014話 ココちゃん
「何故だっ!? 何故分かってくれない!!」
「だから、おまえの申し出は断ると……もう何度も何度も言っているではないかっ!!」
俺が、四苦八苦しながらも漸く辿り着いたギルドの目の前で……何してんのよ、こいつらは……?
先程見た顔がそこにいた。一人は男。
2メートルはあろうかという身長に、緑髪のなかなか渋い顔をした30後半と思われる大男だ。
彼は往来のど真ん中だと云うのに、両手を広げて何やら迫力のある大声を張り上げている。
目立ちまくっていることなど、まるで気にしていないようだ。ちょっとは気にしてほしいね。
その大男の眼前には、おそらく俺を突き飛ばした女の人。
一番先に目が行ったのは深紅の髪のポニーテール。次に胸、グッドだ。
思ったよりも端整な顔つきなのだが、彼女の顔の右半分は長い前髪によって隠されていた。
歳はたぶん20代前半かもうちょい上か……。そして彼女も怒鳴り声を上げていた。
おいおい、これは修羅場ってやつか……!!
「もうやめろっ!! 何度言われても結果は同じだ! さっさと帰ってくれっ!!!」
「頼む!! 考え直してくれえええ!!!!!」
頭を下げて懇願する男。体も大きいので迫力が凄い。
が、然し何もこんな公衆の面前で……見ろ、彼女はご立腹のご様子だ。
「い・や・だ!! 何度言ってると思ってる!? あんまり執拗いと警備隊を呼ぶぞ!!」
警備隊ってのは街に勤務してる国の兵隊……まぁ分かり易く言うと警察だ。
もしここで呼ばれたら拘置所とかつれていかれるのかな。これが罪になるのかは知らんが……さぁ、どうする男!!!
「なっ!!! くっ……まだだ、俺はまだ諦めたわけじゃない!!!」
「早く諦めろっ!!!」
「まだだ!! ……大会、今度の大会でお前に勝つことが出来たなら、その時は要件を呑んでもらう!」
「なっ!? 何を勝手に……!!!」
女の方は言い返そうとするが、男は既に後姿を見せて逃走中だ。お気の毒に、彼はまだ諦めていないようだ。
一人残された彼女は、不快を露わにしながらギルドの中へと入っていく。周りの視線も幾らか生温かい感じ。
おっと、そういえばバッジのこと忘れていたな……さっさと返しておこうか。
彼女を見失わない内に、俺は小走りで追いかけて呼び止める。
「あ~、モンモレットさんですか?」
「――む! 誰だ貴様は?」
ものっそい睨みつけられた。とんだトバッチリだ。
「……いえ、ただ通りすがりの者です。これ……拾ったんですけど、貴方の物ですよね?」
そう言って、ギルドバッジを取りだす。それを見て彼女の顔が変わった。
「えっ? ……あれっ? 無い!? 一体いつの間に……ああ、有難う。こんな大事な物を失くすとは、私もまだまだだな」
「お礼は結構、たまたま拾っただけですから……それでは俺はこれで」
多くは語らずに立ち去る俺……どうよ、この俺の紳士的振る舞い。
頭の中では拍手喝采の大嵐。そんなこんなで宿に戻ろうとするが――。
「待て、それでは私の気がすまん。君、名は何と言う?」
「…………あ、秋人です」
有無を言わさず、ビシッと呼び止められた。
い、嫌な予感がする。応えちゃったけど帰っていいかな、俺。
「アキヒト君、か……時間は有るのだろう? ちょっと付き合ってもらおうか」
ば、番長の乗りだっ!? この人は危険であるっ!
