第10話想定外
第10話月面
夏はコントローラーを両手で2つ足でに2つの4つで宇宙船を懸命に操作している。
「どう?大丈夫そう? 着陸出来る?」
りんごは心配そうに声をかける。
「うっさい黙ってて! アダム! 目標の地点に行けなくても良い?」
「この状況はやむおえないな、許可する」
「ちょっと荒っぽくなるからしっかりつかまっててね」
宇宙船内はグラグラ揺れ出した。
「ここが正念場だ! 夏、頑張れ!」
アダムが夏の肩に手を置いて励ます。
「わかってるから触るな、気が散る!」
宇宙船はもう月の白い地表が見える位置にまで迫っていた。
宇宙船は徐々に速度を落としてはいるがまだまだ安全に着陸出来るスピードではない。
「もう多少の損傷は覚悟で行くしかない!」
夏はそういうと機体を地面に添わすように平行にし、地面に近づいていった。
機体は激しく地面にぶつかり揺れながら土煙りを上げ進んでいく。
船内は人や物やら何やらが飛び交い混沌とした状況になった。 乗組員は全員夏のそばにいた為座席に付いておらず、シートベルトがわりのダイラント流体は役に立たなかった。
夏は側にいた1号に体を座席に押さえつけてもらい、コントローラーを操作して1号がボタンを押し、船内の重力発生装置を切った。
何とか船内は落ち着きを取り戻し、宇宙船は多少の損傷はあったが無事に不事着陸を成功させた。
「死ぬかと思った。 助かったよ、夏」
勇気は重力を制御し、自分の足に下向きの重力を発生させ操縦席まで歩き夏に声をかけた。
「別にあんたの為にやってないから勘違いしないでよね。 まあこんな状態だけどここがあんたが行きたがってた月よ? もっとはしゃいだら?」
夏は座席を回転させて勇気の方に向き直った。
「そうだね、これからの探索を妄想して、興奮しよっかな!」
「気持ち悪!」
「生き甲斐だから許してよ」
「夏!危ない!」
突如として操縦席部分に1m台の岩石のような物が飛んだきた。
夏と向かい合うように外を見ていた勇気は、いち早くその存在に気がつき、夏を押し飛ばし、何とか2人とも岩石を避けた。
岩石はプカプカと重力が軽くなった状態で彷徨っている乗組員達に奇跡的に当たらずに、船の内部に壁を破壊しながら突っ込んでいった。
夏は倒れ込んだ時に頭をぶつけ意識を失っていた。
勇気は上着を脱ぎ丸めて夏の頭の後ろに枕のように置き、重力発生装置のスイッチを押した。
勇気はそのまま、座席を走り抜けてロビーを見渡した。
「こっちは何とか全員無事だ! 俺の所に来ればあの岩石も止めれたんだがな」
アダムは宙に夏と勇気以外の乗組員全員を腕やら肩やらに抱えながらそう言った。
「無事で良かったです!」
「当たり前だろ! 船長だぞ!」
アダムは誇らしげに胸を張ったが状況は非常に良くない。 着陸1日目にして、コックピットは大破し、船内はめちゃくちゃだ。
誰も死ななかっただけ、良かったのかも知れないが。