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世界の統合とその後・・・②

 こうして俺達は一端カヌレ博士の研究所へ引きこもる事にした。そこでやらなければならない事が山積していた。


 まず、メイドゴーレム達のメンテナンスだ。今回精霊王の欠片を取り込んだ事による動力炉への負担が思いの外軽微だった為、メンテナンスに入れば元に戻る可能性があるという話が持ち上がったからだ。


 メンテナンスは無事完了した。動力炉も元に戻った。メイドゴーレム達も安心したようだ。


 メンテナンスをしていた間にも、各遺跡で獲得した宝箱の選別を行った。エステルの鑑定の魔法を使い、宝箱の中身をリストアップしていった。


 そして古代魔法大国期の金貨や宝石、魔法の武具、マジックアイテムなどを選別し、要らない物は宝箱へ戻して、冒険者ギルド本部へ持っていくようにした。


 魔法の武具は珍しい物も有ったが今使っている武具の方が格段に性能が上と判断して全てお蔵行きとなった。その内、素材として使わせて貰う事になるだろう。


 その中でも使えそうなマジックアイテムは残しておく。


 特段目に付いたのは、遠話の魔法が付与されたバッジ、瞬足のブーツ、必中の腕輪、重量制限の無い魔法鞄、姿隠しのマント、魔力充填の指輪、飛行マントなど。


 その他にも、防寒防暖マント、魔法のログハウス(中は2階建て、6人部屋の3LDKなのに、外からの見た目は大型のテントで自動展開収納付き)と言った色んなマジックアイテムを発掘した。


 今までの魔法のテントや魔法のランプ、魔法のナイフ、魔法の水嚢、魔法の食器などもあったが、これらも追加で保管する事にした。


 必要ない物と古代魔法大国期のお金と宝石だけを分別した宝箱を、俺の新しい魔法鞄に保管をした。この作業をするだけでも1週間以上掛かってしまった。


 その間にメイドゴーレム達のメンテナンスも終わり、エステルとメイドゴーレム達の協力のもと、転移ポータルの作成が始まった。これは1辺1.5m四方の石版に転移ポータルの魔法陣を埋め込んでいく作業だ。溝には魔石を溶かした液体を流し込んで完成だ。2枚の石版で1組となる。それをもうひと組、少し手を加えた物も作成しておく。


 エステルはこれ以外にも、俺達がどこからでもこの研究所へ来る事が出来るようにと、指輪や腕輪型の一方通行型の転移ポータルまで作り上げてくれた。ここまでの事が出来るのかと驚いていると、


