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第100話・暗躍…


ダンジョンでラムちゃんと出会って三日ほど経った。

ヤドラムの街はお正月気分に浮かれているわけもなく通常営業している。

まあ、冒険者達が少なくなっているし、そこそこの積雪もあるので夏場よりは静かなものだ。


俺はいつものようにダンジョンのスライム達への餌撒きやら、ギルドへのスライムゼリーの納入やら、街クエストの雪かきやらとフル回転で働いていた。

そんなある日の事、スライムの餌撒きが終わってダンジョンを出ると早々に管理部長のトラスさんに呼ばれた。


「仕事終わりにスマンな。例のスライム牧場の件で大工の棟梁が来てるんだ」


そう言われダンジョン管理棟二階の応接室に通された。

そこには、もう見ただけでこの人こそが大工の棟梁です!ってイメージぴったりのがたいの良いおっさんがいた。


「棟梁のゲンダリウスさんだ」


そうトラスさんが紹介してくれた。うむ、大工のゲンさんね。これで『ねじり鉢巻き』でもしてたらイメージぴったりだ。


「ゲンダリウスと申します。ヨロシクお願いします」


キッチリとした姿勢の上に更にキッチリとした45度のお辞儀。

見た目は偏屈な大工の棟梁だけど、内実は真面目なキッチリタイプの人みたいだ。


「ユウキと言います。こちらこそよろしくお願いします」


ゲンダリウスさんは領主様の依頼でアサイ村の学校建設にも携わる事になっているので、今日はその打ち合わせで来たという事だ。


「アサイ村の方は私が陣頭指揮を執りますので、明後日には出発する予定です。ダンジョンの方は私の一番弟子に任せる事にしています。少々若いですが、腕の方は私が保証しますのでご安心ください」


そう言いながら、ゲンダリウスさん(面倒だから以後ゲンさんにする)はテーブルに大判の設計図を広げだした。


「こちらがダンジョンのスライム牧場管理棟の設計図です。ご確認ください」


その設計図に描かれた管理棟は三階建てで一階は事務所、二、三階は事務員の宿泊施設になっていた。


「この部分は何ですか?」


俺が示した部分は管理棟の倉庫部分とは別の割と大き目なスペースだった。


「そこはボイラー室ですね。大型の魔導ボイラーを設置してありまして、管理棟の給湯とこちらの図のスライムの飼料の加工用の蒸気を供給するシステムとなっております」


魔導ボイラー?こっちの世界ってそんなに発展してたの?


「こちらは最新のシステムとなっておりまして、辺境伯様たってのご希望で今回採用させていただきました」


オイオイ…いくら新しモノ好きだからってこれはヤリ過ぎだろう?いったいどれだけの資金をぶち込んだんだ?


「そして、こちらがアサイ村の学校及びその関連施設の設計図とユウキ様のご住居の設計図になります。ちなみに、このボイラーシステムを民間で設置したのはこちらのアサイ村の住宅が初めての事と思われます」


うそ?!アサイ村の方にもこれが付くの?!

てか、俺の家って……聞いてないぞ…。


「あ…あの…。俺の家?に付いてるこれって…」


「はい。ボイラーシステムでございます。平民のしかも個人でボイラーシステム付きのご住居を所有されるのはユウキ様がこの国で初めてかと思われます」


そう、にこやかに告げるゲンさん。

俺自身アサイ村に家が欲しいと思っていたが、まさか伯爵様が建てて下さるとは思わなかった。しかも貴族が使っているような最新システム付きとは…。

ハッキリ言って村長宅より豪華な造りになっている。


「今後、このシステムは大型の物をアサイ村に設置し、村全体の給湯システムとする予定になっておりますので、ユウキ様の住居はそのテストケースとして観察対象になります事をご了承ください」


ゲンさんがそう言って頭を下げる。俺はそれを了承するしかなかった。


「ほ~。こりゃあ新年早々ものすごい豪華なプレゼントだなぁ。オマエも相当、領主様に気に入られたな」


トラスさんが図面を見ながら言った。


「何がどう気に入ったんだか、わかりませんよ。俺は自分の家なんてねだってもいないのに…」


「まあ、もらえるモノはもらっておいて良いんじゃないか?別に身銭を切るわけじゃないんだからさ」


「それもそうですけど、なんだか後が怖いなぁ~」


そんな事を言っていたら大工のゲンさんが懐から一通の封筒を差し出してきた。


「急に家をプレゼントされるのは不安になられて当然の事、この件に関しましてはロンダーギヌス辺境伯様から手紙を預かっていますので、ご一読ください」


渡された封筒にはロンダーギヌス辺境伯の刻印が入った封蝋がしてあり、中に数枚の手紙が入っていた。

早速、俺は封を開いて手紙を読んだ。そして読み進んでいく内に頭痛がし始めた。


「どうした?ユウキ。大丈夫か?」


心配してくれるトラスさんに俺は読み終わった手紙を渡した。


「ん?読んで良いのか?え~と…ナニナニ……なんだ?これは?…」


ロンダーギヌス辺境伯の手紙には、たぶんこの件で困惑しているであろう俺への謝罪から始まり、今回の顛末について書いてあった。


最初、ロンダーギヌス辺境伯は俺から指摘された通りに小規模な形で計画していたのだが、ある日『冒険者であり、超魔法文明研究の第一人者でもあるノートン氏』の訪問を受け、このアサイ村及びヤドラム周辺に超魔法文明の使者が出現している事を鑑み、なぜ、今この時期に二人の使者がこの地に現れたのかを説明されたらしい。それにはちゃんとした理由(「こじつけ」とも言う)があり、変革の時期が迫っていると説得された。


そして、辺境伯には魔導具の更なる効果的な使用と発展を研究する施設の設立という密かな野望があり、このアサイ村計画を今まで出来なかったこの野望を試すチャンスと考え直し、アサイ村及びヤドラム周辺地域を『実験都市』として再開発しようという事になったと書いてあった。


ナニやっちゃってくれてんのよノートンさんはぁ~。

最近、姿を見ないと思ってたらこんな所で暗躍してたのか…。


しかし、こんな事を堂々と始めたら例の権威連中がしゃしゃり出てくるに違いないので、ロンダーギヌス辺境伯も裏の伝手を使い王族に連なる公爵筋から国王の勅命として計画が遂行できるように暗躍しているらしいのだ。


これだから『夢想家』と『権力者』は混ぜるなキケンなんだよ~。

変な科学反応を起こしたら、取り返しのつかない事になっちゃうぞ。

大丈夫なのか?この計画は…。


まあ、俺自身も裏で『魔導兵器』の研究をしようって思ってたから人の事言えないけねぇ~。


祝!100話ーー!!

お読みいただきありがとうございます。

これからものんびりと更新しますので

お付き合いのほど、ヨロシクお願いします。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 心配してくれるトラスさんに俺は読み終わった手紙を渡した。 「ん?呼んで良いのか?え~と…ナニナニ……なんだ?これは?…」 ん?読んで良いのか?   
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