「否、俺にも帰りを待つ者が……」
「少しお礼がしたいだけだ。君もここの宿を取っているのだろう?」
「否、だから俺には……え? ちょ……うわわわっ!?」
この人、俺の話を全然聞いてくれない。逃げられないように凄い力で肩を掴まれて連れて行かれる。
「うおっ、ちょっ! ど、どこに行くんですかぁ~~!!」
「お礼だよ。一緒に食事をするだけだ、……ほらっ」
そう言って引き摺られた後、テーブルの椅子に投げ出された。
突然のことに対処できず、俺は鳩尾を強打する。ぐはぁっ!? ……こ、これが人に礼をする態度なのか?
「好きな物を頼んでいいぞ、勿論私の奢りだからな」
物腰は堂々と。信じられない豪傑っぷりである。まずい、ここまで来たら逃げられないぞ?
確かに美人さんと食事できるのは嬉しいのだが……何故だろう、あまり嬉しくないな。身の危険を感じるせいか。
仕方がないので料理を注文する。
夕食にはまだ少し早い時間なので少なめに……。
ディズ一人に食事をさせるわけにはいかない、さらに機嫌が悪くなりそうだからな。
「どうした、アキヒト君? もっと頼んでもいいんだぞ?」
「俺は少食なんです。ああ、それと俺は未成年なんでお酒はちょっと……」
「? 何故だ? 別に誰が飲んでもいいだろう?」
どうやらここは飲酒の法律は無いらしい。
予想はしてたが……ふむ、なら別に問題はないか……ないよな?
そうだ、我慢してばかりでは体に悪い。飲みたいモノは飲む。それでいいじゃないか。
「それでは少し戴きます」
しっかりと返事をしてしまう。……ああ、また好奇心に負けてしまった。
俺って自制心が弱いのかな? ん? また? 前にもこんなことあったっけ?
不可解な自分の言動について考えながら黙ったままでいると、彼女の方から口を開いてくれた。
「……改めて礼を言っておこうか。アキヒト君、バッジを有難う」
綺麗に輝く左目の緑眼。彼女は近くで見るとさらに美人だった。
そんな目でじっと見られると、吸い込まれそうになってしまう。た、耐えろ! これは敵の策略であるっ!?
「ああ、いえ。まぁ今度からは失くさないようにお願いします」
「む、そうだな……そうしよう」
「あっ、そう云う意味ではなく……でも傭兵にとっては大事な物ですからね」
「然し、いつ落したんだろうなぁ。全く気付かなかったよ」
うむむ……やはり彼女は俺を突き飛ばしたことを覚えていないようだ。
俺も怒ってはいないから別に良いけどね。それより、本当に目的はお礼なのか? それだけ気になる。
「……それじゃあ気を取り直して、乾杯!」
「えっ? 乾、杯……?」
なんで乾杯? やっぱりこの人言動が読めないな……っと、早く食事を食べてしまおう。
「さて、アキヒト君はさっきのアレを見たのか?」
さっきのアレ……とはあの修羅場のことかな?
「はい、見てましたよ。なんか大変そうなのに捕まってるみたいですね」
「そう! そうなんだ、聞いてくれるか?」
やたらと感情が籠もった言葉と共に酒を一杯。そして俺が何も言うまでもなく彼女は勝手に喋り出す。
何やら先程の修羅場の顛末を語っているようだが……。肯くしかできない俺に熱心に語るモンモレットさん。
おいおい、もしかして。それを話したいがために俺を食事に誘ったんじゃ……? と云うことは、何、俺は愚痴の聞き役?