「ここの施設を使えば大抵の事は出来てしまう。」


 との事だった。ただし、エステルが発案して、実際に工房を使って作るのはメイドゴーレムである事は言うまでも無い。


 1ヶ月後、カヌレ博士の研究所でやるべき事が終わり、俺達はまた王都へ戻った。さて、何処まで話が進んでいるのやら・・・。


 冒険者ギルド本部へ顔を出すと、ちょうどマーリンが受付の所にいた。そしてキュリーシアもそのマーリンと話をしている所だった。


「そっちの話は捗っているか?」


 俺はそう言って進捗を訪ねた。すると俺達に気付いた二人は、


「あ!ヨーンさんに皆さん、お久しぶりです!」


「ふぅ~・・・やっと戻って来たかい・・・。」


 それぞれ反応が異なっていた。話を聞くと、冒険者ギルド魔王領支部の設立の準備は整ったらしい。


 あとは転移ポータルの設置のみの段階だという。文化交流使節団の段取りも整っているとの事だった。


 まず最初は、どちらにも存在する、亜人や獣人から交流を始めようと言う事になったらしい。


 そして、文化交流使節団は冒険者ギルドに所属する者として、その管理を冒険者ギルド本部が行うそうだ。


 そう言う事ならばと、早速転移ポータルの設置を行った。試運転も問題なく稼働する事を確認し、こちらの役目はこれで終わりだ。


「そうだ!転移ポータルですっかり忘れる所だったわい!遺跡で見付けた宝箱の鑑定を頼む。」


「そりゃあまた急だね・・・。じゃあ預かるから奥の広間で出して貰えるかい?」


 マーリンがそう言うと、俺は宝箱を6つ魔法鞄から取り出した。


「なあぁっ!こんなにあるのかい!?」


「なあに、中身は確認済みじゃ。その中にある物は全て、ワシ等には要らん物だ。全て換金で頼むわい。」


「・・・危険な物とかは無かっただろうね?」


「そう言うのはそっちの宝箱に入れてある。正直言って今のワシ等の装備の方が充実しておるわ。」


「・・・言ってくれるね・・・解った。数日中には鑑定して査定額を出すよ。」


「よろしく頼む。」


「あと、キュリーシア、少し時間はあるか?」


「?なんでしょう?」


 急に話を振られて、何が何やらと言った表情だったが、マーリンの見えない場所へ誘導した。


「さっきの転移ポータルとは別に、キュリーシア用の転移ポータルを用意した。それを使えばカヌレ博士の研究所に行き来出来るようになる。それとこれも・・・。」


 そう言って、バッジと指輪を渡した。キュリーシアがそれらを受け取ると、バッジから、


「やっほ~っ!キュリーシア、聞こえてる?」


 と言う声が聞こえてきた。声の主はブリットだ。それに驚いたキュリーシアはそれらを取り溢しそうになったが、慌てて受け止め直した。


「こ・・・これは一体!?」


「これは遠話の魔法の施されたバッジだ。任意の相手と会話が出来る。試しにブリットをイメージして、そのバッジに話掛けてみると良い。」


「あ・・・あの・・・ブリットさん?」


「お!繋がったねぇ~。これからはどこからでも会話が出来るよ~」


「それとこの指輪だが、これはカヌレ博士の研究所へ行く事が出来る指輪じゃ。一方通行だから気を付けて使ってくれ。」


 そう言って使い方を説明した。一通りの使い方を説明し終わると、マーリンが顔を出した。


「おや?さっきブリットが居なかったかい?」


「気のせいだろう?それよりなんだ?」


 まさか聞こえていたとは・・・そこは惚けて話の先を促した。


「ああ、言い忘れてたんだけどね、今回の『テーブルトーク同好会』の活躍に対して国が勲章と爵位を与えると言ってきてるんだよ・・・。」


「はぁ?一介の冒険者にそこまでするって意味が解らん!」


「いや何そこは・・・あの件だよ、あの件。地位を与えて取り込もうって腹なんだよ。」


 ああ、なるほど、王家が魔法王国の末裔では無いという話を、有耶無耶にさせたいという訳か・・・


「誰にも話す気も無いし、誰かに話した所で誰も信じまい。勲章も爵位も要らんと言っといてくれ。」


「そういう訳にはいかんだろう・・・。王家としては、何か目に見える形で安心が欲しいんだろうさ。」


「やれやれ・・・なら、勲章や爵位以外で王家に任せるとでも言っておいてくれ。」


「なら一層の事、邸宅でも貰ったら良いじゃ無いか?」


「ワシ等は冒険者だぞ?何時戻るか解らん家の管理を誰がする?」


「だからさ。その管理を含めて貰っちまうのさ。そうすれば王家としても安心だろう?」


 あまりの突飛の無さに呆れてしまったが、それで王家が納得するのであれば構わないか?どうせ使う事も無いだろうし・・・。


「解った。その方向で話しておいてくれて構わない。しかし面倒な事になったのう・・・。」


