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第91話・年越しイベントをやろう


ユーノさんは、俺が魔導具を改造したり製作したりする事を止めるつもりはなかったらしい。ただ、それを行うにあたって幾つか条件を付けられた。


キャパシタの改造は既存の製品を使う事とか、二級指定以上の危険魔導具は極力、秘匿する事とかね。


要は目立つ事はするなと言いたかったんだろうな。

ユーノさんもルキアさんと同じように「下手したら戦争が起きるわよ」って言っていた。それだけ俺がしでかした事は危険な事だったらしい。




さて、ユーノさんに正体をバラしてから数日が経ち、あれこれと忙しかったギルドも漸く落ち着きを取り戻していた。


ふと気付くとこの世界も年末に向かっていた。

年末年始、それはラノベではイベントの季節だ。

クリスマスでサンタコスの美女とキャッキャウフフとか。

正月には着物美女とキャッキャウフフとか。

目白押しのはずである!!期待大!!である。


……のはずだったんだけどぉ〜。

こっちの世界って年末年始のイベントなんて無いらしいんだわ。

いや正確に言おう、年始を祝うパーティーみたいなのがあるにはあるんだけど、それをやるのは王都や領都といった都会の、それも貴族とか大商人とかお金持ちだけの事なんだとさ。


ここヤドラムみたいな辺境の田舎だと、年末年始は静かに過ごすのが普通みたい。

そりゃ、冬場の食料問題を考えると寒さの厳しい時期にバカ騒ぎなんて出来っこない。それに、こっちの世界の宗教行事が冬の間は静かに過ごして春を待ちましょう的な事も言っているしね。非常につまらないのよ。


そんな感じの事をちょろっとマリアさんに聞いてみると…。


「それは先代の王様の誕生日が冬だったからですよ」


と、教えてくれた。いまいち理解不能な回答だったので詳しく聞いてみると、この国の暦は王様の誕生日を基準に決めているんだとか…。

王様の誕生日が夏場だろうが冬場だろうが、その日を一月一日としてその年が始まるって感じらしい。

代替わりすると一月一日も変更するのが普通で、年に二回も一月一日があった年も過去にはあったそうなのだ。

ただ、今の代の王様はそんな面倒な事はせず、先代の暦を引き継いだというこだ。


春先とか秋口あたりが王様の誕生日だったら、国中でお祭り騒ぎだったんだけどねぇ〜ってマリアさんが言っていた。


まあ、日付が重要視されるのは貴族と都会の人くらいなので、田舎じゃ季節を基準とするのが当たり前なんだってさ。

ちなみに、国が変わると暦も変わるんだとか…。なので、非常にややこしい。早いとこ世界標準を決めて欲しいものである。


さて、そんなイベントもクソも無いつまらない日々を仕事でやり過ごしているんだが……。

さすがに年末年始に仕事ばかりってのも味気ない。

ならば、自分からイベントをやってみよう。だが、単にみんなを集めてパーティーをするんじゃ飢えた連中に貯金を喰い尽されるだけだ。

俺としてはそれは避けたいんで、お金のかからない一人で楽しめるイベントをやってみようと考えた。

答えは簡単だった。ダンジョンである。


「ダンジョンで年越しと洒落こもうとしようじゃないの」


いずれはこのヤドラムのダンジョンの最下層、第七階層へ行くつもりだった。

その予定を少々繰り上げちゃおう。

鉄屑拾いも兼ねて第七階層にいる階層ボス『オルトロス』ってヤツに会いに行ってみよう。


日程としては次のゴミ撒きが終わってから、三泊四日を予定している。

この日数は普通の冒険者達が最下層にアッタクする時の最短のもの。

地図を使って最短ルートで目的地に到達し仕事をして最短ルートで帰投するという非常に忙しいアタック日程だ。

まあ、こんなアッタク日程でダンジョンに入るヤツなんていないけどね。


俺の場合、途中の魔獣戦は回避できるからこんな無茶な日程が組める。

第五〜第七階層のマッピングで多少手間取るはずだけど、『オルトロス』に会いに行くくらいなら余裕の日程のはずだ。

ならば早速、ダンジョンアタックの用意を始めようか。




そして本日、今年最後のゴミ撒きを終わらせて書類仕事に精を出してる部下二人に仕事納めの挨拶をしてイベント開始となったわけで……。


「ホントこのギルドの守銭奴っぷりには関心するわぁ〜」


と、一人ダンジョン入場発券機に呟く俺がいた。

それは入場料金を支払う時の事だ。今回の日程は三泊四日を予定していたんだけど

予備日も計算して五日分の入場料銅貨23枚を支払った。

本当は五日分の入場料銅貨25枚なんだけど、ソロで潜る俺にも一応の短期入場割引が適応され入場料が一割引になった。んで、その割引ってのが小数点以下切り捨てで銅貨2枚しか引かれないというセコさ…。


それはまだ良いとして、そのあとに表示されたのが保険の勧誘広告。

この勧誘広告が長ぇ〜こと長ぇ〜こと、優に3分は流れてたね。

しかも、加入しないと広告がキャンセルできないときたもんだ。

値段は銅貨5枚と微妙に安く設定されていた。時々、冒険者が発券機に舌打ちしていたのはコイツが理由だったのか。

時間が惜しい時や後ろに人が待っていたら、気の弱いヤツなら銅貨5枚支払っていたんじゃないかな?


良いのかぁ?こんな嫌がらせみたいな搾取して?

こんな事ばっかりやっていたら、いつか冒険者達が反乱を起こすかもしれないぞぉ〜。


ちなみに俺は広告を全部見て、保険加入はキャンセルさせてもらったよ。


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