世界の統合とその後・・・①
キュリーシアが魔王領へ戻っている時、俺は皆に1つの提案をした。
「皆に1つ提案があるのだが・・・」
そう言って皆にその提案を伝えた。するとブリットは、
「それ良いっ!きっとキュリーシアも喜ぶよ!」
そう言って賛成してくれた。
どちらにしても、まだ冒険者ギルド本部とは、色々と話をしなければならないだろう。
一応、こちらの依頼は全て達成してはいるのだが、アフターケアは必要と思われる。
特に、魔王領に冒険者ギルドを設置するとなると、橋渡し役も必要となってくるだろう。
その辺の段取りをエステルとも話を済ませておく。今日は冒険者ギルド本部に行っても、マーリンは王宮に行っているはずなので、会う事は出来ない。
一息ついた今だからこそ、他にも色々と、考えていかなければならない事があった。
特に過去の遺産である、カヌレ博士の研究所と魔法王国の取り扱いだ。
そちらにしてもこの2カ所に立ち入る事が出来るのは、今のところ俺達『テーブルトーク同好会』のメンバーのみとなる。
許可を出せば入れる事は出来るだろうが、許可を出す気は一切無い。
どちらかと言えば、カヌレ博士の研究所は俺達の拠点として使いたいと思っているぐらいだ。
暫く物思いに耽っていると、体調を取り戻したメイドゴーレム達が、部屋から出てきた。
「体調の方は大丈夫か?今日一日休んでいても良いのだぞ?」
すると、エクレアが、
「いえ、ご心配をおかけしましたが、体調は回復致しました。」
と、心配無用と断言した。
「そうか、で、やはりカヌレ博士の伝言の通り、今の皆は我々と等倍のレベルとみた方が良いのかな?」
俺が、そう訪ねると、
「いえ、エリック様のアドバイスのお陰でしょうか、動力炉への負担が少なかったようで、私たちの出力は1.3倍程度に抑えるに留まっております。しかしメンテナンス次第では、元の力も戻るのでは無いかと思います。」
俺がエクレアのその発言を聞いて、エリックの方を振り向くと照れたように、
「ボクはただ、皆の動力炉への負担が少しでも軽減されればと思って、アドバイスをしただけです。まさかこんな副次効果を得られるとは想定外でしたが。」
そう言って頭の裏を掻いて、本当に予想外といった表現をしていた。
それでも良い事だ。それだけ彼女たちにとっても、存在価値が大幅に向上したと自信を持って貰えるのだから。
メイドゴーレム達も降りてきた所で、時間もちょうど夕食時となっていたので、そのまま夕食を取る事にした。
キュリーシアは一時的にではあるが魔王領へ戻ってしまったが、それでもひと仕事終えた後の打ち上げと、メイドゴーレム達への労いを兼ねて盛大に行う事にした。
キュリーシアが戻って来たら、また打ち上げをすれば良いだけの事だ。
いつもより多い料理を注文し、思い思いの飲み物を片手に持った所で、俺が音頭を取った。
「では、僭越ながら、今回の依頼の達成の成功を祝して・・・かんぱいっ!!」
「「「「「かんぱいっっ!!」」」」」
大仕事を終えた時のイッパイは格別だ!
