖い所は炎、かぎ爪、尻尾の攻撃だ。俺達はまず両翼に取り付きかぎ爪を破壊していく。その間にガトーショコラが大鎌で尻尾を切断してしまった。


 ヘンリク、エクレアは正面から炎を吐かせないために攻撃を加えていく。最後は俺のバトルアックスで首を両断して戦闘終了だ。


 胴体に傷を付けないのは、冒険者ギルドで素材にする為の価値を下げないためだ。暫くすると、冒険者ギルドの担当者がやってきて、台車で死体を運んでいくだろう。


 そこまでの段取りを済ませて行くと、場違いな声が聞こえてきた。


「はあ~・・・流石は旦那様・・・その手際の良さは、戦いに慣れたものにしか出来ぬもの・・・。」


 ぐっ・・・参ったな・・・すっかり自分の世界に入ってしまっている・・・。


 取りあえず部屋に戻ったのだが、流石の魔王もどうしたモノかと言葉を濁すばかりだった。そこに助け船がでたのが、以外にもブリットだった。


「ところで、竜王様は私たちをただ見たくて城に呼んだ訳なの?」


 そこで俺も流石にハッとなった。きっと俺達をわざわざ呼び出すほどなのだ。何か用件が他にもあったはずだ。


 ポ~っとしていた竜王も何かを思い出したように、正気に戻ったのだった。


「そうでした!実は1つ調査をお願いしたかったのです。」


「調査とは?」


「竜の住む山脈で起こる奇病の調査です。成人前の子供が徐々に竜の鱗に覆われて最後は自身の鱗の強度に耐えられず死亡してしまうのです。」


「竜に変身出来ない内に、急に鱗が出てきてしまうと言う事かの?」


「はい。100年ほど前からこの奇病が発生し始めたのですが、今では3人に2人がこの奇病に掛かり、命を落としてしまいます。このままでは竜の一族は死に絶えてしまいます。」


「何かその奇病について解っている事など無いのかの?」


「いえ。残念ながら・・・一度村に来て貰って、その様を見て貰った方が解りやすいかと思います。」


 その話を聞いて俺は皆と相談する。竜族と聞くと、トトとリリを思い出してしまう。あの子達もこの奇病にかかる恐れがあるとしたら、放っておく訳にも行くまい。


「さて、皆この依頼引き受けるかどうするか?」


「聞くまでも無いでしょ?トト君とリリちゃんも無関係とは言えないかも知れないんだし。放ってはおけないよ!」


 ブリットは受ける方向で話を進めるべきだと提案した。俺と思っている事は同じようだ。他のメンバーも同意した。


「マスターが行くのであれば、我々メイドゴーレムも同行致します!」


 と言ってきたのは、長女のエクレアだった。結局はいつものメンツだ。


「解った。支度を済ませたら、竜王の村に向かうとしよう。ワシ等は馬車で向かわせて貰う。」


「流石は旦那様ですわ!先に村でお待ちしております。」


 もう、彼女の中では俺は旦那扱いか・・・。取りあえずそこはスルーして、竜王の村へ向かう準備を進める事にした。


 はあ・・・前途多難だ・・・。

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