第92話・年越しダンジョン・一泊目
無理矢理な保険の勧誘を回避して、ダンジョンに入った。
そして用の無い第一、第二階層はスルーして、第三階層へアタック開始だ。
今日は出来るだけ距離を稼ぎたい、なので最初からステルス機能を使って第四階層への階段に直行する。
これまでの地道なゴミ拾いのおかげで、第三階層の七割方はマッピングは終了している。ちなみにギルドで購入出来る地図は、第三階層で九割、第四階層で七割、第五〜七階層では半分が解明出来ている。
各地図は改定版が一年ごとに発売され、これもギルドの収益となっている。
ちなみに、未解明地域の地図情報の買い取りもやっているし、時折行われるダンジョンでのマッピング作業は雇われさん達の重要な仕事になっている。
第三階層の行程は順調に進んだ。途中、二組ほどのパーティーとすれ違ったがステルス機能のおかげで気付かれなかった。
すんなりと第四階層へと続く階段に到着。ここまでの所要時間は3時間弱、階段を降りた所で小休止をする。
さて、ここからが問題だ。俺は第四階層以降のマッピングをやっていない。
情報はルキアさんの持っていた地図をチラッと覗き見しただけだ。
下の階層へ行く階段を見つけるのは、ハッキリ言って運任せだ。
「ダンジョン地図を買っておくんだった……」
すっかり忘れてた。だからと言って今更ギルドに戻るのも面倒くさい。
仕方ないので、レーダー機能を使ってどうにかしよう。
まずは、レーダーの捜索範囲を広げて……。
んで、第四階層にいる冒険者の居場所を検索っと……。
よし。出た!捜索範囲には5組のパーティーが確認できた。
この5組の内、下層に行きそうなヤツはどれかなぁ〜?
………。う〜む、ちっともわからん。
頭脳明晰なラノベの主人公なら目標の行動パターンから予想するんだろうけれど、あいにく俺はそんな天才とは程遠い存在。
知恵が無いなら行動するしかないか……。
とりあえず、一番近くにいるパーティーをストーカーしてみますかね。
そのパーティーは5人組だった。戦闘を終えた後なのか、魔獣の死体から素材の剥ぎ取りをやっていた。
「今回の稼ぎも上々ね」
「そうだな。あと4〜5匹狩ってから戻るか?」
「そうしよう。暗闇に三日も居たら気が滅入るからな」
そんな会話が聞こえてきた。コイツらはここら辺を周回して稼いでいたパーティーらしい。って事はこのパーティーについて行っても第五階層には行けそうもない。
他のパーティーに鞍替えしよう。次に近いのは〜…これだな。
ちょっと奥まった所にいるパーティーだ。追いつくまで少し手間だが、頑張ってみよう。
そのパーティーに追いつくまで2時間以上かかった。俺のマッピング範囲が広いとは言え、迷路状態での追いかけっこはかなりキツい。正直、壁をブチ抜いてショートカットしてやろうかと思った事も何度かあった。
しかし、そんな事したら何が起こるかわからない。素直に迷路を迷いつつ目標のパーティーに追いついた。
そのパーティーも五人組だった。時折、斥候を出し周囲を警戒しつつ進んでいる。
しかも、魔獣との戦闘を極力避けているようだった。
パーティーのリーダーらしい人物は戻ってきた斥候の情報を持っている地図に書き入れている。ちょっとその地図を覗かせてもらいましょうかねぇ。
地図には罠の有無、休憩場所などが事細かに記入してあった。
そして、彼らがこれから行くであろうと思われる所に赤い印があった。
階段のマークだ!現在位置からはそれなりに離れてはいるが、俺なら一時間と掛からず行ける距離だ。
よし!階段の位置は記憶したぞ!第五階層に突撃だぁー!!