「あいつは前から“ココちゃん”を狙っているんだ」
「ココちゃん?」
早く終わってくれないかな、と思いながら返事をする。(結構時間経ってる)
「ああ、私の大事な大事なペット……マルキューイの“ココちゃん”のことだ」
「まるきゅうい? ……って何ですか?」
「……………………えっ?」
彼女は目を限界まで見開く。やば、やらかしちまった。
「マルキューイを知らないのかぁああああああああああああああ!!!!!!!!!」
店内が一時騒然とするくらいには、大声を上げられる。
この時、俺は人が繰り出す声量の本当の恐ろしさを垣間見た。
自らの素行に気付いた彼女は一度皆さんに謝る。(ごめん、意外だった)
そしてその後、彼女がマルキューイをどれだけ愛しているのかを俺に説明してくれた。
女性に人気のアイドルペット。丸いボールのような外見にぷにぷにの質感が堪らない、愛くるしさ満点の小動物。
さらに女性に愛され続けているペット部門の第1位に君臨する、無敵のアイドルペットである。
世界最弱、最愛の癒されキャラで、その姿を見た者は意識を奪い去られて魅了されてしまうという。(言い伝えがあるらしい)
気性は穏やかで臆病、然しそのため野生のマルキューイは絶滅寸前で珍しい。(しかも雌雄同体だ)
なので、人々が愛しているのは人工繁殖されたマルキューイたち。通称ジンマル。(人工のマルキューイの略)
人工と野生で何が違うのかと云うと、野生は体色を変えられるらしい。彼らの呼び名はシンマル。(真正のマルキューイの略)
怒ると赤色に染まったり、悲しいと青色に染まったり、あと擬態とかも。つまりカメレオン系の地球外生命体か。
人工繁殖されたマルキューイは長年安全な人里で育てられていた。つまり外敵がいなかったのである。
しかし、そのせいで、彼ら(ジンマルたち)はおそらく自己防衛のためであろう体色変化の能力を失くしてしまったのだ。
とまぁ、なんだか勝手に俺のマルキューイ知識が増えていく。
この世界で一番詳しいものは? と聞かれたら、今なら迷わずマルキューイだと答えてしまうだろう。
然しこのままでは、彼女はココちゃんの素晴らしさについてあと5時間は話し続けるだろう。
そう思っている間にも勝手にマルキューイ知識が増えていくので、俺は早々に話を元に戻す。
「そのココちゃんが狙われているとか、言ってませんでした?」
「あ、ああそうだった! いや、そうなんだっ! 実は――」
問題なのは彼女のペットのココちゃん。
ココちゃんは人工繁殖されたペットではなく、純粋、純正素材の超レアなマルキューイ。
彼女(?)は存在的価値も金銭的価値もトップレベルの優等生なのだ。(めっちゃ高い!)
そんなことも有って、ココちゃんの変化能力のことは隠していたらしいのだが……。
どうやら運悪くあの大男に知られてしまったようで、現在、彼女の身柄の引き渡しを要求されているとのこと。
成程、そう云うことだったのか、てっきりモンモレットさんが告白されているのかと思ってた。
「間違いなく、あの男もマルキューイ信者ですね」
「うむ。だがしかしっ! 絶対に私のココちゃんは渡さない!!」
強く拳を握って、そう断言するモンモレットさん。まぁ、豪快というかなんと云うか。
「あの大男が言ってた大会って云うのは?」
「ん? あれはもうすぐここで開かれる予選大会だ……と云うか、本当に何も知らんな、君は」
「あ~ええ、まぁ。新米ですから!」
言い訳が苦しい。やっぱりこういう時の言い訳は考えとこう。
でも本当のこと言っても信じないだろうし、面倒事にもなるし。嘘は言ってないからね。
「……まぁいい。そんなことだとメインの大会の方も知らない……はぁ、いいだろう。説明してやる」
「あざーっす!」
どうやら面倒見も良いようだ。俺もこの人に対する苦手意識が無くなってきたよ。
「この街がジュノン共和国にあることは知ってるな? 毎年、そのジュノン国が開催する国選武道大会があって、その予選大会がここリドリアで行われる」
「国選武道大会、要するに国で誰が一番強いのかを決める大会ってことですかね?」
「うむ。予選はラド、リドリア、カダン、ユーファウスで行われる。それを勝ち抜いた上位各4名が首都ジュノンでの本戦に挙がれ、さらに優勝者にはそのシード権が授与される」
「ふ~~ん、ジュノン大会で優勝すればどんな特典が?」
「優勝者には賞金の金貨100枚が与えられる。2位で金貨10枚。3位は金貨1枚」
1位が1億、2位は1千万、3位で百万……わお、桁が違うな、さすがは国と言ったところか。
どうしよう? 別に出ても良いけど、俺より強い奴にボコボコにされるのもな。さすがにそんな趣味は無いし。
そう云えば最初にギルドに入った時に凄い行列があったけど、あれは大会の受付待ちだったのか……え? ギルドも協力してんの?