俺達のした事で世界が救われたなんて事は、ごく一部の人間しか知らない事だろう。
魔王領がこっちの世界に復活した事も、まだ知られるのは当分先の話になるだろう。
そう考えると、魔族が現れたという一報が入ってからの、一連の冒険は貴重な経験となったと思う。
レベルをカンストしてしまったのはやり過ぎだったかも知れないが、まあ、俺達自身が有名でも何でも無ければバレる事も無いだろう・・・。と、信じたい・・・。
明日の事を気にしなくても良いという気持ちから、その日は夜遅くまで、飲んだくれた。
翌日、普通に目を覚ましたのは、俺だけだったのは言うまでも無い話だ。他の皆は揃って二日酔いだ。メイドゴーレム達が今頃看病している事だろう。
翌日の午前中にキュリーシアは王都ルステーゼへ戻って来たが、皆の有様を見て驚いていた。
「すまんな。昨日、皆飲み過ぎてしまって二日酔いだ。今夜はキュリーシアを含めて打ち上げの第2部だ。覚悟しておけよ?」
俺は冗談交じりにそう言うと、ぐったりしている他のメンバーを見ながら、
「お手柔らかにお願いします・・・。」
と言って、少々引き気味だった。
「ところで魔王領はどうだった?」
俺の冗談は横に置いておいて本題を確認した。
「無事にゲートで都へ入る事が出来ました!皆も喜んでおりました。父も今回の事で皆さんにお礼がしたいと言っています。」
お礼かあ・・・元々奮闘していたのはキュリーシアだった訳だし、俺達はあくまでその手伝いをしただけだ。お礼を言われるような事をした覚えは無い。
「まあ、お礼の事はそんなに気にする事でも無いと思うぞ?今回の最大の功労者はキュリーシアなんだからな?」
「いえ!私一人では成せなかった事に、違いはありません!」
キュリーシアはそう力説する。
「解った。その話はまた追々しよう。ワシは今から冒険者ギルドへ言ってくる。すまんが皆の事を頼んでも良いか?」
「あ、はい。解りました。」
キュリーシアは素直にそう返事をしてくれた。俺はチョコロールを連れて冒険者ギルド本部へ向かった。
「あ!ヨーンさんですね。少々お待ち下さい。」
既にここの受付嬢さんとも顔なじみになってしまったようだ。よほどレベル100にインパクトがあったのだろう。
少し待つと、マーリンがやってきた。
「昨日はお疲れだったな・・・。」
「あの後が大変だったみたいだけどね・・・。」
反乱の件だろう。昨日はきっと徹夜で取り調べをしていたに違いない。
「首謀者は解ったのか?」
「その辺は向こうがやってるから任せておけば良い。解らなかったじゃ国の沽券に関わるから必ず白状させるさね。」
「まあ、それは良いとして、昨日魔王領がゲートで繋がった事を、キュリーシア王女が確認した。今日戻って来て報告を受けたが、冒険者ギルドとしては、魔王領へ支部の設置はするのか?」
「一応その予定でいるよ。」
「そうなると、転移ポータルの準備が必要になるな・・・。その辺の準備とかは、どうするつもりだ?」
「・・・頼りにしてるよ。」
「やっぱりそうなるか・・・。まあ、そうなると思ってこっちもエステルには確認してある。準備には時間が必要だから日程が決まったら教えて欲しい。それと1つ頼みがあるのだが・・・」
そう言って、マーリンに1つ頼み事をした。
「ふ~ん・・・あんたらも粋な事を考えるね。必要な書類があるから、それとなく書き込んで貰うようにしてくれるかい?解る範囲だけでも構わないんだが?」
そして、俺に一通の用紙を渡してきた。解る範囲で良いのであれば、ここで書く事も出来る。
サプライズに使いたかったので、こちらで代筆させて貰った。それをマーリンが受け取ると、1枚のカードを持ってきた。
「これに血を一滴垂らせば完成だよ。」
「無理言ってすまんな・・・。あ、そう言えば、前回と今回の依頼達成の報酬と経験値を貰わねば為らんな。」
「ああ~・・・そうだったね。それはまた準備しておくよ。」
「じゃあ、よろしく頼む。明日ぐらいには顔を出すから頼むぞ。」
そう言うと、冒険者ギルド本部を後にした。
その日の夜、打ち上げの第2部が開催された。二日酔いメンバーは午前中には回復していたようだったが、今夜も張り切っていた。俺は冒険者ギルド本部から帰ると、皆に今回のサプライズの準備が出来ている事は報告しておいた。
「では!キュリーシアもこっちに戻って来たので、打ち上げの第2部を開催するよ!!と言う訳で・・・かんぱ~~い!!!」