………。第五階層への階段に突撃を慣行して早二時間が経過しました…。
只今、絶賛迷走中です。
え〜とねぇ。考えてみると俺ってそんなに記憶力が良い方じゃなかったんだよね。
だから、毎回メモって忘れないようにしてたのよ。
それをすっかり忘れてねぇ〜。で、迷子になちゃったてわけよ。
いや〜、ラノベの主人公って案外と優秀な方々なんだなぁ〜。みんなこの程度事はサクっと記憶できちゃって迷う事なんかないモノなぁ〜。
このままじゃ、いつまで経っても階段にたどり着けないってんで、戻ってさっきのパーティーにストーカーしようと思ったんだけど、そのパーティーがもう第五階層に降りてしまったらしく見当たらない。
にっちもさっちもいかなくなって、なんだか泣きそうになった時、ようやく階段を発見した!神は我を見捨てなかった〜〜!そして感涙にむせびながら、第五階層に突入したのだった。
さて、第五階層なんだがマッピングしてないんで右も左もわからない。
とりあえず、さっきみたいにこの階層にいる冒険者達を検索して下層へのヒントを収集してみる。あまり意味は無いんだけどやらないよりはマシだし…。
とにかく、当たり構わずひたすら歩いていく。そして小一時間も歩いた所にあった小部屋で第四階層で地図を覗かしてもらったパーティーに再び遭遇した。
彼らはここで泊まり込むようだ。マナトーチで部屋を明るくして、焚き火の用意をしている。
第五階層の地図でも広げていたら、もう一度覗かしてもらおうかと思ったんだけど、そう都合良くいかない。かと言って地図を広げるの待つのも変だ。
とりあえず、ここはスルーして先に進もう。
俺自身も歩き詰めで疲れちゃったし、どこか適当な小部屋かギルドが設置した簡易休憩所で休みたい。
そして歩き回ること一時間ほど、具合のイイ小部屋を見つけた。
ただ、その部屋には先客がいた。
体長3mほどのダンジョンムカデがとぐろを巻いて休んでいた。
「どう〜すべ…。討伐するか?」
俺にとってコイツを討伐するのは簡単だ。素材も欲しいところだしね。
だが…、コイツの体液で部屋を汚したくないんだよねぇ。
「しようがねぇ、おびき出してみるかな」
まずは、ムカデに起床してもらおう。俺は軽くムカデに向けて小石を撃ち出した。
カツンと硬い音がして小石がムカデの頭に当たった。
ムカデは頭を持ち上げて周囲を見回している。
ヤツはDELSONのステルス機能のおかげで俺の事が認識できないでいる。
俺はステルス機能だけをオフにして、もう一度小石をムカデに撃ち出した。
カツン!もう一度小石がムカデの頭に直撃した。
「シャアアアーーー」
ムカデには俺が突然現れたように見えたのだろう。
少し驚いた風に鎌首を持ち上げ威嚇してきた。
「鬼さんコチラっと」
俺は三度小石をムカデに放つ。今度はちょっと強めだ。
バシッ!と小気味良い音がして今度はムカデの身体に当たった。
「ガアアアアーーーー!!」
ムカデが一気に俺に襲い掛かってきた。
「のぁ!!」
少々ビビりながらも俺はムカデを右に避け、踵を返して部屋から走って離れた。
いやぁ〜。ムカデって思ってた以上に足が速いのねぇ〜。
10秒もしない内に追いつかれ、俺の足に噛みつこうとしてくる。
俺は必死にそれを避けながら反撃のタイミングを図った。
T字路にさしかかった時、その時はきた。
俺はスピードを落とさずT字路を右折、その反動を利用して振り向きざまにムカデに連射を浴びせた。秒間50発、ちょっとしたガトリングガン並の連射だ。
ブオオオオ!!とDELSONの唸りを上げたような射撃音がムカデの胴体を切り裂いく、真っ二つになったムカデはそのまま壁に激突した。
ムカデはしばらくの間、ゴソゴソと動いていたがやがて静かになった。
「ふうぅ〜。ちょっと焦ったなぁ〜」
俺はため息をつきつつ、ムカデをDELSONに収納してさっきの小部屋に戻った。
今日はもう疲れた…。オーラスにムカデと格闘って流石にキツいわ。
俺は小部屋の入り口を持ってきた厚板で塞ぎ、休む事にした。
そう言や、晩飯も食ってないや。
メシ食ってサッサと寝ようっと…。