「まあ、旨く話はしておいてやるよ。」


 そんな会話を残して、キュリーシアも用件が済んだと言う事から一緒に冒険者ギルド本部を後にした。宿に戻るとブリットが、


「さっきの凄かったでしょ!?」


 と言って遠話の魔法の効果の感想を聞いてきた。


「この魔法は素晴らしいですね!皆さんの分もあるんですか?」


「ああ、皆付けている。音量の調節が出来ないのが難点だがな・・・。」


 その後、マーリンから勲章と爵位の件を断った事などを皆に報告した。するとキュリーシアの顔色が優れない。


「キュリーシア、さっきから顔色が優れないようだが具合でも悪いのか?」


 するとキュリーシアは困ったような顔をして、


「いえ、実は魔王領の方でも、ヨーンさん達に勲章と領地を与えたいと言う話が出ていまして・・・。」


「そりゃあ・・・キュリーシアの顔色が優れなくなるのも、もっともだね・・・」


 ブリットは「あちゃぁ~!」と言って天を仰いだ。


「魔王領をこちらに戻した功績もありますが、父の病気も完治する切っ掛けを与えて下さった恩があると言っていて・・・。」


「ルステーゼ国王のように、裏も無く評価してくれる事は、確かに嬉しい事だが我々も冒険者としてその地に留まっている事もそうそう無いだろうしなあ・・・。」


 そうは言う物の、キュリーシアの事を考えると、俺の歯切れも悪くなってしまう。するとキュリーシアは、


「先ほどのルステーゼ王国のように、領土では無く、屋敷を管理込みで受けて頂くと言う事は出来ないでしょうか?父も言いだした以上、引っ込みが付かなくなってしまうでしょうし・・・。」


「あっ!それなら私たちの馬車も預かって貰おうよ?カヌレ博士の研究所だと、馬を管理する場所も無いでしょ?もし預かって貰えればこっちとしても助かるんじゃ無い?」


 確かに馬の管理はいつも、宿屋の親父さんにお金を払ってやって貰っている。馬も落ち着ける場所があった方が良いのか?


 これからは魔王領を拠点にする事もあるだろうし、ルステーゼ王国と魔王領の両方に拠点があるのは良いのかも知れない・・・。


「解った。もしそれで魔王様に納得して貰えるのであれば受けようと思うがどうだろうか?」


 俺は、キュリーシアを含めた皆に確認を取る。


「「「「「「異議無し!」」」」」」


「ありがとうございます。では早速父にその旨を報告しに行ってきます!」


「あっ!チョット待ってくれ。今から魔王領へ向かうのか?」


「え?はい。少しでも早いほうが良いと思いまして・・・。」


 なら、もうひと仕事を済ませようかと思った。


「なら、皆で魔王領に行かないか?」


 そう言って皆に合図を送る。


「あ!良いねえ~!私も行きたい。」


 皆も同調する。


「?それは構いませんけど、急にどうしたんですか?」


「魔王領も久しぶりだからな。あの雰囲気をまた感じたいんだ。」


 俺はそう言ってとぼけて見せた。


「では、ゲートを使って向かいましょう。」


 キュリーシアはそう言うと、ゲートを使って直接城に繋げたのだった。城内に入ってすぐに俺はキュリーシアに訪ねる事にした。


「キュリーシア、さっき話していた転移ポータルの事だが何処に設置するのが良いかの?」


 そう言って俺は魔法鞄から、1枚の1辺1.5mの石版を取り出した。


「これって、カヌレ博士の研究所へ繋がるという?」


「そうだ。これは、『テーブルトーク同好会』専用いわばキュリーシアのための転移ポータルと言う訳だ。」


 キュリーシアは目を見開いて驚いていたが、すぐに我に返り、それならばとキュリーシアが一番のお気に入りと言っていた、城の3階の部屋へと通してくれた。


 夕日が綺麗に城下町を照らす部屋だ。


「この部屋にお願いします!」


 俺はキュリーシアの要望通り、その部屋の片隅に転移ポータルを設置した。


 設置し終わって、ルステーゼ王国に戻ろうとした所をクシュラーデに捕まった。


「ヨーン様!少々お待ち下さい!魔王様が是非お会いしたいと申しております!」


 しまった!と思ったがもう遅い。仕方が無く、魔王様にお目にかかる事になってしまった。


 謁見の間に通された俺達は、初めて魔王様に会う事になった。その風貌はまだ完全とは言いがたく痩せているように感じられたが、眼光は鋭く覇気は十分といった感じだ。


「ヨーン殿一行には娘キュリーシアや魔王領だけで無く、我が身まで助けて貰い感謝しても仕切れぬ恩がある。ワシは、ヨーン殿達に領土の割譲と階位をと考えておったのだが、娘にヨーン殿はそれは受け取れぬと聞いた。代わりとして、この地で暮らすための屋敷と、馬の世話が出来るだけの物で良いと言われた。本当にそれで良いのか?」