今度の音頭はブリットだ。テンションは既にMAXである。
昨夜の様子が想像出来ないキュリーシアは少々引き気味だったが、今回の旅の苦労話や予想外のハプニング、色んな事を思い出して話をしていく内に、自然と皆と笑い合っていた。
昨夜に引き続き遅くまで語らっていたが、そろそろ閉店の時間となってしまったようだ。名残惜しいが始まりがあれば、終わりも来る。
「あ~あ・・・この冒険が終わったら、キュリーシアはお姫様に戻っちゃうの?」
ブリットはわざとらしくそう聞いてきた。
「・・・そうですね。父も元気になりましたが、姫に戻る・・・そうなりますね・・・。」
キュリーシアは名残惜しそうにそう言った。
「だが、キュリーシアは今回、魔王領の誰よりも冒険者をしておった。それはワシ等が認める所だ。」
そう言うと俺達も、メイドゴーレム達も、キュリーシアを見て頷いた。
「私ももっと皆さんと冒険をしてみたい・・・。」
「キュリーシアよ・・・、言質は取ったぞ。」
「え!?」
「ここに1枚のカードがある。これが何か解るか?」
俺達に同行していたキュリーシアには、そのカードが何なのか解るはずだ。キュリーシアにそのカードを手渡した。
そこには、キュリーシアの名前と種族、パーティ名『テーブルトーク同好会』と書かれていた。レベルや経験値、所持金などは記載されていない。
「もしキュリーシアにその気があれば、このカードに血を一滴垂らすだけじゃ。常にワシ等と同行する必要は無い。ワシ等と仲間だという証明書のような物だ。」
キュリーシアはあまりの事に、事態を飲み込むのに時間が掛かったが、その意味を理解していくとともに、うっすらと瞳に涙を浮かべ頬を紅潮させた。
「はい!私は皆さんのパーティの仲間です!」
そう言うと、迷う事も無くナイフで指先を少し傷付け血を滲ませると、カードに情報を読み取らせた。
カードを拝見すれば、キュリーシアのレベルも見事に100となっていた。あれだけの戦闘を繰り広げたのだ。当然と言えば当然だろう。
「わぁ~!これでキュリーシアも私たちの正式な仲間だね!」
そう言うと、ブリットとエステルがキュリーシアに抱きついていた。
「これからも何かあれば頼ってくれ。それと、キュリーシアが魔族第1号の冒険者になった訳だな。」
俺はわざとニヤリと笑った。その後、慰労会とキュリーシアのメンバー加入のお祝いを兼ねた宴会は、深夜遅くまで続いた。
翌日、報酬の準備が出来たとの連絡が入ったので、皆で冒険者ギルド本部へ向かったのだが、俺以外は全員二日酔いとなっていた。
キュリーシアは初の体験だったらしく、
「うぅっ!こ・・・これが二日酔いという物なのですね・・・」
顔を真っ青にしてフラフラしながら、付いて来る事になった。他のメンバーも同様だったが、体験済みなだけあり、まだ、キュリーシアよりはマシと言った所か・・・。
冒険者ギルド本部に着くと、用件を伝え、冒険者カードを提出する。キュリーシアも当然一緒だ。最初は遠慮していたのだが、ここまで一緒に冒険してきたのだ。その報酬を受け取る権利はあるだろう。
いつもの均等割での報酬の受け取りを選択して、手続きを済ませて行った。その最中、マーリンが顔を出してきた。
「やあ、って、なんだい?皆して青い顔して・・・」
「いや、昨日の晩は派手にやり過ぎてな。皆、二日酔いだ。」
「はははっ!まあ大仕事を終えたんだ。派手に盛り上がったんだね?」
「まあ、そういった所だ・・・。あと、ちょうど良かった。ワシ等は一端カヌレ博士の研究所に戻る事にする。半月からひと月ぐらいは籠もって、ゆっくりするつもりだ。その時、王都と魔王領を繋ぐ転移ポータルなんかも用意する予定だ。承知しておいてくれ。」
「それは良いが、魔王領への対応なんかはどうしたら良いんだい?」
「あっ!それは私が残って対応します。」
青い顔をしながらも、意識はハッキリしているようだ。
手続きも済み、マーリンへの一方的な報告を済ませると俺達は冒険者ギルド本部を後にした。
キュリーシアとも今後の打ち合わせを行った。
冒険者ギルド魔王領支部の開設の手伝い、転移ポータルの用意、文化交流の件など、キュリーシアで無ければ出来ない事ばかりだ。
何か困った事があればカヌレ博士の研究所へ来るように伝えておいた。キュリーシアも『テーブルトーク同好会』の仲間として自由に出入り出来る。