「賞金が目的の者は多いだろうが、本戦に出ればそれだけで価値は有る。売名行為にもなるし、戦闘能力の高さもアピール出来る……まぁそれだけ難しいということだが」
「モンモレットさんは出るんですか?」
「ああ、そのために此処に居るのだからな。ふふ、君も出場するかね、アキヒト君?」
「まぁ出るかどうかはまだ……相棒の意向によりますかねぇ」
聞けば、毎年少しだが死傷者も出るらしい。仕方がないと云えばそうなのだが……。
さすがに死にはしないと思うけど、ディズはどう思うかわからない。一応契約してるし。
「でも君も傭兵なのだろう? 新米として出てみても損はないと思うぞ」
「ええ、確かに自分の強さも知りたいとは思いますけど……ああ、所であの大男も出るんですよね?」
――っと、またも話が逸れていた。何と云う巧みな話術。
「そうだったな。私と当たるかは分からんが、ココちゃんのためにもアイツにだけは負けられん」
「でもそれはアッチが勝手に言った事でしょう?」
「否、それでも私の傭兵としてのプライドもある! ジュノンに出るまでは負けられん!!!」
怒りがぶり返したのか、ぷんぷんと怒り出すモンモレットさん……ほう、改めて見ると怒っている姿も可愛い。
ちょっと気分もふわふわしてきたような……酔った? ……いや、まさかな。俺が酔うなんて有り得ないだろ。
暫くその怒った姿を観賞していたい俺の本心は隠して、穏やかに彼女を宥める。
「で……あの男は強いんですか?」
「ああ、相当出来ると思う。奴の傭兵ランクは私と同じAランクだ。ベック・ノーマンという名の傭兵を聞いたことは?」
「ないですねぇ」
誰も知らない。有名所は今度教えてもらうとしよう。
「ふむ。この近辺では奴は“巨人のベック”と呼ばれていてな、あの体の大きさが生み出す力はまさに巨人の一撃とも云われているらしい」
「見た目通りのパワーファイターと」
「おそらくはな。私も直接見たわけではないから詳細は知らんが、噂になるほどには強いと云うことだろう」
「勝てそうですか?」
「それは戦わないとわからんさ。然し、負けるつもりはない。戦うことになったら必ず勝利してみせる!」
『ココちゃんのために!』と鼓舞する彼女。それだけ想いが強いのは良い事だろう。
まあモンモレットさんも結構強そうだし、たぶん大丈夫だと思う。それでベックとかいう男が諦めてくれるといいが……。
「そうですね、それは期待しておきましょう……あ、そうだ。今度また、ココちゃんを見せて下さいよ」
あれだけ熱心に語られれば、さすがに気になるから。
「ああそれは良い、君はまだマルキューイを知らないようだからな。しっかりと見ておくと良い。きっとココちゃんの可愛らしさに夢中になるぞ」
「ほほう、それは楽しみですな。モンさんとどっちがいい勝負でしょうかね?」
「……ん? モンさん……とは私のことか?」
そうそう、モンモレットさんって言いにくいんですよ……?