 魔王様はもっと欲を言っても良い、と言ってくれているようだが、俺達にとってはそれでも十分すぎるほどだ。


「魔王様に申し上げる。ワシ達は冒険者。一度冒険に出掛けるとひと月やふた月戻らぬ事もある。そんなワシ等が領土を頂いても運営もまま為りませんでしょう。それなら、今話のあった通り、皆が住める屋敷と、馬と馬車の管理が出来る場所を提供頂けるだけで十分。」


 俺がそう言うと、何か納得したように頷いた。


「相い解った!ヨーン殿一行には此度の働きに対し、屋敷と馬車の世話の出来る土地、その管理をする者を譲る物とする!それともう一つ・・・ヨーン殿一行には称号を与えたい。」


 えっ!?と思って言葉を遮ろうとしたが、もう遅かった・・・。


「ヨーン殿一行には、『魔王領の救世主』の称号を与えるものとする!!」


 魔王様から高らかに宣言されてしまった。『探索者』の称号に加え、魔王領でも称号を授かるとは思いも寄らなかった・・・。


 もう深く考えるのはよそう・・・。


 後で解った事だが、分け与えられた土地の場所は城下町の東の外れにあり、冒険者ギルド魔王領支部のすぐ近くだった。


 この土地の広さがチョットした神社ほどの広さがあった。馬場で流鏑馬が出来るほどだ。広いにも程があった・・・。管理は城内の人がしてくれるというので、後はお任せする事にした。当然、カヌレ博士の研究所へ行く転移ポータルの設置も忘れていない。



 王都ルステーゼに戻ってみると、こちらも冒険者ギルド本部のギルドマスターマーリンの計らいで、勲章と爵位の授与は免れる事は出来たのだが、後日用意された屋敷が予想を超えて大きかった・・・。


 広大な庭園に佇む屋敷・・・部屋の数を数えたら、30部屋を超えた所で数えるのを諦めたほどだ。しかも場所も貴族街の一等地にあった。冒険者が彷徨くには場違いにも程がある・・・。管理は王宮で行うというのだ。後は任せる事にしよう・・・。


 この屋敷にも、カヌレ博士の研究所へ繋がる、転移ポータルの設置は抜かりなくやっておいた。無駄に広い屋敷に家具などもしっかり用意されていたが、顔を出すのは、どれほどのものだろう?受け取った俺達の気が引けてしまった。


 最後の最後で、有り難迷惑なご褒美を頂いたのだったが、これで世界の滅亡に関する事件は一応の決着は付いた事になるのだろう。


 まだまだ、魔王領と他の世界との関係など残る問題もあるが、俺達はルステーゼ王国と魔王領を隔てる北の山脈へ、カヌレ博士の研究所と魔法王国を移動させて、しばらくの間、人族では手に負えないような危険な魔物の監視をする事にした。アフターケアみたいなモノと考えて貰えれば良い。


 山脈を越えようとした場合はそれらを駆逐するボランティア作業みたいなものだ。人族でも対処出来そうな魔物はもちろん放置だ。人族の冒険者のレベルアップに繋げて貰いたい・・・。


 まだしばらくは、俺達の冒険は続きそうだ。



 後日談だが、カヌレ博士の研究所に居た俺達に、キュリーシアから連絡が入った。


「ヨーンさんっ!冒険者カードに載っている所持金額が、凄い事になってますっ!!」


 そりゃそうだ。冒険者ギルド本部に鑑定して貰った宝箱を、全て換金して7人で均等分配したのだから、ひと財産になった事だろう。


「それはキュリーシアの取り分だ。自由に使ってくれ。」


「ヒエエェェェッッ!!」


 そのあまりの金額の多さに、キュリーシアの悲鳴が聞こえたが、聞かなかった事にした。

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