「ああ、ええ。やっぱりモンモレットさんの方が良かったですか? モンさんもカワイイ感じで良いかなと思うんですが……」
「い、いや、別に嫌という訳ではないのだが……」
「……なんです?」
なんとなく奥歯に物が挟まっているかのような表情。他に何か言いたい事があるのか……。
「う~ん、その、だな。私には似合わないのでは……と、思うのだがな」
「なんで?」
「……ほら、あれだ。私はそんなに可愛い感じではないだろう?」
もはやその台詞がカワイイということに気付いていないのか。
兎に角、本人にはあまり自覚がないようだ。これはいけない、はっきりと自覚させてあげなければいけない。
「モンさんは十分カワイイですよ。美人だし、面倒見もいいじゃありませんか」
「……否、違うんだ。……これを見てもらえるか?」
そう言ってモンさんは顔の前をはらう。いや、顔の右半面を覆っていた紅い前髪を掻き上げた。
はっと、一瞬息を呑む。そこに隠されていたのは傷跡。
一本の傷跡が彼女の顔の右半分、眉から頬のあたりにまで存在している。
それは右目を通過していて、綺麗に透き通った緑眼には、それを縦に切り裂く白線が刻まれていた。
「こんな傷があるのに可愛いなんて言えないだろう? まぁずいぶん前のものなんだがな、はは、どうも未だに人に見せるのは恥ずかしい」
彼女は薄く笑いながらそれを見せる。それを見るに後ろめたい気持ちは見受けられない。
たぶんその傷自体はもう彼女にとってマイナスに、コンプレックスにはなっていないのだろう。
「人に見せるのは恥ずかしい」と彼女は言った。
その傷を誰にも見られたくないのではなく、誰にも見せたくなかったんだと思う。
「確かにその傷は無い方が良いかもしれませんね……」
「だろう? だから可愛いなんて言われると、なんだか少しむず痒いのだ」
気付いていないのなら、言ってやろう。
「でも。モンさんがどう思ってるかは知りませんが、そんな傷、あってもなくてもモンさんはカワイイし、カッコイイです。寧ろ傷の方が立つ瀬がなくて困ってますよ」
「…………ふっ」
噛み締めるように。
一度目を閉じて、彼女の口元は静かに撓る。
俺の言いたい事は、彼女には分かってもらえただろうか。
こんな素敵な人が埋もれることになってしまっては、この世界の損失に繋がる。
「そんな事を言われたのは初めてだな。存外、なかなか際どいことを言う」
「際どい、と?」
「否、なんでもない。それよりアキヒト君、君は……だいぶ酔っているだろう?」
「俺が? はっはっは、そんなわけないでしょう。まだまだ序の口ですよ、序の口」
モンさんも面白い事を仰る。
俺が酔っているなんて、おかしいじゃないか。
こんなに意識もはっきりしてるって云うのに。今なら気分も爽快ですよ。
「やはり……酔っているな。お酒、弱かったのか……」
「だ・か・ら~、酔ってませんって! 俺はまだまだイケますとも!」
言うが、モンさんは信じてくれなかったようで。
元々長居する気もなかったのか、これでお開きということになる。
「もうこんな時間か……すまない。礼をするだけのつもりだったんだが、少々話しこんでしまったな。そろそろ戻るとしよう」
「いやぁ、楽しかったですよ、ご馳走にもなりましたし。また俺に用があれば時間のある時にでも誘ってください」
「ああ、私も久々に楽しかったよ、今日は付き合ってくれてありがとう。では、お暇しようか」
二人揃って席を立つ。お金を支払い、扉を出ればお別れ……あれ? そのまま宿屋へ……ああ、彼女もここの宿なんだっけ。
「アキヒト君の部屋は何号室だ?」
「何故それを聞くんです? まさか押しかける気じゃないでしょうね」
「ははは、君は面白いことを言う。君の目には私はそんな女に見えているのだな、私が矯正してやろうか?」
「いや、それは遠慮しておきます。俺の部屋は……ここ、33号室ですよ」
部屋の前で足を止める。くるっと顔だけ反転させると、モンさんはこちらを見てニヤニヤしていた。
「ほう、奇遇だな。因みに私の部屋はここだ」
そんなことを言って、彼女は真横を指さす。その先には32と描かれた扉が……マジ、ホント奇遇だ。
酔ってます。